最終面接にスーツは必須?
就活もクールビズで、という呼びかけをしている会社がある。
オファーボックスという、新卒向けの逆求人で有名な、i-plugという会社だ。
僕は一度、経営陣と食事をご一緒させていただいたけれど、元気でユニークな良い会社だ。就活クールビズに賛同している企業として、カゴメやコクヨなどがあるようだし、これからさらに広がるといいなぁ、と思う。
なぜなら、先日東京の電車内で聞こえてきた会話に、考えさせられたからだ。
男子の就活生たちがこんな話をしていた。お互いに丁寧語だったから、きっとどこかで知り合った就活仲間なんだろう。
仮にAくん、Bくんとするけれど、Aくんの状況に対して「正しい」対応はないだろう。社風とか、内定者の充足度とか、いろいろな要素がからみあって、それぞれの会社毎に答が異なるだろうから。
AくんとBくんはこんな話をしていた。
A 「〇〇社って知ってます?」
B 「ああ、知ってますよ。受けたんですか?」
A 「最終まで行ったんだけれど、僕のミスで落ちたんです」
B 「残念でしたねー。でもどんなミス?」
A 「スーツを全部クリーニングに出してしまったんです」
B 「え?!」
A 「二着をローテさせてたんですけれど、たまたま一日ずれてしまっていて、最終面接の日に着るスーツがないことに気付いたんです」
B 「ありゃー、それでどうしたんですか?」
A 「すぐに会社に電話したんですよ。そしたら電話に出た採用担当の人に大笑いされて。あ、これは大丈夫かな、と思ったんですけれど……」
B 「それで?」
A 「『私服でも大丈夫でしょうか?あるいは別の日程に変えていただくことはできませんか?』ってたずねたら担当の方の口調がいきなり変わって……『いや、笑ったけれど、社会人としてそれはなしでしょう。もう来なくていいですよ』って……」
B 「……まじですか」
A 「……その日は何もできませんでしたよ。だから今クリーニングがトラウマなんです」
この会話を聞きながら僕はすぐに、就活クールビズだったら違ったかな?と思った。
でも、そうじゃない会社も多いだろう、と考えて、答えがわからなくなった。
なにしろ最終面接だ。
それは儀式的なものである場合もあるけれど、本当に最終意思決定を行う場面であることが多い。であれば、可能な限り正装で臨むことがいいだろう。
たとえばクールビズを唱えている会社同士の打ち合わせであったとしても、最終契約の重要な場面では互いにスーツでそろえることもある。キメなければいけない場面では、できるだけより良い自分を見せなければいけないから、むしろそうしたくなることもあるだろう。
また、当日の面接役員が私服でもいいと判断しても、他の役員の中には激怒する人もいるだろう。そうなると採用担当としてはおいそれと冒険することはできない。
とはいえ、日程を変更するくらいはしてあげても良いようには思う。
あなたの会社の採用担当なら、どう答えるだろう?
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
天職は「作業」で考えればわかりやすい
そういえばときどき「天職」と言う言葉を使った文章に出会う。
んじゃ、天職ってなんだろう、と思って検索してみた。
そしてこんな文章に出会った。
「天職とは「天」から与えられた「職業」と書きます。
“それをするために生まれてきた”ものであり、それゆえに心の奥からは懇々と湧き出る情熱が数々の困難を乗り越えさせ、そして、“24時間年中無休で関わっていたい”と思わせるだけの仕事なのです。」
カウンセリングサービス■心理学講座「天職と適職〜天職とは??〜」より
少しハードルが高い定義だ。
でもまあ、クリエイターとか、個人そのものが資本となりうる職業の場合にはこの定義は正しい。
たとえばこんなツイートがまさにそんな状態をあらわしている。
吠えろペン、専門学生からの「この漫画業界で仕事をする一番の喜びはなんですか?」という質問に応答するシーン。この当たり前の感覚がない人が驚くほど多いんだよな。 pic.twitter.com/azEYLRdiKt
— E衛門(花も恥じらう伝説の女学生) (@gigigiemon) 2015, 2月 21
僕は漫画家ではないけれど、大きくうなずいてしまった。
ただ、天職を「職業」と言ってしまうと少しハードルが高いので、それをもう少しわかりやすく細かくできないのかな、と考えてみた。
それはきっと「作業」にまで細かくできる。
たとえば僕はコンサルタント(主に人事領域で、たまに事業計画策定とか、資金調達系の仕事をすることもある)をしている。
コンサルタントと言う仕事には、さまざまな作業がある。
それらを大まかに分けると、3つになる。
第一の作業は「コミュニケーション」だ。
第二の作業は「分析」だ。
第三の作業は「課題解決」だ。
そして解決する方向性をもってコミュニケーションにまで戻る。だいたいこの3つの作業群を繰り返すことがコンサルタントの仕事だ。
コミュニケーションと言う作業は、「ヒアリング」や「インタビュー」、「プレゼンテーション」「関係性構築」などに細分化できる。
主張することや傾聴すること、説得することや親しくなることなどがこれらの作業の内容だ。
分析と言う作業は、「情報収集」「情報整理」「情報分解」「基礎分析」「関係性分析」などに細分化できる。たとえば人事系で言えば、全社員の過去5年分の給与データと評価データを受け取って、「誰が本当に優秀な人なのか」「平均的な人の給与の増え方と制度との整合性はあるか」なんかを分析したりする。分析とは事実の塊の中に隠された、わかりやすい事実を見えるようにすることでもある。
コミュニケーションや分析を踏まえ、課題解決をする。事実の中でキーになる点をまとめて課題として整理する。課題の因果関係をあきらかにして、解決の糸口を探す。あるべき理想像を定義して、そこまでの改革のロードマップを作ったりする。
解決のための方向性を定め、道のりを定め、そして実際に歩いていく作業が課題解決だ。
コンサルタントと言う仕事を「天職」だ、と感じているであろう人の多くは、これらの作業のどれかに、すさまじく没頭できる人たちだ。
上記の漫画家についてのツイッターの例で言い換えると
「コンサルタント業界で仕事をする一番の喜びはなんですか?」
という質問に対して
「倒れるまで『課題解決』に没頭できることだ!」
「エブリデイ、『データ分析』ができる!1年中だ!」
「365日毎日、『分析』して『課題解決』策を考えてクライアントに『プレゼン』して喜んでもらえる。毎日だよ、毎日!」
と、嬉々として答えられる人たちだ。
「エンプロイアビリティ(転職力)が高くなること」だとか「収入がそこそこ高いこと」だとか「合コンでもてるから」という理由をあげる人もいるだろうけれど、酔わせて本音を聞きだすと、結局のところ、コンサルタントとしての作業が好きだからできているのだ。
漫画家の知人も何人かいるけれど、彼らはやっぱり「絵を描いていれば幸せ」「物語を作っていれば幸せ」という人たちだ。小説家の知人も、絵が文章になるだけで同様だ。
就職とか転職とかを考えるとき、自分が時間を忘れて没頭できる作業がなんなのかを考えてみるのもいいかもしれない。
きっとそれが天職にたどりつく近道になる。
※蛇足になるかもしれないが、天職は、本業じゃなくてもいいと思う。ただ、できればお金に変えられる状態にすることが望ましいので、副業の形ででも、没頭できる作業をビジネスにする方法を考えてみると、なお良いだろう。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)