あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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数字で語ろう (不定期連載)

先日、出張帰りに、以前うちの会社で働いてくれていた人と待ち合わせしました。
今、うちで働いてくれている大学院生の人が卒業するので、そのフェアウェルに来てね、という話をするためだったんですが。

せっかくなんで昼食を一緒にしながらいろいろと話をしました。
で、こんなことを言われました。

週刊プレイボーイの記事で、『120社の人事制度を作った』ってありましたけど、盛っても良かったんじゃないですか?」
「なんで?」
「だって、他のコンサルさんで、3000社とか5000社とかあるじゃないですか」

うーん、と考えました。
そうすりゃよかったな、じゃなくて、どう説明しようかな、って。

「あのさ。一応僕もセミナーに来てくれた人を『指導した』ってカウントすれば、数えたことないからわからないけど、多分600社とか1000社とかにはなるわけよ。でもそんだけの数字はいらないんだよね」
「なんでですか?」
「僕の知ってる超優秀なコンサルタントで、経歴30年あるんだけど、実績としては20社、とか言う人が普通にいるわけよ」
「……へ?」
「一方で、普通の社労士さんとかで、実績1200社、とか言う人もいるでしょ」
「それって……なんでですか?」
「ビジネスモデルが違うからだよ。実績20社だけの超優秀な人は、1社に3年とかかかりっきりだったりするんだよね。そんで毎年何千万何億とかfeeを稼ぐから、他の営業をする必要もなくて、それでokなわけ。そのままパートナーとかになったりしてる。逆にそういう太い客を捕まえられない人が毎年20社、30社とかの実績を積んだりするしね。もちろんたくさんの会社から受注貰うってのはそれだけ優秀なんだけど」
「はあ」
「で、3000社とか5000社とかの実績を語るコンサルタントはビジネスモデルが違うんだよね。会員組織を作っていて、有料メーリングリストを購読してくれている企業を1社に数えたりするから。だからウソをついているわけじゃないけれども、それは僕の実績の数え方とは違うってのはわかる?」
「それはそうですよね」
「僕の場合、業種別とか職種別とかのルールはこうなってますよ、ってことに対しての信ぴょう性を、読者に与えることができればいいわけで、そこに3000社はいらないよね。でもさすがに10社だと一般論ではない。実際僕に出せる数字は、納得して出せる120社か、盛って出せる600社だったわけだけど、目的から考えると、盛る必要はないわけだよ。120社でも、『ああ、こいつはいろんな会社わかってんな』って思ってもらえるのなら、盛って後ろ暗い思いをする必要もないじゃない」
「なるほどー。でもたしかに数字って大事ですよね。多くの企業のコンサルしました、ってよりも、120社って数字があるほうがなんとなく信頼感がわくし」
「そりゃそうだ。例えば、君がボランティアでやってる活動だって、二つの例からどっちがいい印象を与えると思う?」

例①:私たちは多くの子どもたちに、手作りの楽器の楽しさを教えています。映像でその様子をご覧ください。
例②:2009年から初めて、自分で楽器を創る、385人(2013年2月1日現在)の子どもの手を握ってきました。映像でその様子をご覧ください。

「おお!なんか俺、すっげーことやってるみたい!」
「まあ、君はすっげーことやってると思うけどさ。数字はそう使わないといけないんじゃないかな」
「なるほど。じゃあ、ちょっと別の相談なんですけど、うちのボランティアの子にもっとやる気を出してもらうための、数字の使い方ってあるんでしょうか」
「お金出してないんだよね。だったら、まあ、いろいろあるよね。笑顔を数えるとか、積み上げるとか」
「なんすか、それ」
「それは……」

とかまあそんな感じですが。
ボランティアに対して、お金を使わず、数字を使って、頑張ってもらうための方法はまたいずれ。
ちなみに彼の活動は実在します。

手づくり楽器の森
最近は少しお休みしているみたいですが、再開したら今度うちの子どもも連れて行こうと思っています。


でもまあ、数字大事ですよ、数字。
統計学者は魔法使いだ、というのが持論です。

そう言えばこんな本もありますね。

 

 

統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

 

 

 

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平康慶浩(ひらやすよしひろ)