目標をたてるということ
先日、顧問先のとある会社で、毎月恒例の役員会に出席しました。
私の立場は経営顧問です。
その場で、とある役員が提出した、担当する事業の2年後までの目標数値について、私からつっこみました。
「去年の売上はいくらでしたっけ」
「12億です」
「今年の着地見込みは?」
「18億いけそうです」
「で、2年後はこの数値ですか?」
「はい。25億はいけると思います」
自信たっぷりにおっしゃる役員さん。
でも、過去数年間のお付き合いを踏まえた違和感があったので、少し考え込みました。
それから、答えました。
「これ、40億円にしましょう」
「は?!」
「だから、2年後の年間売り上げを40億円にしてください」
「……今年18億ですよ?」
「ええ。40億円で。無理ですか?」
「絶対! 無理です!」
しばらくだまってその役員さんをみつめました。
それから言いました。
「○○さんの出す数値は、ここ数年、いつも固い数値ばかりですよね。だから毎年、必ず達成しています。違いますか?」
「当然です。目標っていうのはコミットメントでしょう。守れない数値を目標にする気はありません」
「目標数値に対して、実績が下振れしたら未達成として叱責されます。でも、本来は上振れしてもだめなんです。」
「目標以上に達成して、なぜだめなんですか?!」
「あなたが出した目標値は、あなたが考える予測値です。でも、過去にそこにさらに積みあがって目標を上回った数値が、なぜできたかを考えてみてください」
「新規顧客ですね。太い客を毎年つくれています」
「あなたはそれを予測していましたか?」
「できるわけないですね」
「誰がその客をつくりましたか?」
「私がつくったときもありますが、部下がそういう話をききつけて、そこからつながった話も複数あります」
「では、そういう話を増やせれば、目標は高められますね」
「だからそれは無理、というか無茶です。目標にそんな数値を出すわけにはいきません」
「でも40億にしてください」
嘆息する役員。
私は話をつづけました。
「この会議が終わった後、事業部で話してください。無茶なコンサルが、2年後の売り上げを15億積めといってきたと」
「言いますよ、そりゃ」
「その場で、『この無茶を達成して、コンサルを見返したくないか?』と言ってください」
「……」
「『これまで目標を上回ってきたのはお前らのおかげだ。この無茶をどう見返すかも、おまえらに知恵を借りたい』と言ってください。それから、どんな顧客を増やすか、ビジネスをどういう風に横展開するか、自由に話し合ってください。そうすれば、○○さんと○○さんの事業部なら、必ず40億いけます」
「……」
「それに見合ったインセンティブは、私が社長に掛け合って仕組みにしますから」
「……やってみます」
結果はもちろん2年後にしかわかりません。
でも、40億円、絶対達成できると確信しています。
目標とは、確実に達成すべきものではなく、少し背伸びするものですから。
達成できなくとも、達成のために組織を一丸にしてチャレンジできたのであれば、それが目標の最高の成果です。
もちろん、インセンティブの仕組みも、そう設計します。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)