人事制度の公開を法律で義務化できないものか
学生の中小企業志向が高まっているという記事がありました。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120515/trd12051521550021-n2.htm
まあ、単純にとらえてはいけませんよね。
この手の記事には、裏にいろいろな思惑が透けて見えます。
そもそもこの記事を書いている人は、大出版社の記者であるわけですし。
■ 新卒は大企業に入るべきだ
学生の大企業志向は基本的に正しいわけです。
賃金水準データとか、生涯賃金とか、転職可能性とか、エンプロイヤビリティとか言うまでもなく、大企業の方が絶対良い。
特に、新卒で入るなら絶対、大企業がいいわけです。
優秀な人ほどそうです。
明らかに言えるその理由は一つです。
それは、同じ水準かそれ以上の人物が周りにいる環境を手に入れることができるから。
人の人生は出会いにつきます。
今まで以上に刺激的で、自分を嫉妬させ、興奮させ、奮起させる。
そんな出会いをどれだけ得られるかが、人の成長につながります。
就職もその一環です。
鶏口となるも牛後となるなかれ、と言う言葉があります。
それはその通りだと思います。
でも、中小企業に就職することが鶏口ではありません。
鶏口とは、自分がその組織の長になるようなことです。
だから、会社に入るよりは、起業しなさい、と言う風にとらえることが妥当です。
■ 企業規模とキャリアはあまり関係がない
で、中小企業がすべて悪いかと言えば決してそうではありません。
大企業すべてが良いか、といえばそうではありません。
一般的大企業は「飼い殺し組織」が多い。
今、就職しようとしている人たちには十分な情報がありません。
みんなそうです。
だから、優秀な人は大企業を目指します。
そんな人たちと同じ組織に入るには、やはり大企業を目指すしかない、というだけのことです。
もし本当に良い会社についての情報がオープンであるならば、大企業志向でなくてもよいのです。
■ 目指すべき会社のポイント
就職したほうが良い会社とはどういう会社でしょう。
その場合の条件を考えてみました。
① 給与が高い
② 給与が増える
③ 他社に高い給与で転職できる
④ 働いていて自慢できる
⑤ なんとなく幸せな感じがする
正直なところでいえば、この5つの条件でしょう。
働き甲斐とかやりがいとかよりも、実際のところ、この5つが大事でしょう。特に多くの人にとっては、④働いていて自慢できる、とか、⑤なんとなく幸せな感じがする、とかの方が大事でしょう。
しかし、どの会社で上記の条件が実現できるか、ずいぶんと秘密になっています。
今回のテーマは、これを公開できないか、ということです。
転職が増えていますが、転職する側にとって企業側の情報は多くありません。
転職支援企業でも十分な情報は持っていません。
また、その会社の従業員であっても実は知りません。
例えば40歳の営業課長が自分の会社の20代社員の給与額を知っている可能性はほとんどありません。
「え、それだけなの?」
とか
「そんなにもらっているの?」
と言う言葉は山ほど聞きました。
また、給与制度変更の説明会があったとしても、年次別の昇給額の変遷なんて誰も覚えていません。
労働力が市場で売買されるようになって久しいのですが、あいかわらず、求職者にとって不利な状況が続いています。
だから、企業側に、人事制度情報の公開を義務付けてはどうか、ということが私の提案です。
人事制度情報公開で得をする企業は本当にしっかりした企業です。
それは大企業であるか中小企業であるかに関わらず。
しかし、しっかりした企業であるかどうかは相対論です。
全体の水準があがれば、要求される水準も高まります。
だから、大半の企業にとって、人事制度情報を公開することは不利益にしかならない。
あるいは、おおいなる人事制度談合が生じるだけかもしれません。
しかし労働力市場が健全化するには、とても有効な方法です。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)