ベンチャー企業の組織と人事のあり方
企業毎の組織や人事のあり方が多様化していて、20年前のように一律ではなくなってきています。
その中でもベンチャー企業では、あえて独自性を保つようにしているように感じていました。
そこで最近弊社では、いわゆるベンチャー企業の組織や人のあり方がどうなっているのかを調査・分析しています。
8月6日のブログ記事
では、福利厚生系の仕組みについてふれてみました。
調査の軸は、あえて本社の所在地としています。たとえば以下のような区分です。
◆六本木一丁目駅周辺 :17社
◆ミッドタウン周辺 :8社
◆六本木ヒルズ周辺 :22社
◆渋谷 山手線西側 :26社
◆渋谷 山手線東側 :31社
で、そうして調査する中で、あらためて気づいたことがあります。
それは、評価制度に対する納得度が、どの会社も良くないこと。
特に上司に対する不満はどの会社でもあふれています。
企業側の視点に立つなら、それらの不満は「デキない人」が勝手に言っているだけ、ということになるかもしれません。
特に、あえてとがった仕組みを採用するベンチャーであればその傾向は高まって
もおかしくないでしょう。
それでも、そういった不満があまり出てこず、業績も大きく伸ばしている優良企業が存在することも事実です。
だとすればその違いはどこにあるのか?
今のところピックアップされているポジティブなキーワードとしては「ショートタームでのインセンティブ」「多様な福利厚生」「裁量度の高い働き方」などがあります。
一方、人を選びそうなキーワードとしては「自己責任での成長」「個人に任される成果品質」などがありました。
今後さらに調査を進め、成功するベンチャーの組織と人事のあり方、として随時発表していきたいと思います。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
大廃業時代は投資ができない「PL脳」が原因
Newspicksのアカデミアを通じて知り合った、シニフィアン株式会社代表の朝倉祐介さんの名著、ファイナンス思考を読んだ。
詳細はぜひ読んでいただければと思うが、簡単に言えば、目先の売上や利益の最大化を目指す「PL脳」から、長期的戦略型の「ファイナンス思考」に成長しよう、という内容だ。
この指摘は僕にとってもすごくしっくりくるものだった。
特に現在、多くの中小企業が後継者不足で廃業せざるを得ない、まさにその理由だと感じたからだ。
飲食店で考えてみればわかりやすい。
たとえば大学そばの学生街に、昔ながらの定食屋がある。
味はそこそこ。でも安くて量があっていつも学生やサラリーマンでにぎわっている。
そうして多くの学生の記憶に残っているのだけれど、30年くらい営業してやがて廃業する。
理由は後継者不足、ということなのだけれど、もし定食屋の店主が「PL脳」でなければ、解消できた問題だ。
定食屋の店主は、ある程度売り上げが立った時点で投資をすべきだったのだ。
繁盛していたのにたたまざるを得なくなった飲食店はたいてい、二つの投資を怠っている。
第一の投資は、店舗や備品へのものだ。
日に焼けて元の色がわからなくなった看板はまだ許せるかもしれない。
けれども、シミが浮き出てきた暖簾をくぐりたいだろうか。
ガタの来た椅子や角が剥げてきたテーブル。
極めつけは、ぼろぼろになったメニュー類。
外装だけでなく、内装や備品にまで考えてみれば、きれいに丁寧に使うだけではもたなくなる年数が必ずある。
そしていつまでも繁盛店と言われる店は、それらについてすこしずつ改善をほどこしているのだ。
そして第二の投資が一番難しい。それは人へのものだ。
たとえば、ある程度仕事を覚えた時点から、日々の業務は同じことの繰り返しになる。
そうならないように、従業員が気づいたちょっとした改善提案に対して、わずかでも良いのでインセンティブを設定したらどうだろう。
あるいは飲食店の場合、離職率は高い。だから長く勤めてもらうための福利厚生を整えるというのはどうだろう。
また、一定期間ごとに人が辞めることを前提として、人材育成をそれぞれの人の仕事として定め、人のフローを仕組み化したらどうだろう。
そんな取り組みの中でやがて店を任せてゆける人材を発掘し、育成していけば、店主が老いを感じる前に店のリニューアルもできたかもしれない。
しかし多くの飲食店では、日々の売上をあげ、利益を確保することにだけ意識を集中させる。浮いた利益の使い道は投資ではなく、消えてなくなってしまうものにまわしてしまう。
人は誰しも年を取るし、いつまでも自分の会社にいてくれるわけでもない。だからこそ、人の流れがあることを前提として、企業は人に投資しなければいけない。
人材についての「PL脳」もまた企業を成長させることがないからだ。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)