あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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5分間で出来る初対面でリーダーとみなされる方法

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今回は初対面でリーダーとみなされる方法についてお話します。
(就活をひかえている学生の方、グループディスカッションなんかでもとても役に立ちます!!)
とはいっても、身なりや素振りのような外見的な面ではなく、心理的なアプローチをうまく使った方法です。

 

まずその前に、
人口統計学的に重要であることがわかっている属性的要因についてご紹介します。

 

リーダーシップに関して、(欧米の企業では)一般的に以下のような属性が有利であるとされています。

 

○ 年齢:40歳程度

○ 性別:男性

○ 人種:白人

○ 容姿:背が高く、美形である

○ 性格:自信があり、外交的である

 

つまりは「イケメンでダンディなWASP(White Anglo‐Saxon Protestant)」ということでしょうか。

確かにこんなデキル男がいたら、男同士でも惚れ惚れしてしまうかもしれません。

 

でも、このような属人的要素は今さらどうしようもないこと……


しかし、最初のミーティング前の5分間に簡単なマインドセットによる誘導を行うだけで、リーダーステイタスを獲得し、またその後もそれを保持する確率を高めることができるのです。


※マインドセットに関する実証研究については、コロンビア大学MBA、アダムD.ガリンスキー教授が面白い実験結果を発表しています。(Harvard Business Review/May 2014/p130-136)

 

そのマインドセットの方法はとても簡単です。

 

大事なミーティングや面接の前に、手近な紙に数行の文章を書くだけです。

 

では何を書くのか?

 

① 大きな目標や一生のうちに実現したいこと

② 他者と比較して自分には力があると感じた出来事

③ ワクワクしたり、楽しいと感じた経験

 

この①~③のうち想像しやすいものを一つ選んで、具体的にイメージしながら、自分の思いを書きましょう。

ただそれだけでいいんです。

これなら、本当に5分間でできてしまいますね。

 

この方法、実は人間の行動根幹にアプローチする方法です。

心理学上、人間の行動根幹には「回避モチベーション」と「接近モチベーション」の二つのモチベーション・システムがあります。

このうち「接近モチベーション」を事前に高めることで、その後の対人関係に有利に働く(価値ある人物とみなされる)確率を高めるという理論です。

わかりにくいですね。

簡単に言い換えてみましょう。

 

①~③を想像し紙に書くという作業は、あなた自身の心理状態に影響を与えます。

するとその影響によって、脳の左前頭部を刺激されます。

刺激はストレス・ホルモンのコンチゾールを減少させます。

その結果、楽観的傾向と自信が増すのです。

そして、精神的・ホルモン的・心理的な効果として、行動が変わってしまうのです。

そう。「過去の成功体験を思い出し、前向き思考に変換された」行動を取れるようになるです!

 

実際、ケルン大学ノースウェスタン大学で行われた研究では、マインドセットにより学生の面接合格率が向上したという研究結果があるようです。

また、サンディエゴ州立大学ではマーガレット・サッチャーのスピーチの音響解析が行われ、彼女がイギリスの首相になる前後(マインドセット・トレーニングを受けたとされる前後)を比較してみると、トレーニング後の方が話す速度が安定し、声の強弱の幅が広がり、信頼感のある話し方に変わったという検証結果も出ています。

 

「でも、そんな付け焼刃じゃ長続きしないでしょ」と気づいた方。

 

あなたは正しい。

 

確かに、実力がなければいくらマインドセットを良くしても「ポジティブだけど仕事はできないヤツ」という大変悲惨な評価を受けてしまいます。

しかし、意外にもこのマインドセットの効果は長期間続きます。
正確にいうと、マインドセット効果自体は暫くすれば消滅しますが、副次的効果が発生するのです。

新しく作られたグループでは、チームのヒエラルキーがすぐに構築され、さらにそれを固定化するパターンが生じるため、初期に形成されたリーダーポジションを維持する作用が副次的に生まれるのです。これはピグマリオン効果(生徒は人から期待されるほど意欲がわき、成績があがる)とよく似ています。

 

つまり「あいつはできそうなやつ」というキャラが最初に与えられるのです。

副次的に発生するこのキャラクターは、意外に長続きします。

人間はカテゴリー化と、その後のステレオタイプ化が大好きだからです。

特に日本社会ではその傾向は顕著かも知れません。血液型占いが根強く信じられているし、そもそも「キャラ」という言葉だって日本で生まれた概念ですから。

 

「あの子は秀才ちゃん」で「あいつは運動バカ」という学生時代の友人に対するキャラクター付けは、思いのほか初期に形成され、その後の見直しはあまり行われないものです。

同窓会で久しぶりにあっても学生時代のキャラがそのグループ内において変わらないのも、これが一つの要因になっています。

 

第一印象を与えるチャンスは一度しかありません。

 

グループメンバーと出会う前の5分間で、その後のグループ内の自分のポジションは既に決まっているかもしれません!

 

 

 

セレクションアンドバリエーション株式会社

ヒューマンリソース アナリスト 桑原 慎輔

 

 

(参考文献)
『初対面でリーダーと目される方法』アダム.D.ガンリスキーHarvardBusinessReview 2014年5月号