あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

人事と金利とお金のこれからの理論 (企業側視点1)

デフレーションからインフレーションに本格的に移行してゆく可能性が高くなってきました。
そこで、企業がどうすべきかを、コンサルタントの立場で何回かに分けて書いてみます。

想定読者は企業経営層とか管理職などです。
だから、働いている人の側に立っていません。その点ご注意ください。

また、あまりかっちりと書こうとすると論文みたいになってしまうので、一回一回は短めで、ふわふわと書きます。
ロジックが甘い点などは笑って許してください。

まずデフレが解消される順序なんですが、簡単に書くとこうなります。

① 国がインフレにしますよ、国債も日銀に買わせますよ、ということでみんなが期待する
② 国債の発行利率が下がる&株価があがる
③ 株を持っている人や企業がうまみを得る
④ ③の人や企業が消費する
⑤ 儲ける企業が増える&株価があがる
⑥ 預金よりも投資が有利になるのでお金が株などにまわる
⑦ 企業がさらに投資できる/するようになる
⑧ さらに企業が儲ける
⑨ たくさんの人を雇うようになる

今すでに、③~④の人たちもいますよね。先週の日経でも、高価格商品の消費が増えたという統計データがありました。
インフレ期待バブル、とも言われていますが、結局のところインフレもデフレも、人の期待から始まります。それが実体化した時に本当の景気浮揚となったり、景気の落ち込みになります。
だから期待感先行は当たり前だしよいことです。

ではこの状況に企業は『人事面』でどのように対応すべきか。

まずビジネスタイプによって対応すべきタイミングが若干異なります。
上記の9つのステップで言えばそれぞれ以下のタイプのビジネスと関係があります。

①②③⑤⑥⑧ 金融系や不動産系
④ BtoB商品系、高価格系(資産になるような商品を扱っている企業)
⑦ BtoB機械系、IT系、マーケティング系
⑨ BtBサービス系

皆さん自身がどのタイプのビジネスを経営しているかにもよりますが、上記のタイミングで自社の業績にインフレターゲットが関係してきます。
具体的には、事業計画よりも実際の業績数値が月単位で上回り始めるようになるわけです。
今月の売上は5000万円、だと思っていたのに、5100万円になって、さらに翌月の見込みが5200万円だったりする、というような状況です。
今年の初夏頃にBtoBのメーカーに影響が出てきて、秋過ぎくらいにサービス系にまで広がると予想しています。
(ちなみに上記のポイントは、BtoCビジネスへの影響は当面はないだろう、ということでもあります)

名目金利、つまり銀行からの貸出金利が上がるのが下がるのか、それはまだわかりません。
とりあえず国債の発行利率はしばらく低いままでしょうから、2013年中はTIBORも低いままだと思います。

さて、企業としては業績が上がってくると一般的に仕事が忙しくなります。
雇用を増やすのは怖いので、通常は残業や休日出勤をさせるでしょう。そうすることで、実質的に企業が支払う賃金が増えます。
人件費総額も増えますが、売上上昇が先行しているので、問題となる可能性は低い。
残業代支払の推移はこれからもウォッチしていきたいと思っていますが、それ以外にも賞与の加算も考えられます。
ただ、賞与は年度末の決算を見てから加算と言うことが多いでしょうから、実際に人件費に反映されるのは2014年夏からになります。
でも、とりあえずは残業代の形で実質給与が増えることになるわけです。

では企業の人事部門としての2013年の課題はどういうものになるでしょうか。

私自身が予想している2013年の人事課題は3つです。

第一に、継続的な生産性向上
 なぜなら残業代を支払いたくない、と言う企業が増えるからです。
 インフレターゲットがうまく行ったとして、2014年には、20年ほど前まで存在したベースアップという概念が復活する可能性もあります。
 せっかく職務給的な仕組みが広がり始めているのに、ただ雇っているだけの人の給与が増える。
 それはとても怖いことなので、人件費率をキープしたままでの業績向上の仕組みを今までよりも求めることになります。
 その準備をするには、2013年の前半が重要になってきます。

第二に、賞与基準の見直し
 利益を業績賞与で分配するという企業は多くなっています。その仕組みも10年ほど前から多くの企業が導入しています。
 でも、実際に利益が出ていなかったので仕組みを寝かせている企業も多い。
 そして、本当にこれから利益が出てくるようになれば、その配分をどうするか、改めて考え直すことになります。
 収益状況がわかってくる2013年後半から準備をして、2014年に備える必要があります。

第三に、年功処遇ぶり返しへの反論明確化
 基本給の仕組み部分に手を入れたい、という企業は、まだ職務給的な仕組みに移行していない企業に限定されるでしょう。
 一方で、職務給的に定期昇給をさせなくなっている企業は、年功主義的定期昇給という要求に直面する可能性が増えます。
 業績もあがって物価もあがっていく。ならば給与をふやせ、という理屈です。
 これに対して企業側がどのように理論武装していくのか、ということが求められるでしょう。
 これは世論動向を見ながらになりますが、やはり2013年後半の課題になると考えます。

これらのことから言えるのは、雇用の拡大と個人収入増加、と言う二つの命題に対する実質的な答えが2013年度は出ないだろう、ということです。
企業側としてはその意味では猶予期間が与えられる結果になりますが、インフレが実質的に機能しだした場合、2014年には具体的な対応を市場的に求められる可能性が高まります。
なぜなら業績が好調な企業が初任給をあげたりすると、優秀な人材はそちらに流れるからです。
他社がやらないうちは自社もやらなくていい、ということは判断として当然です。
一方で、他社がやらないうちにやるからこそ、出しぬける、ということもまた事実です。
そのための労働市場ウォッチこそが、2013年の人事担当者には、一層求められることになると言えるでしょう。

 

 

セレクションアンドバリエーション株式会社

平康慶浩