あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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キュレーターに頼るのもいいんだけど泥臭い現場もいいと思う

友人の菅谷義博くんがFacebookで、BLOGOSの堀江さんの記事を勧めてたんで読んでみました。リンク貼るのがめんどくさいので、2013年05月01日 07:30 で調べてみてください。
いろいろなかなか面白い意見が書いてあるので興味深いのですが、キュレーションが一つキーワードになっていました。NAVERまとめとかそういうやつね。まあ、その人にあった記事とか情報とかを選んでくれるサービス、と考えておけばいいと思います。

美術館とかもそうですよね。
展示会はウケるものを展示してくれているわけで。たまに大手の広告代理店が数年がかりで仕組んでるなぁ、と思うこともあったりはするんですけど。

本の世界にもありますよね。
Toppointなんかは昔からあると思うんですが、良い本を紹介してくれるブロガーも多い。

でも私は、そう言うサービスを遠ざけてきた、情報弱者の一人です。
おかげで世間の常識を知らなかったりするので、流行の世界で言えばラガードだったりします。

でも、去年本を出したせいで、最近少しそういうサービスとか世間の流れを知ることになってしまいました。
前にもちょっとブログで書きましたけれど、おかげで書店であまり楽しめなくなった。
もう少しさらに出版業界のことを勉強したら、また楽しめるようになると思うのですが、今はあまり楽しくない状態です。
例えば今は書店に本が並んでいると、まず売れてる棚を見るようになってしまいました。
以前は違って、書店を宝島のように考えながら歩いていました。
でも、今は、とりあえず何が売れてるのかな、と見てしまう。
これってつまらないことだと思うのです。

そういえば新聞は一週間まとめて読むべきだ、とおっしゃる識者の方もいらっしゃいました。

要は、情報の選別を人に任せる日々は楽しくない、と思うのです。

現代は、一人の人に許容できる情報量以上に情報が流れている、と言う指摘もあります。
ごもっとも。
でも、そんなに情報必要でしょうか。
試しに携帯を一週間なくして、ネットを一週間見れなくなっても、何も困らないですよ。不安なだけで。

本当に欲しい情報があるのなら、やっぱり自分で現場に行くしかないと思います。
それが本や論文の中にあるのなら、抜粋してくれているものを探すのではなく、原典を探しに行く。
それが体験で手に入るのなら、体験をしに行く。

効率性はそこには無いかもしれない、と思った人は甘い。
現場には効率性はないかもしれません。必要な情報すべてが手に入らないかもしれない。
でも現場で体験することでしか手に入らないものはとてもとても多いです。
そしてレバレッジがあります。

今から15年ほど前、アーサーアンダーセンという会社にいた頃、アンダーセンなのになぜかとあるダークな(ブラックっぽかったけれどあまりブラックではなかった)会社のコンサルティング案件でプロジェクトマネジャーになりました。
二人の部下をつれてのこのこと顔を出すと、強面の方々が複数いらっしゃいます。
社長はとてもおだやかに案件の内容についての打ち合わせに応えてくれます。
でも四天王(冗談ではなく)と言われる幹部の方々は誰もいい顔をしません。
「自分たちは、頭悪いですから」
「中学しか出てませんし」
「現場しか知らないんで」
「もう店帰っていいですか」

その業態を利用したこともない、のんびりとした私はつい提案しました。
「店に立たせてもらってもいいですか」
「いいですよ。何なら今からでも」
ちょうど部下の二人も嫌がらなかったので、じゃあ店がオープンする時間から、と約束しました。
店のオープンは18時。
スーツ姿なことはちょうどいいので、それから店での基本的なマナーを教えてもらいました。
そしてそれからドミナント出店地域に行きました。
駅まで迎えに出てくれたのは、片足をひきずったプロレスラーのような体格のかなり怖いタイプの方でした。そしてエリア責任者のいる店舗にまで案内してくれます。
エリア責任者は私たちと目もあわせません。
ただ、「社長の指示なんで。でも邪魔しないで下さい」とだけ言います。

それから明け方まで、部下二人と三人で手分けして、エリアの各店の入り口で、「いらっしゃいませ」を言い続けました。
各店に一人づつ立ち、一時間交代で店を代わるようにしました。
時間帯でお客さんも違うし、店によってももちろん雰囲気は違います。
そうしてお客さんに対する、従業員の態度を観察してゆきます。
アルバイトとして働いている女性たちの行動も観察してゆきます。

その会社はキャバクラチェーンでした。

明け方に帰る時に、エリアの責任者に挨拶に行きました。
「まだいたんすか」
それだけ言われてやっぱりこちらを向いてもくれません。

それから半年くらいのプロジェクトが過ぎ、無事に報告会を終えて、社長に「ちょっと」と呼ばれました。そして社長室で二人きりになりました。
やさしい社長ですが、実は強面なことはわかっています。
なんか報告内容がまずかったかな、とびくびくしていると言われました。
「うちの顧問になりませんか」
「は?」
「都度相談に乗ってくれればいいです」
「……アンダーセンのパートナーじゃなくて私ですか?」
「はい」
「あの、なぜでしょう。パートナー達のほうがお役に立つと思いますよ」
「いえ、平康さんで」
「はあ……あの、でもなんで」
社長がすごむように微笑みながら言いました。
「今まで、公認会計士とか税理士とか社労士とかコンサルタントとか、大勢の人がうちの仕事をするときに現場を知りたい、と言いました」
「現場を知ることは大事ですよね」
「でもみんな、客として店に行きました。平康さんだけ、従業員側で店に立つと言ったんです。そして本当に店に立ったのは、平康さんたちだけです」
「……」
「このプロジェクトの間、幹部連中がちゃんということ聞いたでしょう。普通は聞きません。そういうことです」

まあ、そんな経験があるので、どうしても泥臭い仕事の方がいい、と思ってしまいます。
小利口にまとめてくれている情報を読んでも、そんな関係は手に入らないと思うのです。
汗をかかないと手に入らないものがあって、それにはそれ以上の価値があると思うのです。

めんどくさいほうがいいです。何事も。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)