あしたの人事の話をしよう

人事コンサルタント 平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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サービス残業って減ってるよね

今年に入って、セミナーとかスクールとかで登壇するときに、受講者の方々に質問することがある。

「最近、自分自身を含めて、サービス残業している人ってどれくらい見ますか?」

 

答はどれくらいだと想像されるだろう?

 

延べ数百人以上には質問したが、挙手する人の割合は1割に満たない。

 

もちろん、サービス残業がある、と答えるとまずいような状況で質問しているわけではない。

11月に出る私の新刊にも記しているが、いまどきまともな会社では、残業する人は仕事ができない人だと判断される。

しかし一方で、サービス残業とかブラック企業とかの話がメディアにたびたび出てくる。

 

どうもおかしい、と考えて、今いろいろと調べている。

 

まとめていずれかのタイミングで発表するけれど、とりあえずわかったことがある。

 

日本のサービス残業の実態について調査する統計情報の取り方が、どうも間違っているということだ。

現時点で調べた限りでは、1991年の小野旭氏の論文あたりが発祥らしいのだけれど、最近の論文でも以下のような計算式を使う。

 

実労働時間:総務省労働力調査データ

名目労働時間:厚生労働省の毎月勤労労働統計データ

 

いわく、実労働時間は労働者本人が回答する。

名目労働時間は、実際に会社側で給与を支払う際に計算している労働時間データを用いている。

この差がサービス残業時間だ、というものだ。

 

たとえば2014年の東京新聞の記事がある。

ここでは、2013年データをもって、実労働時間と名目労働時間の差が年間300時間もある、としている。

 

正直なところ、この計算方法だと正確な数値が出てこない。

論文を書いたり記事を書いたりしている人は、総務省労働力調査の調査票を見たことがあるのだろうか?

もし見ていれば、このデータの誤差があまりにも大きく、実労働時間のデータとして使えるわけがないことがわかったはずだ。

ちょうど、労働時間を記入する欄はこうなっている。

 

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まず第一に、調査票そのものに、35時間以上を書かなければいけないようなバイアスがかかっていることがわかる。<35時間未満の理由>があるためだ。

おそらく普通の人であれば、じゃあ8時間×5日で40時間、と書くだろう。

しかし、多くの会社では、月の労働時間は8時間×20日~22日というわけじゃない。

たとえば1日の所定労働時間が7時間、7時間半という会社は非常に多い。

また有給休暇を付与すれば、その分が労働時間からは差し引かれる。

だから、実態としては月の労働時間は140時間~150時間程度におさまるのだ。

しかし上記で「40時間」と答えてしまうと、月の労働時間は160時間を超える。

 

第二に、データに証拠が全く求められていない。

だから本人が「だいたい毎日8時過ぎまで働いてるから残業を含めて1日10時間×5日で50時間くらいかな」と書いたとしても、それがあっているのかどうかがまったくわからない。そしておそらくは実労働時間以上の数値を記載してしまう。

 

これをもって「サービス残業が多い」としていてはどうしてもおかしな結果が出てくる。

そもそも正確に入力されていないデータをもって統計分析をしても、出てくるのはガラクタだけだ。

せめて上記のような心理的バイアスを踏まえて、傾向値として分析するのならともかく、差があるからサービス残業です、なんて信ぴょう性があるわけがない。

 

加えて、労働基準監督署の是正勧告件数や金額を統計処理すると、2008年以降、是正勧告件数が激減していることがわかる。

サービス残業は確かに残ってはいる。

しかし、もはや主流ではないのだ。

 

ただメディアが示す数値を見ているだけでは、踊らされるだけだ。

実際問題、あなたのまわりの人は、サービス残業をさせられているだろうか?

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)