飢餓感がチャレンジ精神をはぐくむ
ヒアリングをすると新しい発見がある。一つの企業を支えてきた役員たちのふとした言葉に、多くの気づきを与えられる。
8月から、新しいクライアント1社の人事制度設計を始めた。
最初に各種分析をして、それからさまざまな人にヒアリングをしている。このあたりのプロセスは、今年の頭に出版したこの本の手順と原則的に合致している。
7日で作る 新・人事考課 CD-ROM付 (Asuka business & language book)
- 作者: 平康慶浩
- 出版社/メーカー: 明日香出版社
- 発売日: 2014/02/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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役員にヒアリングする中で、こんな話を聞いた。
「最近の若い人は、優秀やけれど、言われたことしかしてくれませんわ。なんでやと思います?」
さとり世代?
そんなキーワードが頭をめぐるけれど、彼は話を続けた。
「欲しいもんはなんでも持ってるからですわ。親御さんからしたら子どもの数も多ない。スマホ欲しい言われたら買い与えて、私立行きたいゆーたら行かせて。そらあほな親ばっかとちゃいまっせ。でも、普通に与えてるんですな。欲しがる前に。ほしたらどないなると思います?」
彼の言葉に僕は引き込まれた。
「待っとったら、手に入る、って思うようになるんですわ。
せやから、仕事でも一緒です。待っとったら、やりがいがある仕事とか、成長できる仕事とかを与えてもらえる、と思ってるんですな。ちょうど私らと逆ですな。待っとっても何ももらわれへん。親に『あかん!』言われたら絶対もらわれへん。そやから知恵使いますな。そらあほな知恵でもありますけど、せやけど、欲しいもんは取りにいかんと手に入らん、と染みついてますな。金も女も地位も名誉も、全部取りにいかんと手に入りませんわ。案外、草食系とかゆうのも、そのあたりが関係してるんとちゃいますかね」
僕はものすごく納得した。
それから、こう返事した。
「僕の世代だとちょうど子ども時代に、取りに行かないともらえない世代だったわけですが、思い出してみれば、友達の誰かは持ってる。僕はおやつをもらえなかったけれど、おやつをもらえていた友達はいる。ファミコンを持ってる子と持ってない子がいる。そんな違いがありました。つまり、そこには『持ってる人』と『持ってない人』の差が生まれているわけですけれど、会社人生でもそういうきっかけを与えるべきだということでしょうか」
「せやね。会社でゆーたら、努力したら手に入るとか、結果を出したら手に入る、とかでもいい。でも、理不尽でもいいと思うんですわ。ただ、欲しがる人が手に入れられる、という原則さえ守ればね。優秀やから普通にやっとったらもらえる、なんて人事の仕組みやったら、きっと10年後に後悔しまっせ」
僕にこの話をしてくれた彼は、40年続く会社の営業管掌役員だ。
やっぱり人事コンサルタントの仕事は面白い。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)