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あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

昇進のルール

キャリアパス、とは長い間、「出世の階段」と同じ意味でした。
過去形で書いているのはもちろん今はそれ以外の選択肢があるためなんですが、今回はまず「出世の階段」としてのキャリアパスにおいてどのように行動することがトクなのかを、人事制度の面から書いてみます。
人事制度の面からのキャリアパスですが、実はこれも大きく分けて二種類になっています。
まず今回は、多くの日本企業の場合を書いてみます。

■昇進の基本ルール
 人事制度がしっかりしている会社の場合、昇進は過去のさまざまな個人情報をもとに決定します。
 昇進に関係する個人情報はいくつかありますが、代表的なものは「評価結果」です。
 毎年行われている能力評価や業績評価の結果をもとにして判断に使うのですが、パターンは三つほどです。
・ポイント型:A評価で5点、B評価で3点、のように毎年のポイントを蓄積する方法
・平均型:評価点数の平均点を算出する方法
・履歴型:過去数年間の評価を並べて比べる方法(BCBBA、というように確認)
 それ以外の個人情報としては、資格があります。昇進する先の役職によっては必須の資格があったりします。たとえば建設業の管理職になるのに技術士資格を必須としている会社もあります。
 また社内テストを実施して、そのテストに合格している人に昇進チャンスを与える場合もあります。
 意外と知られていないのが在級年数です。
 在級年数とは、今の役職(等級といわれることが多いのですが)になってから何年がすぎたかをあらわすものです。
 たとえば係長になってから、在級年数が5年にならないとそもそも課長に昇進させる候補にしない、という会社が一般的です。
 これらの昇進基本ルールは、人事部門で表形式で管理していることも多いようです。透明性の高い会社であれば、頼めば見せてくれることでしょう。

 ここまで書いてきた昇進の仕組みを、人事用語では「卒業基準」といいます。
 卒業基準の卒業とは、学校の卒業と同じような意味です。高校のカリキュラムをちゃんと理解して、出席日数と単位が取れていれば卒業できるというものと同じなわけです。
 卒業があるということは入学もあるわけで、人事用語では「入学基準」というものもあります。
 大学には試験で合格した人だけが入学できるわけですが、会社での昇進にも同じような場合があります。
 入学基準が一番使われるのは、管理職への昇進判断の場合です。
 入学基準で審査される前には、もちろん卒業をしていなくてはいけません。でも卒業しているからといって、必ず入学できるわけではありません。
 入学基準で使う一般的な審査基準は3つあります。
 一番よく使うのが「面談」です。管理職の中でも部長以上や、あるいは役員クラスとの面談をして、そこでいろいろな質問をされます。この質問に対する回答を評価して審査に使用します。
 「論文」もよく使われる方法です。「弊社の現状の課題認識を踏まえて、これからの3年間で行うべき改革を論じなさい」というようなテーマが与えられ、期日までに提出した論文内容に基づき審査が行われます。
 「テスト」が使われることもあります。テストをそれぞれの会社でつくるのは難しいので、公開されているさまざまな機関の昇進テストを受験することを義務付け、その点数で審査が行われます。新卒入社時のSPIのようなものだと考えていただければ結構です。


■評価の現場を踏まえた実態
 では卒業基準、入学基準は、実態としてどのように運用されているのでしょう。
 実はこれらの基準の中で、人の判断だけで決定しているものがいくつかあります。
 それは、「評価結果」「面談」「論文」の3種類です。これらについては、審査において人の判断が関係しています。
 人の判断が関係すると、これらの審査はどう変わるのでしょうか。
 実は、人の判断による変化で一番重要な要素は、だれが審査をするか、ということです。
 「評価結果」を審査するのはその時々の上司です。
 上司が部下の能力や目標の達成度合いを評価して、最終的な評価点数を決定します。
 上司の評価結果をさらにその上司がチェックしたり人事部門で調整する場合もありますが、直接の上司が下した評価から大きくぶれることはありません。
 そして上司も人間ですから、感情があります。デジタルな評価ではなく、あくまでも感情を交えた評価が行われていくことは想像できると思います。
 「面談」を行うのは、管理職の中でも有力な人たちか役員達。つまり経営層かそれに近い人たちです。
 では面談では何が重視されるのでしょうか。
 スキル?経験?
 実は面談でもっとも重視されるのは、「経営層の仲間になれるかどうか」というとても感覚的な判断です。
 最後に「論文」ですが、これは参考程度にしか扱われません。良い論文を書いたから昇進される、ということはなく、むしろ「まともな論文も書けないのなら管理職は無理だ」という判断に使われたりします。

■なにをすれば人よりも早く昇進できるのか
 社内での出世とは、昇進することです。昇進することで給与も権限も増えてゆきます。
 では、出世を早める方法はあるのでしょうか。
 昇進の基本ルールと実態を踏まえて、組織の一員として早く昇進するための方法を考えてみましょう。
 
 ここまでに示した「多くの日本企業」タイプでは、最低年限(最低在級年数)をとびこえて出世することはほぼ不可能です。
 だから人よりも早い昇進とは、最低年限で昇進することです。
 最低年限での出世人数は、同期の中でおよそ5%から30%です。20人に1人、から、3人に1人と考えてください。
 この人数は会社の状況にもよりますが、近年遅くなる傾向が強いようです。それは高齢層人数が膨らんでいることも関係していますが、逆に、横並びで昇進させようという傾向が減っているということもあります。かつては「C評価」や「不可」がなければ昇進させていた会社でも「A評価」や「良」がなければ昇進させなくなっているのです。

 となると、人より早い出世のためには、周りの同期3人~20人の中で1番になる必要があります。
 1番はとても難しい?
 いえ、そうでもありません。学校のテストと違い、会社の昇進判断での順位はとてもゆるやかなものです。
 100点と99点の競争ではなく、リンゴとみかんのどちらがおいしい?という競争です。
 だから、もしあなたがリンゴであれば、リンゴのおいしさをアピールできればよいわけです。その結果、みかんよりもリンゴに投票してくれる人を増やせばいいわけです。
 リンゴの味は、リンゴを食べてみないとわかりません。
 だから、リンゴであるあなたは、あなたの味を知る人を増やす。それが一番になる方法です。
 食べたことのある果物の中で、一番おいしいものになることを目指す。
 このとき、食べたことはないんだけれども、とってもおいしいという評判の「桃」があったとします。でも、食べていないものをおいしいという人はいません。わずかな人だけが味を知っている桃になるよりも、多くの人がおいしいと言ってくれるリンゴになることが必要なのです。

平康慶浩
(ひらやすよしひろ)