あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

なぜ大企業ほど新卒給与に差をつけられないのか

メルカリが新卒の給与に差をつける、ということが報道された。

ちなみにそのための人事制度は「メルグラッズ」という名前らしい。

headlines.yahoo.co.jp

多くのニュースでは初任給格差だけがとりあげられているけれど、アスキー上記の報道を見るともう少し詳しいことがわかる。

要は、新人扱いしない、ということだ。

新人からちゃんと他の社員と同様に、しっかりとした役割を担ってもらう(社内人事制度のグレードに当て込む)ということで、メルカリの新グレードシステム≒メルグラッズ(Mercari Gradesの略?)なのかなぁ、と想像した。

他にも教育支援などを内定段階から与えていくということで、これもやはり新人扱いしない人事制度なのでは、という推測と一致する。

 

メルカリの制度はある意味で世界的にはあたりまえのもので、ちきりんさんもこんなコメントをツイートしている。

 

そしてこうもコメントされている。 

 

このあたりの事情は確かにその通りで、典型的な日本の大企業は、新卒給与に差をつけることができない。そういう人事制度になっている。

わかりやすく示すと、大企業の人事制度では、グラフのような年齢と給与の分布が生じている。

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このグラフで言えば、35才くらいまでは評価によって多少差がつくものの、基本的には右肩上がりで給与が増える。

そこで月給35万円~40万円の谷があって、それを超えると管理職になる。越えられない人は40万円未満のあたりを天井に給与が増えなくなるけれど、残業代は出る。だからまあそこそこの生活はできる。

一方で40万円の谷を越えた人たちは、年令よりも実績とか能力とかで評価される割合が増える。抜擢される人もいれば、万年担当課長もいる。

このよくある構造に対して、もし特別な新卒(年収100万円~150万円アップ)とか超特別な新卒(年収800万円オーバー)とかを雇うとどうなるだろう?

その際の問題を示したのが以下のグラフだ。

 

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実際問題、多くの大企業の新卒採用の現場では、初任給を5000円増やすだけでも様々な課題が生じている。

「去年までの新卒との間の差額が縮まるから23才は3000円、24才は2000円、25才は1000円ベースアップしよう。でもそれにはウン千万円の原資が必要だ」といったように。

 

仮に特別扱いだから前年度採用者に配慮しない、とした場合にも、課題はある。

ありていに言えば、特別待遇者への社内でのイジメだ。

無視する、嫌味を言う、くらいならマシで、実際の仕事でかかわった際に協力を拒否したり、逆に常に反対意見を示したりする人も多い。

 

だから新卒一括採用、終身雇用の大企業はダメなのか、というとそうじゃない。

だからこそ僕は、古典的な日本の大企業のための人事改革が必要になるだろう、と見込んでいる。

 

解決策はもちろんある。

それは人事に客観性を担保していく仕組みだ。

そして評価の納得性や公平性の意味を、しっかりと定めた仕組みだ。

決して報酬だけの仕組みではなく、評価や教育、そして組織構造やレポートラインにまで関わる仕組みだ。

 

実際にすでに取り組んでいる会社もいくつもある。

 

今後、成功事例とともに発表していきたいと思う。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

成長のためには、協調より選別(セレクション)を優先する

SMBC経営懇話会の会員向けに、ほぼ毎月、人事に関する無料相談を実施している。

まあ無料といっても経営懇話会の会費(年額5万円~10万円)は必要だし、そもそも経営懇話会にどうやって入れるのかが若干よくわかっていない。

入りたい企業はとりあえず下記リンクを参考にすればよいらしいけれど、三井住友銀行と取引のある企業は、法人営業担当に聞いてみたほうが手っ取り早い、と聞いた。

 

www.smbc-consulting.co.jp

 

ちなみに開催場所は東京駅前のSMBCコンサルティングのビル。

相談内容は、働き方改革とか人事制度改革とかまあいろいろだ。

とはいえ持ち時間が1時間だけなので、あまり深堀はできない。ヒントとか気付きを得るレベルにとどまることも多い。ただ、それでもみなさん大変喜んで帰られる。そのためか、実はかれこれもう5年ほど実施していたりする。三井住友系のシンクタンクにいた頃よりも、なぜか関係が深まっている。不思議。

 

で、先日、相談を受けた際に、興味深い相談があったので紹介してみたい。もちろん大きくアレンジして、わからないようにするけれど、僕がよく提言する内容が端的に示せる内容だったのだ。

 

社歴50年くらいのその老舗企業では、ここ数年、元気な営業課長が売上をどんどん伸ばしてくれている。しかし社内でそのことについて、「協調性がない」「わがままだ」「管理職なのに部下育成をしない」などの不満がたくさんでている。

一方で、この営業課長はすでに全社売上の15%近くを一人で稼いでおり、鼻息もあらい。インセンティブも払っているけれど「もっとほしい」「でないと客をつれて転職する」といった言動も出たりする。まあそんなことができる業界ではないのだけれど。

 

さて、経営陣としてどう対応すればよいか?という相談だ。

皆さんならどう答えるだろう?

 

こういう相談のとき、僕は必ず質問をする。

「5年後に売上を倍にしたいですか?それとも今の状態を維持したいですか?」

 

実は従業員についての課題は、個人の行動として捉えると本質を見誤る。

個人ではなく、企業としての戦略から考えなければいけない。

 

もし5年後に売上を倍にしたいのなら、売上をあげてくれている従業員をどう活躍させるべきか、という話になる。

そのためには、彼のような営業社員を採用し育成するとか、彼のような営業スタイルで行動することを評価するインセンティブの仕組みをつくるとか、そもそもプレイングスタイルの営業部隊を構築していくとかの対応を考えていく。人事評価制度設計や組織設計などが活きてくる。

 

一方で現状維持で良いのなら、彼が持ってきた客をどうやって彼から引きはがして、会社につけるべきか、という話になる。そして協調性のない彼をどうやって追い出すか、という話になってしまう。

 

大事なことは戦略をどう据えるか。

そのために、何を選択して何を捨てるのか。選別が第一なのだ。

売上をあげてくれる営業社員を選ぶのか、協調性を重視するそのほかの社員を選ぶのか、という選別だ。それは成長を選ぶのか、現状維持を選ぶのか、という選別に他ならない。

他の従業員が不満を言っているから、協調性を高めましょう、という解決先は基本的には現状維持のための手段だ。

もし成長を目指すのなら、尖った人をどう許容するかを考えなければいけない。

人材は、セレクション(選別)したのちに、バリエーション(多様性)をそろえていくべきなのだ。

(逆に現状を維持するのなら、バリエーションをなくして、セレクションもゆるやかにする。そうすればゆるやかな現状維持志向の組織ができあがる。)

 

あなたの会社のセレクションとバリエーションを生み出す仕組みは、ちゃんと機能しているだろうか?

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)