みんな知っておいた方がいいんじゃないかな、って思うキャリアの現在
平康慶浩です。
今日の話は、(自薦他薦問わず)優秀な人材が、起業とかせずにサラリーマンの状態で、たくさんのお金を稼ぐためのキャリアの考え方です。
実は今、サラリーマンにとって収入の考え方が変わっています。
でもきっと、ほとんどの人は知らないと思うので、ステップを踏んで書いてみます。
まずは誰でも知ってるような話から。
■ 新卒くんが考える「稼ぎ」
新卒で会社に入りたての人、あるいは今就職を考えている人は、この図のように自分の稼ぎを理解していることでしょう。
要は「月給」が稼ぎだと考えている。
もちろん賞与も気にしたいところですが、最近の会社は「賞与は変動します」とか言って実額がわかりづらい。昨年実績賞与4か月、とか言われても、来年もそれだけもらえるかはわかりませんしね。
ということで、生活に直結している月給を気にするのがこのステップです。
■ 入社数年目の人が考える「稼ぎ」
入社して数年すると、会社のいろいろなことがわかってきます。
新卒ではわからなかった賞与についてもわかってきます。
でも、もっとわかってくるのが「残業代」です。
だから賞与と残業代を足して、自分の「稼ぎ」だと考え始めます。
毎年上司の顔を伺って高い評価をもらわなくても、数時間も残業をすれば、それくらいの昇給格差はすぐに埋めることができます。
というか、このあたりのサラリーマンは「残業代は俺たちの権利だ!」とかなんとか考えてしまいます。長時間ハードワークの方ならともかく、多くのサラリーマンの実際ってのは「ちょっとカードの支払いきついから、今月残業しとくか」みたいなもんです。
残業代の天井がある、って言われたら、逆に言えばそこまで残業代つけなきゃ損、みたいに思ってるでしょ?先月は天井以上に残業したから、その分を今月にまわすのは当たり前だ、とかなんとか自分に言い訳して。
大丈夫。私もそう考えていた時期がありました。
■ ベテランが考える「稼ぎ」
サラリーマンを15年くらい続けると、さまざまなことがわかってきます。
例えば、社会保険料きついなぁ、とか、今やめると退職金どれくらいだろう、とか。
そんなことを考えて調べていくと、意外と会社が自分のためにお金を払っていることがわかってきます。
また、管理職になっていると「業績賞与」なんてものが支払われたりすることもあります。
会社が儲かったから、偉い順に儲かったお金をわけてあげます、っていう仕組みです。
それら全部をひっくるめて自分の「稼ぎ」だと考えるようになります。
■ グローバルな人が考える「稼ぎ」
ここまで、段階を追って「稼ぎ」について説明しました。
経営とか人事とかに詳しい人だと「そうだよ、そうだよ、そんなもんだよ」とうなずいてくれることでしょう。
だからサラリーマンは「月給の増やし方」と「賞与の増やし方」とか「残業申請のテクニック」とか覚えた方がいいんだよ、とおっしゃっていただけるかもしれません。
私が昨年末に出した本「うっかり一生年収300万円の会社にはいってしまった君へ」もそういう内容ですしね(残業申請のテクニックは書いていませんが)。
でも、実はこの先があります。
私の本にも書きましたが、日本国内限定だと大体ここまでの3段階です。
でも、グローバルに活躍する人になると、「稼ぎ」の中身がずいぶん変わってくるのです。
それはこんな図になります。
- 一見すると、これまでの3段階の「稼ぎ」に、新たな「稼ぎ」の要素を足したように見えるかもしれません。
ポイントは5つです。
①月給と賞与がなくなって年俸に変わる
②福利厚生の意味が変わる
③業績賞与の金額が変わる
④「転職しない」ことについてのお金が出るようになる
⑤長期間での業績に応じた報酬が当たり前になる
実は最初の①②についてすら、国内限定の「稼ぎ」の仕組みとはまったく意味が異なってくるのです。
説明してみましょう。
■ そもそも支払う意味が違う
①月給と賞与がなくなって年俸に変わる
日本企業で働く多くの人は、年俸って月給+賞与のことでしょ?と考えます。
構成としてはたしかにそうなんですが、実は意味が全然違います。
月給制の場合、雇用契約で確定しているのは月給のみです。
しかし年俸になったとき、月給+賞与が雇用契約で確定します。
