小説仕立てでビジネス書を書く準備中
年内に出す本の一部を小説仕立てにしようと考えている。
そういえば、カリスマブックコンサルタントの土井英司さんも、ビジネスブックマラソンというメーリングリストで「これからは経済小説だ!」と言うようなことを書かれていた。
で、とりあえず練習練習、と思ってこんなの書いてみた。
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「加賀さんが戻ってくること、聞いてます?」
社内で情報通と言われる青葉課長がこっそりと耳打ちしてきたとき、営業第一部長の金剛は(まあそんなこともあるだろう)と考えた。
「いや、まだだけれども。確実かい?」
青葉課長が小さくうなずいた。そのしぐさが周りに気付かれないような小ささだったからこそ、彼の情報の信頼性は高まった。
「私の同期に、総務課長の那智がいるのをご存じですよね。大阪の社宅契約を解除する手続きをしてるんですが……」
そう話す青葉の顔色はさえない。
「まあ、いい話じゃないか。大阪支社長として赴任していたとはいえ、都落ちだったわけだしな。で、どこに配属されるんだ。第三営業部長あたりかな」
「それが……那智は他にも手続きが大変だとこぼしてまして……」
青葉が言いよどむ。金剛は首をかしげた。
「おいおい。まさか次長に降格か?大阪支社の業績不振はあいつの責任ってわけじゃないぞ。左遷人事のあげくにそれはないだろう。なんなら俺が扶桑取締役に直談判してやってもいい」
「いえ……その扶桑取締役が体調不良のために任期途中で退任されるらしく……加賀さんが後任だそうです」
がたん、と机が揺れた。金剛が思わず立ち上がったためだ。座ったままの青葉を見下ろしながら茫然とする。
「まさか……、同期の部長の中では俺がトップのはずだ……」
(つづく)
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登場人物名はご愛嬌、ということで。
僕が書く本だからもちろん、人事ネタが基本になっている。
実は、小説仕立ての文章を書くためにいろんな本を買って勉強してみた。
探してみると、小説を書くための技法を紹介する本ってたくさんあるんだよね。
とりあえず僕が買った本は3冊ある。
まず基本を押さえるためにこの本。
小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない
- 作者: 大沢在昌
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: 単行本
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「一人称の書き方を習得する」
「キャラクターには登場する理由がある」
「『謎』の扱いがプロットづくりのカギ」
「主人公を残酷な目にあわせろ」
とか、ストーリーの裏側を見る感じで、読むだけでも楽しい。
「偏差値の高い新人賞を狙え」 、というあたりはビジネス書にも共通する部分があるかも。
次にこんな本も買ってみた。
内容は新人賞をとるまでの話なので、一応3冊ほど単著を出している僕からすれば、参考になる部分は少なかった。
でも、小説家の経済事情とか面白いし、とにかく書き上げろ、ということは全くその通りだと思う。
「取って当然新人賞」
というのはビジネス書でいえば
「出して当然単著」
ということになるのだろう。
ビジネス書には新人賞がない分だけ、ハードルは高いのだろうけれど。
最後に買ったのがこの本。
ネタ本のようだけれど、実はかなり参考になった。
この本、官能小説家が、どうやって小説を書いているのかを詳しく紹介してくれているものだ。
睦月さんと言う方は、実に400冊以上も書いているとか。
ぐっと来た一文はやっぱりこれ。
「そもそも、官能小説では、『セックスして気持ち良かった』ということを、原稿用紙300枚に広げて書くのだ。」
これってあらゆる小説に共通する気がして、はっとした。
昨年流行った半沢直樹は、言ってみれば
「逆転の爽快感」
を味わうためのストーリーだ。
だとすれば、僕が書く本は、ビジネス書ではあるけれど、一言でいえば何を伝えたいのだろう。
そこまですっきり整理しておかないといけない、ということに気付かされた。
人事コンサルティングの合間になにやってんだ、と言われそうだけれど、これもまた勉強だし、プレゼン資料やセミナー資料にも通用する大きなポイントだと思う。
ということで、本が出たらぜひ手に取ってみてほしい。
きっと次の本も平積みされるから。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)