あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

できるサラリーマンは自分ルールを持っている

会社の中でできる人になりたい、と思うときに、最初に何を読むべきでしょう。
私はそれは、就業規則と給与規定であると考えています。
なぜなら、就業規則と給与規定に、会社の中での評価と出世のルールが書かれているからです。

サラリーマンの働き方はゲームのようなものです。
そのゲームのマニュアルが、就業規則と給与規定なわけです。

でも多くの人は、ゲームをする前にマニュアルを読んだりはしませんよね。
最近の携帯ゲームでは、マニュアルレスな操作が可能なように、ユーザーインターフェースを極度にわかりやすくもしていますし。

でも、本当に大事なルールの場合、作った人たちは、親切なユーザーインターフェースを用意してくれません
それは、ルールをつくるときに、まずわかりやすさよりも、目的をはっきりとさせるためです。
抜けや漏れがないように心掛け、あいまいな表現を避けてゆきます。
そういうルールのつくり方は、専門家にしかわからないものをつくりだします。
国のルールである法律とか、そうですよね。

もちろん、わかりにくいルールをわかりやすく説明してくれる、ガイド本はたくさんあります。
専門家がいろいろと書いてくれているので、そちらを読んでから、マニュアル本体を読むとさらにわかりやすくなります。
会社の中の人事制度でも、制度改定のときの説明会資料なんかは、比較的わかりやすく説明しようとしています。それでもまあ、かっちりとした書き方をせざるを得ないので、わかりにくい部分もあるのですが。


さてルールを知ってその中で効率的に活躍する、ということだけで、できる人になれるでしょうか


答はYESです。

そのための方法を本にも書いたりしました。


でも、もう一歩先があります


それは、ルールを作る側に回ることです。

そのための方法は、二つあります。

一つ目の方法は、社内のルールをつくる部署に異動すること
就業規則や給与規定をつくるのは、人事部門や総務部門です。
あるいは、経営企画部門も関係してきます。
さらに言えば、取締役以上になることができれば、ルールそのものの改革の方向性なども定めることができるよになります。

この一つ目の方法は正論ですし、みなさんも「そりゃそうだ」と思われることでしょう。
そして、「だからそれがなかなか難しいんだって」とか「人事の仕事とか興味ないし」とか思われるかもしれません。

そこで今回は二つ目の方法を書いてみます。

二つ目の方法は、自分のルールをつくることです。
もちろん、自分のルールは、会社のルールの枠の中に入っていなくてはいけません。
そうでないとただのわがままな人になりますしね。

でも、周りのできる人を見渡してみてください。

それぞれの人に、なにかこだわっているルールがあることに気づきませんか?

例えば、就業時間だとこんな例があります。
◆ 9時出社の会社なのに、いつも7時には出社している。
◆ よほど忙しい時でない限り定時+1時間後には退社している

食事などのつきあいについてはこんなのとか。
◆ ランチは必ず一人で行っている
◆ ランチにいくメンバーを必ず毎日変えている
◆ 飲み会は自分から声をかけた時しか参加しない あるいは 常に参加する

コミュニケーションの取り方も特徴があったりしますね。
◆ メールを送ってきた後で必ず電話もかけてくる
◆ 用もないのにいろんな人に声をかけている
◆ 休日には携帯がつながらない あるいは 必ずつながる

他にも
◆ 残業代を請求しない あるいは きっちりと請求する
と言う人もいたりします。


自分ルールは、ものによっては、周りから見て迷惑なものもあります。
でも、いいものもあったりします。
今回お話したいのは、その是非ではありません。

自分ルールを持っている人は強い

ということです。

もちろん(上にも書きましたが)、自分ルールが会社ルールを逸脱しているのなら、それはただの無法者です。9時出社なのに毎日10時にしか出社しない、とか。

会社ルール以上に働け、ということではありません。
自分ルールを持つ、ということは、就業規則や給与規定に書かれていない、暗黙の会社ルールには従わない、ということでもあります。
ルールはルールとして認めつつ、自分で選択する。
ルールとしてないものは、自分で決める。

そうすることで、働き方が変わってきます。
周りから見られる目も変わってきます。
最初のうちは「変なやつ」とか「勝手なやつ」とか思われることもあるでしょう。

でも、そうして日々を過ごしていれば、周りを含めて「あたりまえ」にかわります。
周りにあたりまえと思ってもらえている状態が、自分ルールが完全に持てている状態です。

自分ルールには二つの効果があります。
一つ目は、ぶれない自分を持てること。それは周囲から見た時の信頼感にもつながります。
二つ目は、会社ルールを良く知るようになること。なぜなら、自分ルールを考える際に、会社ルールを意識しなくてはいけないからです。


じゃあ、何を自分ルールにするのか?
この文章を読んでいただいている方なら、きっと本棚に一冊くらいは、自己啓発のような本をお持ちではないでしょうか。
その本の中にある、一番気に入った一言を選んでください。
その一言を、今日からの自分ルールにしてみるのです。

例えば、有名な自己啓発本からいくつかあげてみます。

◆ 会議では最初に口を開く
◆ 誰も手をあげない仕事に手をあげる
◆ 言いづらいことほど率直に話す
◆ 同僚とは飲みに行かない

なんでもいいのです。
ひとつだけでいいので、今日から自分ルールをつくってみましょう



平康慶浩(ひらやすよしひろ)