あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

「ありがとう」より「うれしい」と言おう

他人にいいことをしてもらったとき、人は「ありがとう」と言いますよね。

お礼を言われて悪い気になる人はいません。

しかしよく考えてみると、「ありがとう」はちょっと便利すぎる言葉です。

それに、言う側にとって、口に出しても何も損を感じさせません。

むしろ「ありがとう」を言い慣れている人にとっては、とっても安い言葉になっている場合すらあります。

もしあなたが誰かに何かをしてあげて、「ありがとう!」と言われたらどう思うでしょう?

実は、何も感じないことが多いのではないでしょうか。
あるいは、(それくらい言われて当然だ)と思うかもしれません。

「ありがとう」はあまりにも簡単に使われすぎていて、本来持っている言葉の価値がずいぶん下がってしまっています。

もしあなたがそう感じているとしたら、「ありがとう」と言うべき場面で別の言葉をいいましょう。

「うれしいです」
「うれしかったです」
「とても、うれしいです」

想像してみてください。

どちらがあなたにとって良い言葉でしょうか。

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なんて、ちょっと自己啓発っぽく書きましたが、お礼としては「ありがとう」よりも「うれしい」の方が有効です。

これには三つ理由があります。

第一の理由は、「うれしい」は大人からあまり聞かない言葉だからです。
だから、言われることが珍しく、印象に残ります。

第二の理由は、「うれしい」は感情だからです。
自分の感情をおもてにあらわすとき、人は気恥ずかしさを感じます。
だからウソをつきづらいし、形式的なことばになりづらい。
そんな言葉の方が、聞く側の心に響きます。

第三の理由は、「うれしい」は相手を指さないからです。
「ありがとう」が「私」から「あなた」に対する言葉であるのに対し、「うれしい」は「私」だけで完結しています。だから、聞く側にとって一歩距離を置いた、客観的事実として受け止めることができます。

印象に残り、心に響き、そしてそれが客観的事実である、と知った時、その言葉は「ありがとう」よりも相手に「この人に良いことをしてあげた」という満足感を与えます。

小さな子供になにかしてあげたことを思い出してみてください。
あなたがしてあげたことに対して、以下の二つのどちらを言われた時の方が、あなたは満足するでしょうか?

① ぺこりとお辞儀をされて「ありがとうございます」と言われた時
② もじもじしながら「うれしい」と微笑まれた時。

礼儀正しいのは①ですが、②はあなたをとても満足させるのではないでしょうか。



平康慶浩(ひらやすよしひろ)