あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

人事の仕組みと「半沢直樹」

平康慶浩(ひらやすよしひろ)です。
「旧い人事の仕組み」を壊して、「新しい人事の仕組み」を作る仕事をしています

最近「半沢直樹」というテレビドラマに夢中です。
バブル世代のバンカーの物語ですね。
一回見た後、もう一度見たりしています。
小木曽次長いいなぁ、とか、ミッチーいいなぁ、とか(2013年7月28日放送分)。
ちなみに小説でオチまで知っていますが、それでも見ています。
脚本家うまいなぁ、と。

このドラマはちょうどバブルの絶頂期と崩壊の現場を見てきた、40代の世代に受けるのだろうと思います。知り合いの50代の方は、何がいいのかわからん、ともおっしゃってましたし。

バンカーという定義は難しく、正直、銀行に勤務している人たちが自分たちを「俺たちバンカーだから」と自賛するための用語として使われることがほとんどのような気がしています。
あと、頭取を退任した人に対して、「あの人は最後のバンカーだった」とかほめる際にも使われますね。どれだけ「最後の」バンカーがいるんだろう、とふきだしそうにもなりますが。

半沢直樹」で描かれるような、いったん財務が悪化した後に再建しようとする企業に融資をするような銀行は、私の知る限りほとんどありません。一応都銀系の総合研究所で8年ほど勤務していましたので、多少は内部事情はわかっているつもりです。
正確に言えば、そんな稟議を通す融資部門もなければ、そんな稟議を通そうとする銀行営業もいない。本当に通そうとする銀行営業がいれば、それはまさにバンカーと言える人でしょう。
企業目利き、とも言えますよね。
でも、「銀行」の「人事の仕組み」は企業目利きを生み出すものになっていません。
むしろ、「商品先物取引の会社」の「人事の仕組み」にかなり近い。まあ、そのあたりはあまりオープンにするとまずいので書けません。

また、融資を受ける企業側にも問題はあって、私の知る多くの経営者の中には、「銀行を騙して融資を受けたい」という人も少なからずいます。
企業目利きになるためのハードルは、とてもとても高いのです。

融資の世界には、光もあり、影もある。
だからこそ、「半沢直樹」は光と影を描く、ありえない物語だからこそ、面白いわけです。

ふりかえって人事コンサルタントの世界を想います。

さまざまな「新しい人事の仕組み」をつくります。
「旧い人事の仕組み」を壊して。
そうして、これからの若い世代や、活躍する人たち、不遇をかこっていた優秀な人たちや、伸び盛りの人たちに脚光を浴びせます。
最近だと、結婚したから会社をやめざるを得なかった優秀な女性、出産で育児休暇をとったためにキャリアから外れた女性、介護で一旦退職を選ばざるを得なかった男性、などに対して、再び活躍していただくための仕組みをつくり、適用したりもします。
そうして、企業の業績を高めます。
そうして、そうして、株主や取引先や、多くの関係者を幸せにします。
それは「光」の部分です。


でも、何事にも「影」があります。


光が強いほど、影は濃いものになります。


私たち人事コンサルタントは、光を語りつつ、影にも目を向けます。
そうして、光に対する影をなるべく薄めようとも努力します。
でも、消せない影もあります。
私は、そんな影から目を背けることができず、いつも煩悶を繰り返します。

なのにクライアントの前ではきつい口調で、光こそすべてだと論じます。
反論をすべて論破します。
そうすることが、最終的に、より多くの人を幸せにすると確信しているからです。

でも、影においやられた人たちは不幸になるかもしれない。

努力しない人。
成長できない人。
変わることができない人。
でも彼らにも家族がいて、子供がいて、生活がある。

彼らが悪ではないことはわかっています。
ただ、「能力が足りないだけ」です。あるいは「生き方が下手なだけ」かもしれません。
でも、企業の成長に不要だとなれば、厳しい処分も言い渡さざるを得ない。


ブログや書籍や雑誌取材などで、「新しい人事の仕組み」での生き延び方を書くのは、煩悶から逃げるためなのかもしれません。

せめて、厳しい処分を受けた後でも、もう一度浮かび上がってほしい、と思うからかもしれません。

そのための知恵や手段や方法は提供したい。

影に追いやられても、光に戻ることはできます。



平康慶浩
(ひらやすよしひろ)