成長のためには、協調より選別(セレクション)を優先する
SMBC経営懇話会の会員向けに、ほぼ毎月、人事に関する無料相談を実施している。
まあ無料といっても経営懇話会の会費(年額5万円~10万円)は必要だし、そもそも経営懇話会にどうやって入れるのかが若干よくわかっていない。
入りたい企業はとりあえず下記リンクを参考にすればよいらしいけれど、三井住友銀行と取引のある企業は、法人営業担当に聞いてみたほうが手っ取り早い、と聞いた。
ちなみに開催場所は東京駅前のSMBCコンサルティングのビル。
相談内容は、働き方改革とか人事制度改革とかまあいろいろだ。
とはいえ持ち時間が1時間だけなので、あまり深堀はできない。ヒントとか気付きを得るレベルにとどまることも多い。ただ、それでもみなさん大変喜んで帰られる。そのためか、実はかれこれもう5年ほど実施していたりする。三井住友系のシンクタンクにいた頃よりも、なぜか関係が深まっている。不思議。
で、先日、相談を受けた際に、興味深い相談があったので紹介してみたい。もちろん大きくアレンジして、わからないようにするけれど、僕がよく提言する内容が端的に示せる内容だったのだ。
社歴50年くらいのその老舗企業では、ここ数年、元気な営業課長が売上をどんどん伸ばしてくれている。しかし社内でそのことについて、「協調性がない」「わがままだ」「管理職なのに部下育成をしない」などの不満がたくさんでている。
一方で、この営業課長はすでに全社売上の15%近くを一人で稼いでおり、鼻息もあらい。インセンティブも払っているけれど「もっとほしい」「でないと客をつれて転職する」といった言動も出たりする。まあそんなことができる業界ではないのだけれど。
さて、経営陣としてどう対応すればよいか?という相談だ。
皆さんならどう答えるだろう?
こういう相談のとき、僕は必ず質問をする。
「5年後に売上を倍にしたいですか?それとも今の状態を維持したいですか?」
実は従業員についての課題は、個人の行動として捉えると本質を見誤る。
個人ではなく、企業としての戦略から考えなければいけない。
もし5年後に売上を倍にしたいのなら、売上をあげてくれている従業員をどう活躍させるべきか、という話になる。
そのためには、彼のような営業社員を採用し育成するとか、彼のような営業スタイルで行動することを評価するインセンティブの仕組みをつくるとか、そもそもプレイングスタイルの営業部隊を構築していくとかの対応を考えていく。人事評価制度設計や組織設計などが活きてくる。
一方で現状維持で良いのなら、彼が持ってきた客をどうやって彼から引きはがして、会社につけるべきか、という話になる。そして協調性のない彼をどうやって追い出すか、という話になってしまう。
大事なことは戦略をどう据えるか。
そのために、何を選択して何を捨てるのか。選別が第一なのだ。
売上をあげてくれる営業社員を選ぶのか、協調性を重視するそのほかの社員を選ぶのか、という選別だ。それは成長を選ぶのか、現状維持を選ぶのか、という選別に他ならない。
他の従業員が不満を言っているから、協調性を高めましょう、という解決先は基本的には現状維持のための手段だ。
もし成長を目指すのなら、尖った人をどう許容するかを考えなければいけない。
人材は、セレクション(選別)したのちに、バリエーション(多様性)をそろえていくべきなのだ。
(逆に現状を維持するのなら、バリエーションをなくして、セレクションもゆるやかにする。そうすればゆるやかな現状維持志向の組織ができあがる。)
あなたの会社のセレクションとバリエーションを生み出す仕組みは、ちゃんと機能しているだろうか?
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
僕自身のキャリアもそろそろ見直す時期に来ている
日経スタイルの記事が更新された。
一応、これが年内最後だ。年明けは1月9日かららしい。
ざっくり要点を言えば、一生同じ会社に勤務するにしても、転職を繰り返すにしても、5年から10年おきくらいでキャリアの転換を考えた方が良い、というお話。
これは実は僕自身にも当てはまると考えている。
僕は独立して6年ほどになるが、その間、人事制度設計を本業としながら、SMBCコンサルティングで研修講師をしたり、グロービス大学院で授業を受け持ったり、色々な本を書いたりしてきた。
それらはすべて、独立を成功させるための道筋であり、それが僕の独立後のキャリアになってきた。
そして、そろそろターニングポイントに来ている。
僕が活躍する状態から、僕の会社の従業員たちに活躍してもらう状態への転換だ。
考えるまでもなく、多くの成功している企業は、社長自身だけでなく、従業員たちの活躍によって成功している。
いつまでも社長が前面に出るのではなく、次の世代に活躍してもらえるようにして、称賛や報償を得られるようにしなければいけない。
そのあたりを来年は一気に推し進めようと思っている。
独立した後にもキャリアはある。
キャリアとはそもそもわだちの事だから、人が歩んだ後には必ずキャリアが残っているからだ。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)