あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

半分が管理職になれない、って良いことじゃないの?

管理職になれない50代が55%になったそうです。
NHKのニュースにありますね。

管理職ではない中高年増加

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130912/k10014473171000.html


でもよく考えると、この報道、おかしい。

まず第一に、「この20年で8ポイント余り増えている」ということだそうです。
ということは、1993年に47%だった、ってことですよね。

20年前大して変わってないじゃない

と思うのが普通じゃないですか?

でもまあ、マクロデータなんで、8ポイントは大きい、とも言えます。

だとすれば?

第二に、「できない管理職」が多すぎる、ってここ10年くらい、みんな言ってませんでしたっけ?
管理職教育はいつも公開セミナーの人気メニューです。
うちの課長は仕事ができない、という社長なんて、いくらでもいます。

だから、誰でも管理職になれる、って方がおかしくないですか?


NHKのニュースに対して、

「昇進が厳しくなっている」
       ↓
「社員が仕事への意欲を失う」


と答えているコンサルタントもいらっしゃいます。

それは確かにそうかもしれません。

でも、そのことでやる気をなくすのって、厳しくなった基準で昇進できない人、ですよね。
言い換えると、やさしい基準でなら昇進できる人が、昇進していない、わけですよね。

やさしい基準で昇進した人が、部下に対してどんな影響を与えるのか?

例えば、会社をブラックにする理由の大半は、上司の(管理職としての)無能さ、です。

若者が転職する理由の一番は、社内の人間関係です。
それも上司との関係が一番です。
リクナビのアンケートでこんなものもありますね。

退職理由の本音ランキングベスト10
1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった
http://next.rikunabi.com/01/honne2007/honne2007_01.html

できない人が上司にならない現状って、部下にとっては幸せですよね。
なにがまずいんでしょう?


NHKのこの報道は、実は見方を変えた方がいいです。


いろんなところで書きましたが、今、それぞれの仕事に給与の天井ができています。
昇進しないと、給与が根本的には増えません。
だから、管理職になれなければ、給与は一生増えないわけです。
管理職にならないと、給与の天井は、大手企業で500万円前後です。
中小企業なら350万円から450万円くらい。


つまり、管理職になれない人たちの給与が抑えられている。
仕事ぶりにあわせて「正しく」評価されているとすれば、仕事ができない人の給与が抑えられているだけのことです。


だから、

昇進できないからやる気をなくす

のではなくて

将来にわたって給与が増える見込みがなくなるから、やる気をなくす


ということです。

でもその分だけ、若手にチャンスが回ります。


城繁幸さんという有名な方が、2010年に「7割は課長にすらなれません」という本を上梓されました。
当時のこの本のメッセージは、高齢者が大した仕事もできないくせに、課長や部長のポストにいるから若手が昇進できない、という内容でした。

でも団塊の世代が定年退職していった今、ちゃんとした評価が進んでいるように思います。
だから、管理職になれる人の割合が減っている今の方が、若手にはチャンスが与えられます。


それは、やる気のある人や、結果を出している人にとって、明るい未来を示しているのではないでしょうか。



平康慶浩(ひらやすよしひろ)