あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

課長のままで定年できない仕組みの中でどう生きるか(3)

前回と前々回記事はこちら。

 

課長のままで定年できない仕組みの中でどう生きるか(1) - あしたの人事の話をしよう

 

課長のままで定年できない仕組みの中でどう生きるか(2) - あしたの人事の話をしよう




まず最初にあとがきを。
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続きを書き終えて思ったのですが、私の書く記事って一般的なサラリーマン向けの記事っぽいタイトルでも、よくよく読んでみると「企業側はこう思ってるんだよ」というかなり冷酷な視点が入っています。それ作ってるコンサルの一人がお前じゃないか、と、読む方が冷めたりするかもなぁ、とも思うのです。

自分自身のスタンスとしては、企業の存続が第一です。存続のために利益と成長を実現する。
そのための仕組みを設計しては導入します。
決して「企業は働く人を搾取しまくっているんだ!」という意見には同調しません。
法人としての企業も生き残るために必死なのです。

ただ、それでも、働く人がもう少しだけでも幸せになれればいいなぁ、と思います。
そのために会社の中のルールはこうなっています、ということを書いています。
専門用語が出てきたりしてわかりづらい点もあるとは思いますが、自分を取り巻くルールと、その背景を知れば、幸せになりやすい道を選びやすくなると思っています。

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さて本題です。

役職定年の網を逃れる方法ですが、それは二つです。
第一の方法は簡単ではありませんが、第二の方法は大企業にいるのであれば検討の余地があるでしょう(そもそも役職定年の仕組みは大企業に多いので)。
ただ、もっと本質的な方法を、その後に書きます。

役職定年の網から逃れる第一の方法。
それは、役員層になることです。
多くの場合、役職定年年齢は以下の範囲にあります。

 課長級 : 52歳~55歳
 部長級 : 55歳~58歳

しかし執行役員(実際には役員ではなく従業員ですが)や執行役、取締役になると、定年年齢が延長されます。
少なくとも60歳までは役職につけるし、そのあと役職を外れたとしても、通常の管理職とは異なる役職を与えられる優遇措置があります。

あなたの会社でどうすれば役員になれるか。
それはあなた自身が、会社の役員達を見ていればおのずとわかるはずです。
とりあえず、その方法は、目の前の仕事を頑張る、というものではないはずです。

年齢的にもう遅い?そうかもしれません。
でも、可能性があるのならチャレンジしてみましょう。
そして、どうしても無理なら、第二の方法を考えます。


役職定年の網から逃れる第二の方法。
それは、子会社・関連会社への役員としての転籍です。
この時、気を付けなければいけないことが三点あります。
 ① そもそも子会社転籍の際に給与水準が下がることが多い。
 ② 役員以外で転籍すると役職定年はついてくることが多い。
 ③ 転籍でなく出向だと、本籍の会社の役職定年は維持されることが多い。

子会社や関連会社を持つ企業は大企業に多いのですが、役職定年そのものが大企業に多い仕組みなので、これらは有効に機能します。
今50歳で、子会社に転籍して下がる給与額が10%未満で、役員待遇で移籍できるのなら、社会人生活を確実に引き延ばすことができます。意外にやりがいも大きくなったりします。
親会社のプライドにひきずられない方であれば、考えてみる余地はある選択肢です。


さて、これらの方法はあくまでも役職定年と言う網を潜り抜ける方法です。


より本質的には、やはり生産性を高めることが最も重要だ……と思われるでしょう。
かけがえのない個人になる方法。
そのために自分自身を磨いて、社内で活躍する。

今もしあなたが団塊ジュニア世代であれば間に合うかもしれません。
でもバブル世代だとちょっと難しい。
なぜなら、あなたがいかに優秀であろうと、同じくらい優秀で若い人がたくさんいるからです。
バブル世代でありながら部長級になっていないのであれば、残念ながらもう役職定年のレールに乗っかっていると言わざるをえません。
それならば、社外で活躍する準備を始めた方がいい。
それはちょっとした副業でもいいし、ボランティアでも構いません。
今趣味に使っている時間を、少しだけお金に変える努力をしてみる、ということです。
それは、年収が激減した際にそれをフォローする手段を手に入れておくということです。
もちろんその結果は一朝一夕にはでてこないでしょう。でも準備しておかなければいつまでも結果は出ません。
せめて5年前から準備するようにしましょう。


最後に、今回の3回の記事で伝えたかったポイントを書きます。
それは、40歳以上のサラリーマンにとって、会社の中でのレールがまだ存在しているということです。
その一つが役職定年です。
いざその時期になると、まるで落とし穴がそこに待ち構えていたような錯覚を感じる人も多いようです。
しかし、人事関連の各種規程、就業規則などを読めば、どんな仕組があるのか書いています。
それを読んでいさえすれば、落とし穴ではなく、レールがそこにたどり着くということをあらかじめ知ることができます。

昨年末に出した本では、会社員生活にレールがなくなりルールが出来た、と書きました。
でも、40歳以上の人たちには、レールが残っている場合があります。
そのレールは、決して黄金ではできていません。

ただ、企業は決して従業員をこきつかって使い捨てしよう、となんて思っていません。
どうすれば業績を伸ばせるか、収益を高められるか、ということを第一に考えてはいますが、そのための方法として、従業員が成果を出しやすい仕組み、成長しやすい仕組みの導入を常に考えています。
そのバランスをどう取っていくか。
コンサルタントとして研究と提言を進めていきたいところです。


記事の第二回で書いた、65歳までの定年延長と再雇用問題についてはまたいずれ書きます。
もし


 

 

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平康慶浩(ひらやすよしひろ)