【人件費の近未来1-1】 人件費には4つの性質がある
(当記事は、月刊人事マネジメント2014年3月号から1年にわたって連載した記事を加筆修正したものです)
今回からの連載では、人事部門に直面する人件費についての課題を、4つの性質を踏まえて解きほぐしていく。
可能な限り、人事部門がとるべき選択肢も具体化してみよう。
人件費の4つの性質とは、社会、企業、個人、そして(労働)市場の各視点からの性質だ。
企業の視点は第一にコストだ。この文章を読んでいるあなたはもちろんその視点を持っているだろう。
企業の視点からの性質は実はもう一つある。ただ、なかなかこの性質を踏まえた行動をとっている企業は多くはない。それは投資という性質だ。
従業員からの視点だと人件費は報酬になる。報酬は生活費であり、インセンティブでもある。
社会の視点からみれば、人件費は消費の源泉であるが、近年では社会保障の性格も強まっている。65歳までの継続雇用法制化はその最たるものだ。
最後に、労働市場の視点から見れば、人件費を細分化した個別の給与は取引価格となる。
企業にとっての人件費の理想を追うとき、私たちはこれらの4つの性質についてのバランスを取ろうとする。4つの性質は、一方を引き上げれば一方が下がるという傾向を持つ場合もある。また、ある性質に対応することで、別の性質へ影響することもある。
だからこそ私たちは人件費についての課題を考える際に、これらの視点から対応を整理しなくてはならない。
今回はベースアップを考える。
(次回へ)
平康慶浩(ひらやすよしひろ)