あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

働かせる会社と稼がせる会社は何が違うのか

意外に知られてないが、多くの会社で、給与と働き方の関係は2つに分けられる。

一般的なのは、「給与分は働いてください」という会社。

もう一方は「稼いだ分から給与を払いますよ」という会社。

 

どちらが良いのか、というと、何を求めて働くのか、ということで変わる。

 

ざっくり言えば、生活のためのお金が欲しい人は、「給与分は働いてください」という会社を好む。

なぜなら、給与が先に保障されているからだ。

 

一方で、若干ギャンブル的な生き方が好きな人は「稼いだ分から給与を払いますよ」という会社を好む。

稼ぐこと、というか、より正しく言えば安定よりもチャレンジとか勝負とかが好きなことが多いからだ。

 

人事制度も実はこれらのどちらかによって大きく異なっている。

 

「給与分は働いてください」

という会社では、業績指標はあいまいな方がよいし、評価結果は相対化しないといけない。

となると行動やプロセスを評価しないと、納得感が得られない。

社内のコミュニケーション頻度は高めた方が良い。

そして、雇用は安定していた方がよい。

 

「稼いだ分から給与を払いますよ」

という会社では業績指標はしっかりしている方がよいし、評価結果は絶対化しないと機能しない。

となると、絶対評価しづらい行動やプロセスは評価しないほうがよい。

コミュニケーションは社内での頻度を高めるより、外部ステークホルダーと実施させる方が良い。

そして、自由に出入りできる方がよい。

 

結局、どういう人たちを集めて、どういうビジネスをしたいのか。どんな成功を実現したいのか、ということについての会社のメッセージが、人事制度になる。

それが、戦略が人事を決める、ということだ。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

 

リーダーになるにはリーダーシップよりも重要なことがある

経営大学院で組織設計と人事マネジメントの基礎を教えている。

そんな中で、こんな意見を持つ受講生がいる。

 

「私は人事部門じゃないので、組織設計と人事マネジメントについては学問として興味はありますが、実際に使う機会がありません」

 

なら、人に関することでは、何に興味があるの?と尋ねると、決まって帰ってくることばがある。

 

「リーダーシップですね」

 

なるほどなるほど。

たしかにリーダーシップは重要だ。

昨今では、ピア・リーダーシップというように、どの階層、どの役割からもリーダーシップを発揮すべきだという主張が主流だ。

リーダーシップが重要だ、という意見に対して、私は決して反対しない。

 

けれども、経営学の古典にたちもどるなら、そしてもし、人事部門ではないけれども、経営のトップ層にまで出世する気があるのなら、やはり人事マネジメントは重要なのだ。

 

たとえば、こういう調査がある。

マネジャーを3階層の役割に区分して、4つの職務機能にどれくらいの時間をつかったかというものだ。

この調査からわかることは、「直接誰かにアプローチする」という意味でのリーダーシップ発揮時間は、役割階層を上がるにつれて減っていく、ということだ。

その代り、計画策定と組織化のための時間が増えていくのだ。

 

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役割の階層を駆けあがるにつれ、導くべき人の数は飛躍的に増えていく。

しかし、人が一時にコミュニケートできる人数には限りがある。

 

だからこそ、直接ではなく、間接的に人をリードすることが必須となる。

そのために、組織の仕組みを熟知し、人を動かすモチベーションとそのための仕組みを理解し、目の前の課題解決と成長のための最適な状況を構築しなければならない。

 

組織設計と人事マネジメントは、まさにそのための知識と経験を網羅した学問なのだ。

 

まあ、それも含めて広義のリーダーシップだと言ってしまえばそれまでかもしれないけれど。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)