あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

コミュニケーションもスキルだから、伸ばすことができる

榎本まみさんにお会いしました。

土井英司さんが主宰するエリエスブックコンサルティングのセミナーでは、本当に多くの方々にお会いさせていただきました。
そのお一人お一人を紹介することは難しいのですが、なかでも印象に残った榎本まみさんをご紹介したいと思います。

といっても、榎本さんの方が私よりもぜんぜん有名ですが。

 

督促OL 修行日記

督促OL 修行日記

 

 


この本の著者の方です。
仕事でもまれて、きつい人になっておられるのかな、と思ってました。
でもとてもソフトで控えめな方です。
華奢で可愛らしい感じなのに、きつい罵声に耐えておられるのかと思うと、その心労を慮ってしまいます。

この本の一部を私も引用させていただくことがあります。
例えば、管理職研修の中で、こんな引用をします。
「本当に伝えたい話をするには、相手に『会話を打ち切られない』ようにする必要があります。
それはそのまま打ち切られることもあれば、内心でのブロックをかけられる場合もあります。
だから、会話では一言目がとても大事です。
例えば、『督促OL修行日記』と言う本がありますが、その中にこんな文章があります。
要約すると、『督促電話なんて受けたくない相手に、とりあえず督促のメッセージを伝えるまでは電話を切られてはいけない。だから最初に、謝ってしまう。それは電話の時間を取ってもらうことに対する謝罪であって、それによって、この電話を切るとこの人に申し訳ないな、という思いを持ってもらう』ということです。

嫌な話をするにもそんなテクニックがある。管理職である皆さんが部下に話すときにこの考え方を応用できます。
叱る場合だけではありません。
褒める場合もそうです。
例えばまず最初に、今日目の前に来てくれたこと、打ち合わせに参加してくれたこと、それに対する『お礼を言う』。ねぎらいの言葉よりも、自分の感情としてのお礼の方がいい。
それによって、相手が一歩こちらに近づくことができます。
そのあとで、褒める、叱る、といった本来のメッセージを伝える。
そうすれば、あなたの言葉はもっと部下の心に沁みとおります」

これらはコミュニケーションのコツのようなものかもしれません。
コミュニケーションというと、生来持って生まれた明るさとか社交性、と思われる方がいらっしゃるでしょう。
私もそう考えていました。

でも、コミュニケーションはスキルです。
根が暗かろうが、どもる癖があろうが、人付き合いが苦手だろうが、スキルとしてのコミュニケーション能力は身に着けることができます。

私自身、人付き合いが苦手です。
大勢の人の前で話したり、いろいろな人と話し合った後で一人になると、意味もなく落ち込みます。
どもり癖もあったし、一言目は話せても、5分以上初対面の人と話すと何を話していいかわからなくなったりもしました。緊張もするし、逃げ出したくもなる。

でも、今お会いする方々にはそんな私の内面を気付かれない程度には、コミュニケーションのスキルを獲得することが出来ている、と思います。きっと……いや、多分。

これからの社会では、今まで以上にコミュニケーションスキルが大事です。
私の著書の中で、人事というものはゲームのルールのようなものだと書きました。
会社の中でうまく生き残り、成長するためには、そのルールを知ることが大事だと。
でも、さらに、ルールを動かしている相手がいます。その相手も人間です。
ドラゴンクエストのようなコンピューター相手のゲームではなく、MMORPGのように、他のプレイヤーを相手にしなければいけません。
ルールがあって、相手がいる。だから相手の感情を知る。
コミュニケーションスキルは、そのために絶対に必要なものです。
そして、そのコミュニケーションスキルは、誰でも獲得することができます。

榎本さんの本には、新卒社員が修行を積んで成長していく姿が描かれています。
自分に自信を持てない人、どうすればいいかわからない人にとって、おおいに指針となる本だと思います。
読み物としても面白いです。
ぜひ、一度手に取ってみてください。

 

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)