ロジックだけで設計できないアルバイトの昇給
昇給の仕組みを設計するときに気を付けていることがある。
特にアルバイトやパートなどについての昇給の仕組みだ。
一般的には昇給というのは、やる気を高めたり、目の前の努力水準を高める効果がある、とされる。
だから、アルバイトについても昇給の仕組みを導入しようとする場合がある。
気を付けなければいけないのは、評価基準だ。
普通、昇給の仕組みは、なんらかの評価の結果として行う。
アルバイト用の場合、目標管理とか、能力評価はあまり使わない。
20項目~50項目くらいの業務チェックリストを作って、それができているかどうかを判断したりする。
例えば居酒屋の場合だと、こんな感じ。
・お客様がいらっしゃったときに元気な声であいさつできているか
・お客様が帰られたあとのテーブルをただちに清掃し、次のお客様を迎える準備ができているか
・レジ作業の重要性を理解し、間違いなく操作しているか
仕事を覚えてもらうのにも役立つし、スキルも高まって、やる気も高まるのなら万々歳、のはずだ。
でも、こういう評価の仕組みを導入できない場合がある。
典型的な職場は、食品スーパーなどだ。
要は、正社員よりもアルバイトやパート社員が多い職場では気を付ける必要がある。
同じタイミングで採用された5人のアルバイトがいて、1人だけが伸びていったとする。
そこでその1人の時給をあげたりすると、その人から早く退職してしまうことがある。
理由はいじめだ。
時給があがらなかった4人にいじめられて、辞めていってしまう場合がある。
ねたみやそねみ。嫉妬と言う感情がロジックを凌駕する。
冗談のようだが、例えば正社員が若い男性で、アルバイトのほとんどが彼よりも年上の女性ばかり、といった職場では、正社員の人材マネジメントが効かないことが多い。
だからこそ、下手なロジックだけの昇給の仕組みを導入すると、逆効果になってしまうのだ。
そんな職場では、評価は評価として時給に反映させない選択肢をとらなければいけなくなる。
仕事を早く覚えればほめる。
仕事を覚えなければ厳しく丁寧に指導する。
でも、それはその場だけのこととして、普段は一律に接する。
どうしても仕事の覚えが悪い場合には、むしろ退職を促す。
そして昇給は、一律で「勤続3カ月になったから」「1000時間勤務したから」というような、勤務時間などの、人によって差がつかない基準で決めなければいけなくなる。
もちろん勤続日数で昇給させることには別の意味もあって、早期の退職を避けようとする狙いがある。
もし3カ月で退職する人が多いのであれば、4か月目に昇給するようにしておく。そうすれば少しは長く勤続してくれる人が増えるからだ。
とまあ、今日、ちょうどそんな話をクライアント先でしてきたので、ここに備忘として書いておく。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)