業務を明確化した先に企業の成長がある
2013年5月13日発売のプレイボーイに掲載された
「クビ切り自由化で労働市場全体がダメになる」
と言う記事の一部で、こんな内容のコメントをしました。
「成功する転職を増やすためには、ヒトを雇う企業側が、従業員に任せる『業務の明確化』をしなければいけない。そうでなければ、採用基準は人柄などの『使い勝手の良さ』だけになり、有能な人が活かされない」
そして昨日、2013年5月20日発売の日経ビジネスを読んでいて、似たような主旨のコメントを見つけました。
コマツ相談役 坂根正弘さんへのインタビューです。
日経ビジネスの39pにありますが、要約すると『それぞれの企業、官公庁で業務の標準化が進んでいないことが労働市場を不活性にしている』というものです。
つまり、ある企業で培った経験が、他の企業では活かせない、ということです。
まさにおっしゃる通りだと思います。
(余談ですが坂根正弘さんは大阪市立大学の先輩にもあたります。以前、30人程度の小さな同窓会にわざわざお越しいただき、貴重なお話を伺うことができました)
さて、この業務の明確化と標準化ですが、似ているようで、実は別のステップのことを言っています。
図示してみましょう。
会社と言う組織では、絶対やらなければいけない仕事と、そうでもない仕事があります。
起業から間もない頃、あるいは会社がある程度大きくなってからも、やらなくていい仕事がほっておかれることがあります。
それはたとえば「今儲かっているから新規営業はしなくてもいいや」というものであったり、「今の商品が十分に売れているから、新しい商品は開発しなくてもいいや」というものだったりします。
またその状態では、業務は人に貼りついています。
「属人的業務」と言ったりもしますが、場合によってはあえて人が業務を抱え込んで隠していることもあります。
業務を明確化することで、「今はやっていないけれど、やったほうが良い業務」や、「〇〇さんが抱え込んでしまっているけれど、実は他の人がやったほうが良い結果になる仕事」とかが洗い出されます。
そして明確になった業務は、そのために必要なスキルや経験もあらわにします。
業務を明確にすることによるメリットは多々ありますが、一番大きなものは「特定の人と特定の仕事とを切り離す」というものです。
その結果、「効率性」や「品質」が高まりやすくなります。
これがさらに標準化されると、「効率性」や「品質」はさらに高まります。
また、スキルや経験が個人と組織それぞれに蓄積されやすくなります。
個人に蓄積されたスキルや経験は、そのままその人の市場価値を高めます。
より良い条件の会社に転職しやすくもなります。
しかし一方で、標準化が可能な業務領域は一般的に「定常業務」に限られていると言われます。
だから私のコメントでは「業務の明確化」に留めていますが、それによって個人にスキルや経験が蓄積されやすくなるということに変わりはありません。
(もちろん会社にとっては効率性や品質の向上と言うメリットがあります。)
企業間をまたぐような業務標準化のためには、法令などに基づく基準制定が必要になります。
しかしそうでなくとも、一企業内での標準化は可能です。
このような取り組みは、大企業がシェアドサービス化を検討する際に用いる方法です。
しかし中小企業や中堅企業でも同様の取り組みを行うことで、効率性や品質の向上と言うメリットを享受できるようになります。
中小企業では、業務を明確化した後でも個人に業務が貼りつく場合があります。
それでもなお、その人がいつまでも会社にいてくれるわけではないことを踏まえた活動は有効なのです。
セレクションアンドバリエーション株式会社
平康慶浩(ひらやすよしひろ)