メモハラ中年にならない
30代からは、部下や後輩との付き合い方も大事になってきます。
丸いつながりのためにはわけ隔てのないつきあいが必要なのですが、ここで多くの人に悪い癖がつく場合があります。
それはハラスメントの癖です。
普通に過ごしているだけで、人はハラスメントの癖を持つようになるのです。そしてハラスメントの癖から抜け出せない人は、結局今いる場所でだけ活躍して、それ以外の場所に行けなくなるかもしれません。
パワー・ハラスメントやセクシャル・ハラスメント、モラル・ハラスメントなどの様々なハラスメントがありますが、特に気をつけていただきたいものが、昔の思い出話を押し付ける説教。
私はこれをメモリーズ・ハラスメント(メモハラ)と名付けています。
思い当たるふしはありませんか?
たとえば部下や後輩に指導をするときに、ついつい「俺がおまえくらいの時にはこんなに丁寧に教えてくれる人はいなかったんだよな」というように昔話をしてしまうこととか。
歴史から学ぶことはもちろん重要です。同じような状態が過去にもあったのであれば、その際の取り組みをどうしたのか、ということは組織知として共有されるべきでしょう。
たとえばクレーム処理を担当する部署では、過去のクレームの詳細とそれぞれへの対応が具体的に残されています。より具体的な話を聞くために、当時の担当者に話を聞きに行くことだってあります。そういう場面では「20年前に私が担当していたときには、課の人数もすくなかかったからとても大変だったの。でも、だからこそみんなで情報を共有しながら作業を進めたわ」というような話を聞くことはとても有用です。
結局のところハラスメントとは、相手が望んでいないのに押し付けるものすべてです。
さらにもう一つ定義を加えるのなら、ハラスメントは、ハラスメントをする側に「快」が得られること。なんらかの欲求がそこで満たされるのがハラスメントです。セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、モラル・ハラスメント。いずれもハラスメントをする側になんらかの「快」が手に入ります。メモリーズ・ハラスメントも同様に、自分の過去を振り返り思い出話をすることで、尊厳欲求が満たされることになるのです。
もしあなたがメモハラをしてしまっているのなら、自分自身が環境変化についていっていないことを危惧しましょう。
「昔はよかった」という言葉が口をついて出るということは、今に対して不満があるということです。その多くは、変化してしまった現状に対する不満です。
しかしあなたはまだ30代のはず。その年齢で変化についていっていないということは、新しい経験をしていないとか、そもそも新しい情報を遮断してしまっている状態のはずです。
もしあなたが同年代同志での会話で「昔はよかった」ということを話すのであれば、それはハラスメントではありません。それは記憶を共有するという、コミュニケーション手段のひとつになるからです。
それでも可能であれば、そういう場所でも最新の技術動向や経済動向、政治動向などについて前向きに議論できるような考え方、行動ができるようにしましょう。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
この文章は、2016年5月27日に新たにプレジデント社から出版する本の一部を抜粋したものです。よろしければぜひ全体を読んでみてください(以下のリンクから予約購入していただくと忘れずに済みます)。