従業員年収を維持するために必要な売上高をパナソニックについて計算してみた
まだ2000年になる直前、今から20年近く前ですが、東京の某電機メーカーの評価報酬制度を改定していました。
その時、組合掲示板に張り出されていた、組合側から提示された「標準生計費」額を見てびっくりした覚えがあります。
そういやそのデータはどっかにあるのかな、と考えてネットを検索するとすぐにヒットしました。
電機連合第49回定期大会資料、というものです。私が見た時のものよりも少し新しいとは思うのですが、内容は大きく変わっていないようなのでこれをもとにいじってみます。
非消費支出(所得税とか社会保険料)の割合を17.8%かけてみて、必要年収を割り出してみました。
それがこちらです。
この数字が提示されてから20年近く過ぎた今、もちろん電機連合側でこういった要求はもうしていないようです。
むしろ最低賃金を守らせよう、という活動の方が活発のようで、隔世の感がありますね。
このグラフですが、いろいろと考えさせられます。
例えば
◆ 2000年前後の初婚年齢は男性で29歳、女性で27歳強だったけれど、今は+2才ほど遅い
◆ そもそも未婚者の割合が増えている
◆ 結婚すると平均1年くらいで最初の子どもを産む割合は変わらない
(初婚年齢や両親の学歴によって差は大きいけれど)
◆ でも学歴別での出産割合の差は広がっている
というような世帯人数についての「あたりまえ」の変化とか。
電機連合のこのグラフでは、世帯主が50歳で子ども二人が私立大学に通っていることになっています。そりゃ奨学金もらわない前提なら、1000万円くらい必要になりますよね。
このグラフで示している年収の増減傾向は、わかりやすくいえば、生活に必要な年収を会社に期待するというものです。
だから子供が独立するまでは、必要年収は増え続けます。そして独立後は下がりますが、「ゆとりある豊かな生活」のためには720万円くらいは必要だ、という発想です。
ざくっと平均を出すと、このグラフの企業が実在するとすれば平均年収は779万円です。
電気機械製造業の平成23年度付加価値率は21.6%。労働分配率は57.1%です。
(経済産業省企業活動基本調査による)
逆算すると、従業員ひとりあたり6300万円くらいの売上を確保できて初めてこのグラフが実現する可能性が出てきます。
公表ベースでのパナソニックの平均年収が790万円。
従業員数がおよそ30万人(連結ベース)います。
これに6300万円を掛け合わせると、必要な売上は18兆9千億円。
一方、2013年3月期の連結売上は7兆9千億円です。
付加価値率と労働分配率が上記の数字だとすれば、パナソニックが企業として利益を残すためには年収平均を約325万円に下げないといけなくなります。
売上を今の2.5倍にできれば何も問題はなくなるのですが。
それが非現実的だとすれば、どこを改善すればいいのでしょう。
ビジネスモデルの改革とは、その問いに対する答えを出すことだと考えています。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)