あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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コーチングをうまくできない人が覚えておいた方がいいたった1つのコツ

コーチングという手法はもうかなり一般的になっていて、グーグルで検索をかけるだけで580万件とかヒットしたりする。

コーチングの手法をごく簡単に説明すれば、それは3段階の手順にわけられる。

 

第一に、傾聴すること。

すべての人間に個性があり、理解が早い人も遅い人もいる。個人の能力をそれぞれ伸ばすためには、同じ課題を与えても結果は異なることを前提とし、個人に対する観察、把握、分析が必須である。(ウィキペディアより)

 

要は、この人はどんな人なのかを確認していくことだ。

 

第二に、質問すること。

表情や動作などの非言語によるコミュニケーションを含め、コーチングを行う上での基本。 自分の主張だけをしたり、あらかじめ用意されたテキストや質問を読み上げるだけでは、コーチングにはならない。(ウィキペディアより)

 

傾聴によって信頼感をある程度得て、そこから質問していくと、質問された側は自分で考えることになる。ここでうまい質問をなげかけていけば、なぜ自分はそうしなければいけないのか(たとえば学習とか成長とか改善とか)を考えるきっかけを得る。

 

 

第三に、承認すること。

wikiには「コーチングを受ける側に、考えて自ら問題を解決する力をつけさせるのが、コーチングの最終的なゴールとなることを忘れてはならない。」とか書いているけれど、ちょっと違う。

傾聴して、質問して、出してきた答えを認めてあげることだ。

時には不十分な答えであっても、それを認める。

なぜ承認が必要かと言えば、それが行動のきっかけになるからで、特に変わらなければいけない段階の人はこれができていない。

 

ちなみにwikiには1番目に「モチベーション(動機)」って書いてあるけれど、そもそも自分から改善しようとか成長しようとか考えてくれている殊勝な人はとっても少数派だ。

だからモチベーションなんてことは考える必要がない。

それよりも、傾聴⇒質問⇒承認の3ステップを経ることで、その人を動機付け、自分から行動できるように支えてあげることがコーチングの本質だと理解すべきだろう。

 

 

さて、このコーチングだけれど、いくらセミナーとかで学習しても、実践できない人がいる。

そういう人のコーチングを見てみると理由はすぐにわかる。

それは傾聴の段階で躓いているのだ。

傾聴に失敗しているから信頼感は生まれていないし、質問は詰問になってしまって、承認出来るような言葉は出てこない。出てきたとしてもやらされ感だらけで、ただこの場から早く離れたいというでまかせだけが口にされる。

 

なぜ傾聴で失敗してしまうのか。

 

それはとても簡単な理由による。

だから、コーチング、傾聴がうまくいかない人は、次にそうするときにこうしてみてほしい。

 

「黙ること」

 

より具体的には、コーチングの最初に簡単な言葉だけをかけて、あとは黙っていることだ。

ただし、黙っているのは口だけ。

視線、身振り、体全体の動きはすべて普段と同じように、相手の話に同意をしめさなくちゃいけない。

ただ、口だけを開かないようにするのだ。

 

仮に話してほしい相手がしばらく黙ってしまったら、こちらからなにか話を促したくなるだろう。

でも、そのときにもせいぜい

「それで?」

「だとすれば?」

という簡単な質問や、

「そうだよね」

「うん。たしかに」

という同意の言葉だけにとどめる。

そうして「沈黙を共有」しなくちゃいけない。

 

 

コーチング、傾聴に失敗する理由の大半は、コーチングをする側がしゃべりすぎることにある。

でも、まだモチベーションも生まれていない人に対してしゃべっても反感を生むだけだ。

ただ黙って耳を傾けてみよう。

 

だって、傾聴、という単語のどこにも口という漢字は見あたらないでしょう?

 

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)