ちなみにいえば、残業代とか各種手当も年俸は含みます。
それは計算を簡単にするためとかではありません。
もっとも大きな違いは、日本の雇用契約が「労働時間に対しての契約」であるのに対し、グローバルで使われている(年俸制になる)雇用契約は「期待に対する契約」だということです。
だから労働時間に関わらず、出すべき成果について合意し、そのための金額を定めます。
もちろん組織で働くので、出退勤の時間の定めが生じる場合があります。でも遅刻や早退をしたからといって給与を減額するような仕組みは、年俸制にはありません。
②福利厚生の意味が変わる
日本で生まれ育って、日本に存在する会社(外資系であったとしても)に勤めると、福利厚生とは法律で決まった社会保険に加えて、大企業とかならある(かもしれない)保養施設などの契約、と思ってしまいます。
しかし、本来の福利厚生は、その地域で安全で健康的に生活するための、企業によるサポートをあらわします。それがたまたま、日本が皆保険制度の国だから社会保険になっていたり、警察が信頼できるからそのための対策をする必要がなかったり、昔は土地神話があって不動産を買うことが財産形成にもなっていたから家賃補助はあっても住宅補助はなかったり、とかします。
さて、もしあなたが深夜であってもアメリカとテレビ会議をすることが当たり前だったり、会社二呼ばれたら30分以内に駆けつけなければいけない重要なポジションにいるとします。
その場合の福利厚生とはなんでしょう?
安全で健康的に暮らすためには、まず通勤に負荷がかかってはいけません。30分以内で駆けつけるニーズも考えると、会社から近い距離に家がなければいけない。それはもちろん会社負担で用意されます。
深夜だと公共交通がない時間帯もあります。だとすれば少なくともタクシーが認められるか、場合によっては専属の運転手が必要になるかもしれません。
昼夜逆転の生活が続いて、でも勤務時間が通常の日本時間にあわせてだと、時差ぼけのような状態になるかもしれません。勤務時間の自由度も必要だし、フィットネスジムなどでリフレッシュすることももちろん必要になるでしょう。また、過剰労働は健康を損ねます。せいぜい10時間以内で、それも特に用事がないときにはもっと短い時間での勤務もできるような権利が必要です。
これが、あるべき福利厚生です。
無茶だ、と思うでしょう。
でも、その無茶を用意される人たちが、確実に増えているのです。
③業績賞与の金額が変わる
決算賞与が支給される会社もそこそこあります。また、夏冬賞与を業績連動にすることはもはや一般的です。
多くの日本企業では、ベースとなる賞与の支給水準をあらかじめ決めています。それはたいてい昨年実績などですが、「今年は年間賞与4か月分を基本にする」とか労使交渉で決めたりするわけです。そのあとで、業績が良ければいくら積むか、と考えます。
でも、グローバルに活躍する人で構成されている企業では、業績賞与の意味が異なっている場合があります。
利益が出たあとでそのうちの一定割合を従業員に「追加で」配分する、と考えます。
これ、似ているようで、経営層の考え方が全然違います。
前者はあくまでも生活の足しにするため。だから会社に残す金額を優先します。
後者は分け前。だから、利益に合わせて納得する金額を配ることを優先します。
なんか農耕型と狩猟型の違いのようですね。
■ 「労働市場」がすべての基準に変わる
ここからさらに、大きな違いを説明します。
④「転職しない」ことについてのお金が出るようになる
以前、韓国のサムスンが日本の優秀な技術者をヘッドハントしている。その際の条件が破格だ。金で日本の技術を盗んでいるんだ、とかいう話がありました。いや、最近はもっと加速しているとか。
これ、多くの日本人が知らないだけの、世界の常識なんです。
年収3000万円+毎年の業績賞与+各種福利厚生(もちろん上に書いたような手厚いもの)
それに加えて、3年継続して勤務したら、3年終了時点で+9000万円。つまり3年分の年収相当分を、3年たったら追加で一時金で支払う。
こんな仕組みがアメリカやヨーロッパのグローバル企業では当たり前に導入されています。それをサムスンが取り入れているだけのことです。でも日本企業でこんな仕組みを導入している会社はまずありません。
