新書の表紙はこんな三つの案から選択しました
新しい本を出すことになりました。
内容の基本は、日経スタイルへの連載をまとめたものですが、全体の20%くらい新しく書いています。
あと文体は全面的に、ですます調からだである調に変更。
一冊の本としてすっと読み進められるようにまとめられたと思います。
で、この本なんですが、表紙とタイトルで結構議論が紛糾しました。
私が最初に出した案はこんな感じ。
人生100年時代、というキーワードと、戦略、を組み合わせたものでした。
けれどもここからさらに議論が膨らみ、3つの案にまで絞り込まれました。
それがこちら。
真ん中の「我慢しない」というのも本の中の重要なキーワードなので、これでもいいかなぁ、と思っていました。
で、最終的にどうなったのかというと。
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右の案が採用となりました。
日経プレミア新書から3冊目になる、「人生100年時代の『出世』のカラクリ」です。
書店にて、ぜひ手に取ってみてください。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
大廃業時代は投資ができない「PL脳」が原因
Newspicksのアカデミアを通じて知り合った、シニフィアン株式会社代表の朝倉祐介さんの名著、ファイナンス思考を読んだ。
詳細はぜひ読んでいただければと思うが、簡単に言えば、目先の売上や利益の最大化を目指す「PL脳」から、長期的戦略型の「ファイナンス思考」に成長しよう、という内容だ。
この指摘は僕にとってもすごくしっくりくるものだった。
特に現在、多くの中小企業が後継者不足で廃業せざるを得ない、まさにその理由だと感じたからだ。
飲食店で考えてみればわかりやすい。
たとえば大学そばの学生街に、昔ながらの定食屋がある。
味はそこそこ。でも安くて量があっていつも学生やサラリーマンでにぎわっている。
そうして多くの学生の記憶に残っているのだけれど、30年くらい営業してやがて廃業する。
理由は後継者不足、ということなのだけれど、もし定食屋の店主が「PL脳」でなければ、解消できた問題だ。
定食屋の店主は、ある程度売り上げが立った時点で投資をすべきだったのだ。
繁盛していたのにたたまざるを得なくなった飲食店はたいてい、二つの投資を怠っている。
第一の投資は、店舗や備品へのものだ。
日に焼けて元の色がわからなくなった看板はまだ許せるかもしれない。
けれども、シミが浮き出てきた暖簾をくぐりたいだろうか。
ガタの来た椅子や角が剥げてきたテーブル。
極めつけは、ぼろぼろになったメニュー類。
外装だけでなく、内装や備品にまで考えてみれば、きれいに丁寧に使うだけではもたなくなる年数が必ずある。
そしていつまでも繁盛店と言われる店は、それらについてすこしずつ改善をほどこしているのだ。
そして第二の投資が一番難しい。それは人へのものだ。
たとえば、ある程度仕事を覚えた時点から、日々の業務は同じことの繰り返しになる。
そうならないように、従業員が気づいたちょっとした改善提案に対して、わずかでも良いのでインセンティブを設定したらどうだろう。
あるいは飲食店の場合、離職率は高い。だから長く勤めてもらうための福利厚生を整えるというのはどうだろう。
また、一定期間ごとに人が辞めることを前提として、人材育成をそれぞれの人の仕事として定め、人のフローを仕組み化したらどうだろう。
そんな取り組みの中でやがて店を任せてゆける人材を発掘し、育成していけば、店主が老いを感じる前に店のリニューアルもできたかもしれない。
しかし多くの飲食店では、日々の売上をあげ、利益を確保することにだけ意識を集中させる。浮いた利益の使い道は投資ではなく、消えてなくなってしまうものにまわしてしまう。
人は誰しも年を取るし、いつまでも自分の会社にいてくれるわけでもない。だからこそ、人の流れがあることを前提として、企業は人に投資しなければいけない。
人材についての「PL脳」もまた企業を成長させることがないからだ。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)