あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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有名人になるということ

タイトルに書きましたが、私が有名人というわけではないです。
でも、見ず知らずの人が、私の顔と名前を知っている、ということが増えていることについて、いろいろ思ったのです。

私の本の出版前、勝間和代さんの本を読みました。

 

「有名人になる」ということ (ディスカヴァー携書)
 

 

西原理恵子さんのイラストが秀逸で、それでもなお、内容に学ばせていただきました。
勝間さんとは大学院の同期です。
先方は私のことなんて覚えていないとは思いますし、私も同じ授業で記憶にあるのは、宇野淳先生のマーケットマイクロストラクチャーでご一緒したことくらいです。宇野先生の授業は含蓄が深く、株式市場のマーケット理論を踏まえながら、労働市場のマーケット理論に応用できないものかと、現在あれこれ試行錯誤しています。
話がそれましたが、勝間さんは大学院時代から別格のような感じでした。
年齢も同じ、もといた会社(アーサーアンダーセン)も時期は違えども同じ、ということで親近感は湧くのですが、それよりも上記の本に今更ながら学ばされます。

「有名になることで、チャンスもリスクも大きく増幅する」

と言う言葉はまさにその通りだと思います。
重ねて言いますが、私はぜんぜん有名人というレベルではありません。
この文章を読んでくださっている方の大半は私の知人でしょうから、それはご理解いただけるかと思います。

チャンスは多くいただいています。
本を出す前と、出した後では、それはレバレッジがたしかに効いているのだなぁ、ということがわかります。

一方で、例えばニコニコ動画のニュースサイトで揶揄されたりもします。
極端な否定はないのですが、顔も見たことのない人が著者について語る、ということは私も飲みの場ではしたりします。
でも今はそれがネットに出てくる。
顔も知らない誰かが、私のうわさをしている。
こわいなぁ、と思うのです。

一方で、目指すところに行こうとすれば、さらにその怖さを甘受しなければいけない、ということも理解したのです。
怖いけれど、行かなければいけない。
安全と言う保障がないジェットコースターに乗るような気持ちです。

そんなことを考えていると、大学院時代のパーティを思い出しました。
当時、日本総合研究所という会社にいたのですが、大学院主催の飲み会がありました。
いろんな人と名刺交換をしながら話し込んでいると、ある人が前に現れました。
若くて優秀そうな方で、あわてて名刺を取り出して挨拶しました。
その人は私の名刺を受取り、その人も私に名刺をくれました。
でも。
その人は私の名刺を見ずに、私に言ったのです。
「平康さんですよね」
「はい?!」
「お顔は存じ上げています」
そう言って彼は、手にしていたカバンからクリアフォルダーを出して、大事そうに書類を見せてくれました。
それは私が日本総研のコラムに寄稿した文書を出力したもので、私の顔写真付でした。
「いつも勉強させていただいています」
そうおっしゃってくださったその方の言葉を忘れることができません。

有名人になることで、誰かの助けになるのなら、それもいいのかもしれない、と思いました。


 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)