「賃金カーブ」公開サイトに気をつけよう
そういえば先日公開した日経スタイルの記事の最後に、こういう文章を書いた。
気をつけなければいけないのは、インターネットで検索することです。「賃金カーブ ●●●●(会社名)」で検索して出てくるサイトがありますが、実はこのサイト情報は正確ではありません。厚生労働省が公開している業界平均の賃金カーブを前提として、そこに各社が公開している平均給与額をかけあわせたものをその会社の賃金カーブとしているからです。実際の賃金カーブは会社によって大きく異なります。インターネットで検索するときは、時間はかかりますが口コミサイトの情報を踏まえて、自分で賃金カーブを作成してみるなどの手間をかけた方が実態に即したものができるでしょう。
もっとよい転職先探し 成功するタイミングは昇格時?|出世ナビ|NIKKEI STYLE
より抜粋
これらのサイトは本当に困るのだ。
だってそれを鵜呑みにして「うちの会社の賃金カーブもこうしてくれ」という社長がいたりするから。
大手がそうしているから。
ライバル企業がそうしているから。
そんな勘違いがそこに生まれてしまっている。
いや、大手もライバル企業も、そんな賃金カーブは使っていません。WEBに「公開?」されているこれらのデータは、どちらかといえば、人事制度を20年前とか30年前から変更していない、成長していない企業の平均値に近いですよ。
そう伝えても「だってWEBに公開しているじゃないですか」とわかってもらえない場合もある。
これからさらに成長しようとしている会社にとっては、業界平均というのは悪しきモノサシでしかない。
そんなものを気にするより、自社を取り巻く環境はどういうもので、どういう戦略をとるべきか、そこで求められる給与の決定方法はどういうものなのか、という風に考えていってほしい。
それだけ説明してもなお「WEBで公開されてるじゃないですか……」という返事が返ってきて、頭を抱えてしまうこともあるのだ。
だからその公開情報はほとんど「統計のウソ」なんだってば。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
リスク選好の反対語はリスク回避であって「ゆでがえる」ではない
日経スタイルの連載は「出世」というしばりがあって、だからわりと書きやすい。
自由に書いていい、なんて言われたら多分何も書けなくなるから。
で、今回は転職判断時期をどうするか、ということを書いた。
人事制度設計者とのしてのポジショントークもちりばめながら。
ただ、この記事はあくまでも、リスクを選んででももっと良くなりたい、と思う人向けだ。
もしあなたが、今いる場所でこつこつとがんばりたい、とか、この会社には良くないところもあるけれど、私が改善してゆきたい、と思うのなら刺さるところはないだろう。
結局僕が書いている内容は、リスク選好型の人向けなんだなぁ、とあらためて思った。
ちなみにリスク選好の反対語はリスク回避だ。
リスクを許容してでもより大きなリターンを目指すか、リターンは小さくてもリスクを避けるか、という行動の選択肢だ。
つまり、どちらもリスクは理解しているということが前提となる。
リスクそのものを理解していないと、結果として何も選択できない。
それを「ゆでがえる」という。
リスク選好でもリスク回避でもどちらでもいいけれど、ゆでがえるにはならないように、いろいろ知った方がいいと思う。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)