あしたの人事の話をしよう
ブログのタイトルを変えてみました。
そこで新タイトルにあわせて、いくつか「あしたの人事」、つまり「新しい人事の仕組み」について、軽く語ってみたいと思います。
とりあえず今日は2つだけ。
■ 専門性に専門性を積む
あしたの人事では、複数の専門性を持つことがすばらしい、とたたえることになるでしょう。言い換えると、単体の専門性だけを評価することはなくなっていく、とも言えます。
たとえばサイバーーエージェントの曽山哲人さんという方がいらっしゃいます。
同社の人事本部長ですが、彼の経歴はこのようなものです。
高校時代 ダンス甲子園全国3位
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有名私立英文科卒(専門性:語学?)
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百貨店ECサイト担当(専門性:ネットビジネス?サイト構築?)
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サイバーエージェントインターネット広告営業統括(専門性:ネットビジネス?)
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同社人事本部長(専門性:人事?)
おそらく、転職支援会社のエージェントが、サイバーエージェントのインターネット広告営業統括までのキャリアを見て、曽山さんに他社の人事部門の職種を紹介することはありえないでしょう。
しかしサイバーエージェントではそのような人事異動が行われた。
(これは人事が今後さらにビジネスそのものの根幹と密接にかかわってくる、という傾向とも一致しています。)
そのような専門性の異動によって、曽山さんはサイバーエージェントの拡大そのものに、人事の専門性を持って貢献することになります。
もし人事の専門性しかもたない人間がその職についたとしたら、今の発展はなかったことでしょう。
異なる専門性をバックボーンにした、新たな専門性。
あしたの人事では、そのような成長をほめたたえ、応援することになります。
■ 3年から5年でプロに育てる
マルコム・グラッドウェルさんは、2009年の著書「Outliers」(和名「天才!成功する人々の法則」)の中で、「1万時間ルール(10,000-Hour Rule)」を提示しています。
なるべく短い期間のうちに1万時間を同じ事柄に費やせれば、その道で高い専門性を獲得しやすい、ということを、ビートルズやビル・ゲイツ、モーツァルトといった例をあげて説明しています。
あしたの人事の世界で、この1万時間ルールが活きてきます。
同じ仕事を8時間250日行ったら、ちょうど5年で1万時間です。
仮に一日13.5時間250日間働いたら、ちょうど3年です。
これが従業員を育てる目安の期間に変わってゆきます。
このことは、若手に対する仕事の割り振り方にも大きくかかわってきます。
大手企業になればなるほど、採用されたばかりの若手には、まずルーチンの仕事を覚えてもらいます。あれも、これも、という感じで複数のルーチンを担当しながら数年が経過します。
そしてそれらのルーチンに慣れた頃に次の仕事を割り振られます。
やがて10年ほどが経つと、そのルーチン仕事の係長に昇進します。
それから5年、10年を経て役職を高め、総合的判断を求められるような、上位の仕事を担当するようになります。
これではプロフェッショナルが育たない、ということを1万時間ルールは示しています。
3年から5年で集中的に求めるレベルの仕事を担当させればプロになれるのに、それを10年から20年もかけてしまっています。それは、ゆるい「総合職」を生み出す仕組みなわけです。
あしたの人事では、3年から5年、集中的に仕事を担当させるようになります。
そして、「プロ」になってもらう。
そう変わってゆきます。
ちなみにOutlierとは異端という意味です。
ダイバーシティとは、優れた異端を認める仕組み、なのかもしれません。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)