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あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

労働時間の切り売りから抜け出そう

仕事の合間にヤフーニュースを見たら、弁護士ドットコムのこんな記事が、トップに出ていました。

若者が「ブラック企業」を見抜くポイント

http://www.bengo4.com/topics/853/

書かれている内容は一言でいえば、「法律的な知識を踏まえて会社の本質を見抜こう!」というものでした。まあ、弁護士さんのサイトですしね。

ブラック企業ってかなり便利な使われ方をしているので、必ずしもブラックでない企業もブラックと言われたりしているところが気になったりはします。
もちろん、本当のブラック企業はどんどん改善すべきですよね。
そこに異論はありません。

ブラック企業問題についてはいろいろな視点がありますが、今日は、働く側の意識の視点から書いてみたいと思います。

テーマは
ブラック企業で働かないための方法
です。

ブラック企業だと言われている会社の問題点を整理してみると、いくつかの典型的なものがあがってきます。

○ 残業代が支払われない
○ 毎日長時間労働、あるいは、休日がない
○ 簡単に首を切られる


これ以外にもパワハラなどがブラック企業の条件としてあがることもあります。たった一人の問題管理職がいるだけで、その部下たちはとんでもない目にあったりもします。
でも、ハラスメントは会社の問題というよりは、個人の問題であることが多いです。大半の管理職は問題がない場合には特に。

さて、上記の3つの問題点ですが、これらの本質は、雇われている側が「自分の時間を売って給与を得ている」からだと言い換えられます。
正社員、契約社員などの形態を問わず、すべての労働者について、労働基準法第十五条は以下の要件を満たすことを求めています。

【人を雇うときに会社と労働者が合意すべき要件】
■ いつまで雇うのか
■ 期限があるのならどうやって更新するのか
■ どこでどんな仕事をするのか
■ いつどれだけ働くのか
■ 給与はどうやって支払われるのか
■ 辞めたいときにはどうすればいいのか


この中で特に重要な点は「いつどれだけ働くのか」が要件として求められていることです。
この要件がある以上、「自分の時間を売っている」という見方をせざるを得ません。

会社と個人とか一定の条件を満たすことで、この項目は除外することができるはずなんですが、実態はなかなかそうはなっていません。
例えば、裁量労働、という、働く時間や日付を選べる形態があります。でも裁量労働は、法律と判例とが矛盾している状態になっており、裁量労働だからといって、労働基準法で決まっている時間以上に働いているのなら、その分の残業代を会社が払わなくてはいけません。
管理監督者、という区分にあてはまる場合にも働く時間や日付は自分で選べるはずなんですが、これも運用面ではいろいろと矛盾があります。

だから、サラリーマンである以上、時間と給与とが交換されているわけです。

そしてこの「自分の時間を売って給与を得ている」状態にあることが、ブラック企業で働くことになる最大の理由です。だから、ブラック企業で働く可能性をゼロにしたいのであれば、時間を売っている状態、を解消すればいいわけです。

そのための選択肢にはどういうものがあるのでしょう。
代表的な4つの選択肢をピックアップしてみましょう。

① 業務を委託されるようになる
② お金を生む資産を持つ
③ 起業する
④ 自給自足する


それぞれの選択肢を勧める、有名な本がいろいろありますよね。
興味のある方は、それらの本を探してみてください。
以前私の本の紹介もしていただいていた、ビジネスブックマラソン(http://eliesbook.co.jp/bbm)のバックナンバーとかを読んでいただくと、もれなく見つけることができるでしょう。

さて、サラリーマン以外のこれらの選択肢に共通することが二つあります。
それは、どの選択肢もすべて自己責任だということと、不安定だ、ということです。

企業で働くということは、会社側に様々な責任を持ってもらうことでもあります。売り上げが減っても、倒産しない限り給与は支払われますし、各種社会保障も一定額負担してくれます。
また、日本の労働基準法では解雇に対する制限も(表面上は)きっちりあるので、会社の経営状態が安定しているのなら、従業員の人生設計も安定的に考えることができます。
会社が責任を持って、個人の生活を安定させてくれる状態が、サラリーマンです
その代り、時間の自由はありません。

より本質的に考えるのなら、時間≒給与の状態を抜け出すためには、自分の時間じゃないものをお金に変える方法を手に入れるか、お金で生活する状態を抜け出すことが必要なわけです。
それが上記の4つの選択肢です。

サラリーマンである状態を含めた5つの選択肢は、排他的なものではありません。どれかを選んでいるから、その他を選べない、というものではないのです。

サラリーマンだけれども、土日に別の会社から業務委託を受けている人たちがいます。WEBデザイナーが代表的ですが、それ以外にも「○○コンサルタントを自称しよう!」と勧める本に従うと、これらの選択肢を併用できるようになります。
株をはじめよう!FXをはじめよう!という本に従うのは、お金を生む資産を持つということでもあります。金融資産以外にも不動産がありますが、それ以外にも例えば、小説家になろう、とかいうのも同じくくりに入ります。
週末起業を進める本もありますね。また、田舎暮らしの中での自給自足により、お金が要らない生活を勧める本もあります。

どの選択肢をどのように選んでもよいのですが、サラリーマンは選択肢のひとつでしかない、ということを理解することが最も重要です。
自分の時間と引き替えに受け取る給与、という考え方自体、近代工業社会で生まれたものでしかありません。近代工業社会とは、生産手段を持つ人が持たない人を使って工業製品を生み出す社会のことです。それは決して悪いことではありません。なぜなら生産手段を持たない人も、給与(賃金という方が固い言い方としてはしっくりきますが)という形で富を得られるからです。
近代工業社会以前には、多くの人々にとってはもっと厳しい状況がありました。時間だけではなく、極端な場合には人格を含めたすべての人権の対価として、かろうじて生活できるだけの状態を得られただけ、という期間も長かったわけです(むしろ人類の歴史的にはそちらの方が長い)。

だから時間≒給与、というのは、「人権は尊重するけど時間だけは貸してね。その分お金をあげるから」、というロジックに基づいて生まれた考え方なわけです。

しかし企業側がコスト意識を高めることにより、時間を売って得られる給与だけでは生活が難しくなっています。その傾向は今後さらに高まるでしょう
(昨年上梓した私の「うっかり一生年収300万円の会社に入ってしまった君へ」と言う本は、そんな企業の中で生き残るための方法を記したものです。興味のある方はぜひ読んでみてください。)

だとすれば個人は、サラリーマン以外の選択肢を獲得することを目指さなけばいけませんそうでなくては、会社側に依存した生き方しかできないからです。会社側に依存する人が多ければ多いほど、会社はコスト意識をさらに高めます。そしてどんどん個人の生活は困難になります。

ブラック企業問題は、個々のブラック企業が問題なのではありません。
また、企業側にだけ責任がある問題でもありません
やがて多くの企業がブラック化していく中で、私たちが生きる糧を得る手段を変えていかなければならなくなる予兆、ではないでしょうか。


平康慶浩(ひらやすよしひろ)