ヒトの理屈とカネの理屈、両方理解することが大事
日経スタイルの今回の更新は、給与の決定ロジックを、資本のロジックだけで考えるとどうなるのか、という疑問へのさわりとして書いた。
少し今までと毛色が違うけれど、次回もこんな感じで書いてみようと思う。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
残業時間削減にはとにかく行動から始める
最近は自社(セレクションアンドバリエーション)主催での無料経営相談を止めている。以前は毎月開催していて、そこから直接契約につながることもあった。けれども昨年後半くらいから、相談会を開く時間がとれなくなってしまった。
なのだけれど、実はSMBCコンサルティングを通じての経営相談会は定期的に開催していたりする。三井住友銀行の経営懇話会会員とか、SMBCコンサルティングの会員限定ではあるのだけれど。
今年に入ってから、その中でも特にたくさんの相談を受けているテーマに、残業時間をどう削減すればよいか、というものがある。
ちなみにこのテーマについてはもちろんさまざまな事例がある。厚生労働省が示している例なんかもわかりやすい。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/dl/120703_01.pdf
とはいえ、会社で働く従業員たちの残業時間を削減するには、基本的には3つのステップを踏むしかない。
1つ目のステップは「仕組み化」だ。
つまり、残業をしなくてもよい/できないようにしてしまうことだ。
この仕組み化にはさまざまな手法がある。
単純に、会社の照明を落としてしまうことや、入室禁止にするといったハード的なものもある(それでも自分で卓上ライトを持ち込んだり、こっそり忍びこむ人もいるらしいが)。
残業しなくても良くする取り組みのメインは業務の効率化だけれど、これにもいろいろな手法がある。IT化でプロセスを削減するということもあれば、事務作業を集約して、本来業務に特化した働き方をしてもらうということもある。
あるいは、会社で定められた定時を変更してしまい、シフト制やフレックスにすることで、拘束時間を減らす取り組みもある。
これらはいずれも仕組みとして改善を目指すものだ。
けれども人はなかなか変わることができない。
単純に、ずっと20時に帰っていた人に、18時に切り上げなさい、といっても切り上げられないものだ。
すると、2つ目のステップが必要になってくる。
残業時間削減の2つ目は、「行動化」だ。
近年の脳科学によれば、私たちが何かの行動をしようと「決める前7秒前に、脳はすでに行動を決めている」そうだ。
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(その理屈で言えば、脳波さえ先に確認することができれば、じゃんけんに絶対勝つことができるということにもなるだろう)
となると、残業をせずに帰ってもらうためには、今日は残業をしないでおこう、と決める前に帰る準備をしているということになる。
だとすれば、残業をしないことをあたり前にすればよい。それが行動化だ。
具体的な取り組みとしては、ノー残業デイへのインセンティブ付与などがある。
単なるノー残業デイだとどうしても人は残ってしまう。
そこで、ノー残業デイに定時に帰った人に2,000円支給すると決める。そうすると、意外に多くの人がノー残業デイを守るようになるのだ。
それを徹底して半年も続ければ、残業をしない日がノー残業デイ以外にも増えてくる。
ノー残業デイは、残業をしない日を作ることが目的ではない。残業せずに帰るという行動をあたりまえにするために行うものなのだ。
仕組み化、行動化までできれば、最後の3つ目のステップは後押しのために行うことになる。
それがなんなのか、は、ここではあえて書かないでおこう。
大学院の講義でも教えないので、是非自分で考えてみてほしい。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)