あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

上司に人事評価をさせてはいけない(暴論)

あらかじめ言っておくが、暴論を書く

僕はいつも、自分の仕事(人事コンサルタント)をなくすための方法を考える。

これはその一環だ。

 

企業組織で、人事評価は上司が行う。

上司はたいてい、管理職、と言われる人たちだ。

平社員の評価は課長がする。

課長の評価は部長がする。

部長の評価は、取締役がする。

 

ちなみに、平社員とか課長の評価をするときには、評価基準をもとにしたりするけれど、部長クラスになってくるとそんなものは有名無実だ。

 

とあるサービス業(売上規模150億円くらい)の人事制度を、5年くらい前につくった。

2年がすぎて、制度の微修正を依頼されたので、その間の評価データを受け取った。

そんな中、部長の評価データが気になった。

AとかBとかついているんだけれど、昇給額が全員一緒だったからだ。

「制度を変えたんですか?」

「いや、そのままですよ」

「なぜ昇給額が一緒なんですか?」

「部長なんだから、給与に差をつけるわけにはいかないでしょう」

 

なんじゃそりゃ。

 

でもまあ、一部上場企業の部長とか役員評価でも同様のことは何度もあった。

一定レベルにまで選ばれてきた人たちに対して、基準による評価はされない

そのあたりの秘密はこの本に書いているので読んでみてほしい。

(この文章はステマだけれど、本当に役に立つと思うんだけれどね)

 

 

 

で、評価というものの納得性、妥当性を考えていくと、どうしても矛盾が生じるので解決策はないものかと考えた。

そういうときには、一度抽象化するのが一番だ。

企業の中の人事評価を適切に行うためにはどうすべきか。

 

言い換えると、どういう状況だと、適切な評価が行われないのか。

 

うだうだと、こんな例を考えた。

 

学校教師に対して、クラスの学習レベルを上げる指示をしたとしよう

底上げしてもいいし、できる子を伸ばしてもいい。

とにかく、平均を上げればいい。

教師はなにをするだろうか?

出来ない子に対しての補習を実施する。

出来る子に対する選抜授業を実施する。

課題をたくさん与えて、できなかったときの罰則を明確にする。

課題をたくさん与えて、できた時の報酬を明確にする。

自発的に勉強したくなるように、勉強の面白さを伝える。

いろいろな方法がある。

 

そうして、さて。

誰がそのクラスの学習レベルをチェックするのか?

 

まさか、その教師自身にチェックなんてさせないだろう

そんなことをしたら、チェックになんかならない

 

でも、企業組織ではそれが行われている

 

つまり、育成責任と評価責任とを同じ人間に与えてしまっているのだ。

 

だとすれば、その評価に納得性が出ようはずもない

 

それよりはむしろ、評価はデジタルであるべきだ

実際問題、元気な伸び盛りの企業では、評価はデジタルだ。

評価者の思いなんてかけらも関係しない。

 

デジタルに測れない部署がある、という言い訳はいつも出てくる。

管理部門がその代表だ。

でも、それこそ年功を使えばよい。

経理に入って1年毎に同じ額だけ昇給する。

一定額になったらストップする。

そして、昇進させるにふさわしいかどうか、と言うときにだけ、上司以外のメンバーで評価をする。

 

だから、上司を評価者にしてはいけないのだ

上司には、育成責任を与えなければいけない

そして、チームとしての数値責任を与えなければいけない

決して自分の部下に対して〇×をつける権限を与えてはいけないのだ。

 

そうすれば、組織は伸びる。

 

もう一度、学校の教師の例に戻ってみよう。

生徒に対して〇×をつけない先生。

ただ、教育だけを徹底する先生。

客観的な評価だけを受ける先生。

 

彼は、ダメな教師になるだろうか?

 

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

 

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