あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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昇進のルール(2)

前回の記事はこちらです。

昇進のルール - あしたの人事の話をしよう

 (2013年7月12日)
今回はその続き、新しい昇進のルールの中での生き方を書きます。

■グローバル展開企業では昇進ルールが変わりつつある
 ここまで説明したような会社に対して、新しい基準で昇進判断を行っている会社があります。
 素直に考えるとそれは外資系だ、と思うかもしれません。
 でも実は、多くの外資系企業でも、上記のような「たべたことのあるリンゴ」を「おいしいと評判の桃」よりも先に昇進させたりします。
 外資系企業では、管理職であるマネジャークラスに人事権を与えている割合が、日本企業よりも多いのです。
 その結果、マネジャーは日本企業の上司以上に、権限を使いこなす割合が増えます。それは時としてこんな言葉で示されたりします。
 「上にあがりたければ俺の言うことを聞け」
 良くも悪くも、外資系の上司はBoss(支配者)なんですね。
 ちなみに日本系の上司は、わりとBully(ガキ大将、いじめっこ)になることが多いようです。
 
 さて、外資系でないとすれば、昇進の新しい基準とはどういう企業で使われているのでしょう。
 それはグローバル展開をしている企業に多いのです。グローバル展開となると大企業がメインですが、中堅・中小企業であってもグローバル展開を進めている企業では、自然とこちらのタイプになっていきます。
 
■新しい昇進のルール
 新しい昇進のルールとはどんなものでしょう。
 前回の記事では、「わずかな人だけが味を知っている桃になるよりも、多くの人がおいしいと言ってくれるリンゴ」になろう、と書きました。
 昇進判断の基礎に「人=上司の判断」が入る要素が大半であるため、多くの人に知ってもらうことが大事だ、ということです。
 
 しかし新しい昇進のルールでは、少し様子が変わってきます。
 
 たとえばマーケティング畑でこつこつと成長してきた人材がいるとします。
 大学でマーケティングを学び、数年は営業に配属されていたものの、やがてマーケティングに配属されました。
 そこでルーチン業務を覚えつつ、30歳を前にして、特別プロジェクトにもお声がかかるようになってきました。
 そろそろ係長、あるいは課長代理のポストが見えてきたかな、と思っていたら、突然社外からの中途採用で、課長代理がやってきました。
 次期マーケティング課長候補であることは、誰の目からみても明らかです。
 この時点で、彼にとって、マーケティング部門での早い出世はなくなったも同然です。
 
 一体何が悪かったのでしょう?
 
 新しい昇進のルールでは、過去の実績だけでは昇進できなくなるのです。
 前回記事の昇進基準で、卒業基準と入学基準、というものを示しました。
 ある仕事ができるようになってから、次の入学判断がされる、というものです。
 
 実は「桃になるよりリンゴになろう」ということは、この入学基準が「入学」基準として明確になっていないことを示しています。
 入学させるための基準として多くの人に知られよう、ということは、それはやはり「卒業」に近い基準が運用されているということです。
 それはつまり、過去の実績を積んでいれば、出世が早くなる、ということでもあります。
 それが今までの(今のある多くの)会社での昇進です。
 
 しかし新しい昇進のルールでは、過去の実績はあまり関係しなくなります。
 言い換えます。
 社内での過去の実績は、あまり関係しなくなるのです。
 それよりも、社外で通用する実績が大事になってきます。
 
 社内での実績と社外での実績の一番の違いはなんでしょう。
 それはルーチン業務です。
 ルーチン業務でいくら実績を積んでも、新しい昇進のルールの世界では認められなくなるのです。
 
■ルーチン業務から抜け出そう
 ルーチン業務というものは、一定のサイクルで必ず発生する業務です。日本の多くの企業では、これらの業務に携わる期間を下積みとしてとらえてきました。そして下積みの中で確かな結果を出した人材を昇進させてきました。
 しかし多くの企業では、ルーチン業務はそのための人材を採用したり、あるいは社外にアウトソーシングするようになっています。
 ルーチン業務は下積みではなく、もはや独立した専門の仕事になりつつあります。
 
 ではどのような仕事を目指せばよいのか。
 それは仕事を「機能」としてとらえる見方から「プロジェクト」としてとらえる見方への転換に基づき、「プロジェクト」を担当することです。
 プロジェクトと言っても、●●プロジェクトと名がついたものだけではありません。
 ルーチン業務であっても、プロジェクトに切り替えたとらえ方が可能です。
 
 たとえば、業界シェアを分析するための資料収集を命じられたとします。
 これだけでは、毎年の事業計画を策定するためのルーチン業務でしかありません。
 しかし、そもそもなぜ業界シェアを分析するのか、という理由を考えてみます。
 そうすれば、この分析に基づき、現在の各事業の戦略判断の基礎資料になる、ということがわかります。
 これをプロジェクトとしてとらえるのならば、事業計画策定、ととらえなおすことができます。
 
 ちょっとずるいかもしれませんが、このとらえ方だけで実績の質が変わります。
 「私は業界シェア分析を経験したことがあります」
 と言うのか
 「私は、事業計画策定の一環としての業界シェア分析を担当しました」
 と言うのか。
 たったこれだけの違いで、聞く側の受ける印象は全く変わってきます。
 
 そしてやがて彼には、「じゃあ事業計画策定のこの部分をやってみてくれないか」という仕事が回ってきます。
 しかし「分析の経験」だけだと「今度はこの分析をしてみて」という仕事が回ってきます。
 
 それらは積もり積もって、経験の違いになります。
 分析の経験は社内だけで通用する経験になり、事業計画策定は社外でも通用する経験になります。
 
 仕事を機能としてとらえる考え方から、プロジェクトとしてとらえる考え方に変えること。
 そのことを常に意識して発言し行動すること。
 それが新しい昇進のルールの中で生きる方法になります。
 
 それは「任せられるか」どうかということの基準でもあるのです。


続きはまた書きます。


平康慶浩
(ひらやすよしひろ)