なぜかといえば、日本国内では終身雇用意識が当たり前だからです。それは一生のうちの転職回数に現れます。平均して1回に満たない。
こんな記事も書きました。
一方で欧米での平均転職回数は10回前後です。
社会人生活が40年間だとすれば、4年に1度は転職する計算です。
だから、やめてほしくない人に、3年から5年ごとに、転職しないでねボーナスを払うわけです。
人事用語では、ロングタームインセンティブプラン(LTIP)とか言います。
⑤長期間での業績に応じた報酬が当たり前になる
グローバル企業の優秀な人には、年収に加えて毎年の業績賞与、3年から5年おきの転職しないでねボーナス(LTIP)が支払われ、さらにそれに追加での報酬も支払われます。
典型的なものがストックオプション。株を安く買って高く売る権利ですね。1円で買う権利を与えることもあるので、株価があがっていればとんでもない金額を得ることも可能です。
こういった「稼ぎ」方をする人たちは、10年間で3回ほど転職していくうちに数億円の資産を蓄えます。そうして、40歳くらいの段階で引退したり、自分の好きなことに打ち込んだりします。
なぜこのように破格の支払いが行われるかと言えば、優秀な人材が限られているからです。
そして、優秀な人材が、転職するからです。
転職会社が作ったキャッチコピーではなく、本当のキャリアアップの転職が当たり前に存在しているからです。
取り換えのできない優秀な人材の価格は、市場原理が働き、どんどん上がっていくことになります。
ちなみに一方で退職金という仕組みはどんどんなくなってゆきます。
引退後のための蓄えは自分でなんとかしなさい、ということですね。
■ どうすれば「本当のキャリアアップ転職」ができるのか
ではどうすれば「本当のキャリアアップ転職」ができるのでしょう。
それは「優秀な人向けの労働市場」に参画する権利を手に入れること、だと言い換えられます。
このテーマだけで一冊の本が書けてしまうくらいになりますが、今回は「優秀な人向けの労働市場」に実際に属している人たちの特徴を2つ、紹介してみます。
「優秀な人向けの労働市場」にいる人の特徴1
専門性がはっきりしている。
「私は○○社でマーチャンダイジングの責任者をしていました」
という人と
「私は○○社で課長として、営業、人事、物流部門を経験しました」
という人のどちらが労働市場で求められるか、ということでもあります。
前者のマーチャンダイジングの責任者には値段がつきますが、後者にはおそらく値段がつかない。それは専門性があやふやだからです。
これには日本企業の中にキャリアパスがないとか、社内転職市場だけであれこれ使いまわされている、とか、そもそも終身雇用だから使えない人材にも仕事をさせなきゃいけないから専門家を育てにくい、とかいろいろ理由があります。
そんな中で自分の専門性を育てるために、やるべきこととやってはいけないことがあります。
やるべきことは、「ルーチン業務」を任されたら、短期間でも誰よりも早く覚えること。
やってはいけないことは、その「ルーチン業務」の固定的な担当者になること。
詳細はそのうち書きます。
「優秀な人向けの労働市場」にいる人の特徴2
責任者として「決める」経験を積んでいる。
たとえ数十万円レベルの話であっても、自分が責任を負って即決したことがあるか。
「決める」経験が積み重なって、労働市場で求められる優秀な人材が育ちます。
「調べてみてから」「比較してから」決めるタイプの人は、この経験が不足しています。
「決める」経験を社内で積むためには、そもそも社内で決裁権がないと難しい。
でも、決裁権がない状態でも「決める」経験を積む方法があります。
第一に、「捨てる」こと。
使わなくなった資料や確度の低い見込み客のリストをどんどん捨てる。
捨てることは決めることとほぼ同じ意味です。どんどん捨てる経験を積めば、身体と頭が「決める」ことに慣れてきます。
第二に、「迷いを見せない」こと。
迷いを見せることは甘えにつながります。甘えがしみつくと、決めることを他人に任せたくなります。もし本当に迷うことがあれば、黙るか、別の話に変えましょう。そうして確保した時間でこっそり迷えばいいのです。
専門性がはっきりしていて、「決める」経験を積んできた人。
一緒に働いてみたいと思いませんか?
平康慶浩(ひらやすよしひろ)