マズローの欲求段階を『逆』に読む
人事制度を作る立場にいると、マズローの欲求段階説と良く出会います。
すると、wikiで手に入る程度の情報しか持っていないとただのふわふわした議論に陥ってしまいます。
そんなとき、私が辞書のように戻る本があります。
古くて高いんですが。
マズローさんが決してふわふわした概念として欲求段階を示していないことがよくわかります。
例えば欲求段階(下記の五つ)において、下位が100%満たされていなくても上位が満たされる場合がある、ということなど。
自己実現の欲求
承認の欲求
所属と愛の欲求
安全の欲求
生理的欲求
平均的な人は、生理的欲求で85%、安全の欲求で70%、所属と愛の欲求で50%、承認の欲求で40%、自己実現の欲求で10%満たされているそうです。
個人的に、人事制度の現場で感じるのは二つのポイントです。
第一に、相対性
第二に、喪失時の欲求の激化
『相対性』はたとえば欲求が満たされている人であっても、『他人が自分よりも満たされていると感じた時に、欲求の度合いが下がる』という現象です。
おなか一杯なんだけれど、となりでおいしそうなものを食べている人がいると、つい手を伸ばす、ということなどです。
『喪失時の欲求の激化』は、フラれた相手にしつこくストーキングする人なんかの行動です。
これがなぜ人事制度に関係するかというと、例え自分が5000円昇給しても、隣の同僚が6000円昇給していると悔しいと思ったりする。つまりせっかくの昇給が、動機づけにならないわけです。
また、評価Aをずっととっていた人が、たまたまB評価になる。すると、評価者に対して激怒したり、うつ病にまでなってしまったりする。
これらをうまくバランスを取りながら人事制度を作っています。
慎重さが求められますが、うまくはまって企業組織が一段と飛躍した時の感動は格別です。
私のこの感覚は、自己実現の欲求になるのかもしれません。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)