「ありがとう」より「うれしい」と言おう
他人にいいことをしてもらったとき、人は「ありがとう」と言いますよね。
お礼を言われて悪い気になる人はいません。
しかしよく考えてみると、「ありがとう」はちょっと便利すぎる言葉です。
それに、言う側にとって、口に出しても何も損を感じさせません。
むしろ「ありがとう」を言い慣れている人にとっては、とっても安い言葉になっている場合すらあります。
もしあなたが誰かに何かをしてあげて、「ありがとう!」と言われたらどう思うでしょう?
実は、何も感じないことが多いのではないでしょうか。
あるいは、(それくらい言われて当然だ)と思うかもしれません。
「ありがとう」はあまりにも簡単に使われすぎていて、本来持っている言葉の価値がずいぶん下がってしまっています。
もしあなたがそう感じているとしたら、「ありがとう」と言うべき場面で別の言葉をいいましょう。
「うれしいです」
「うれしかったです」
「とても、うれしいです」
想像してみてください。
どちらがあなたにとって良い言葉でしょうか。
**********************************
なんて、ちょっと自己啓発っぽく書きましたが、お礼としては「ありがとう」よりも「うれしい」の方が有効です。
これには三つ理由があります。
第一の理由は、「うれしい」は大人からあまり聞かない言葉だからです。
だから、言われることが珍しく、印象に残ります。
第二の理由は、「うれしい」は感情だからです。
自分の感情をおもてにあらわすとき、人は気恥ずかしさを感じます。
だからウソをつきづらいし、形式的なことばになりづらい。
そんな言葉の方が、聞く側の心に響きます。
第三の理由は、「うれしい」は相手を指さないからです。
「ありがとう」が「私」から「あなた」に対する言葉であるのに対し、「うれしい」は「私」だけで完結しています。だから、聞く側にとって一歩距離を置いた、客観的事実として受け止めることができます。
印象に残り、心に響き、そしてそれが客観的事実である、と知った時、その言葉は「ありがとう」よりも相手に「この人に良いことをしてあげた」という満足感を与えます。
小さな子供になにかしてあげたことを思い出してみてください。
あなたがしてあげたことに対して、以下の二つのどちらを言われた時の方が、あなたは満足するでしょうか?
① ぺこりとお辞儀をされて「ありがとうございます」と言われた時
② もじもじしながら「うれしい」と微笑まれた時。
礼儀正しいのは①ですが、②はあなたをとても満足させるのではないでしょうか。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)