レモンマーケット論(2):なぜ労働市場がレモンマーケットになるのか
執事と化した正社員たち、を書くつもりでしたが、「レモンマーケット論」とタイトルしてしまったので、少し続けます。
レモンマーケットとはググればわかりますが、簡単にいうと
「買い手が粗悪品をつかまれやすい市場」という意味です。
結果としてその市場では最安値での取引が当たり前になり、粗悪品だけが流通することになる、という考え方です。
レモンマーケットが形成される理由はいろいろありますが、基本的には以下の3つです。
① 買おうとしている商品が良いモノか悪いモノかがわわかりづらい。
② そもそも悪いモノが市場に出回る確率が存在している
③ 売り手が責任を問われない
ネット通販が普及し始める頃、特にオークションサイトではこのような可能性が高かった。
そこで上記の内、③を解消したわけです。
それが口コミや評判などの、売り手に対する評価、です。
みなさんもネットで何か買うとき、その売り手の評価が悪かったら、そこからは買いませんよね。そうすることで、ネット市場はレモンマーケット化を阻止しています。
レモンマーケットはもともとはアメリカの経済学者でノーベル経済学賞もとられた、ジョージ・アカロフ先生が提唱した概念です。
中古車市場について論じたものですが、そういえば昔は中古車に騙されない、という本もいろいろありました。最近は中古車市場も是正されていますが、ガリバーのような買い取り専門業者が出てきたこともその大きな要因です。この辺は話がそれるので、またいずれ。
さて労働市場がレモンマーケットになる、と前回の記事(
)で書きましたが、上記の3つの条件をあてはめて検証してみましょう。
【労働市場がレモンマーケットになる可能性の理由】
① 買おうとしている商品が良いモノか悪いモノかがわわかりづらい。
⇒人の能力は目に見えません。また、せっかく雇ってもすぐにやめてしまうかもしれません。
② そもそも悪いモノが市場に出回る確率が存在している
⇒人の評価に絶対評価の基準はありません。相対評価である以上、必ず「相対的に能力が低い人」がうまれてしまいます。
③ 売り手が責任を問われない
⇒労働力の売り手は本人です。だから責任を取ることは本人にしかできません。それは通常、解雇ということになります。
解雇規制の緩和は、上記の内③を解消しようとするものです。
雇ってみたけど期待ほどではなかった場合にすぐに解雇できるようにする。
有名なところでは、2006年にフランスで導入されたCPEがその典型です。
ただ、ご存知のようにフランスでCPEは大規模デモですぐに撤回されました。
たしかに労働市場をレモンマーケットにしないためには、解雇規制の緩和は有効です。
ただ、それが第一の解答か、というと疑問が生じます。
そもそも労働市場における「良いモノ」とはなんでしょう。
そのあたりはまた次回。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)