人を選ぶ基準は一言で言えば「失敗を許せる基準」だ
会社の中の人事制度を作っていて、昇格とか昇進とか任用とかの条件を作ることがある。
ちなみに今あげた3つの用語は、現場ではこういう意味の違いがある。
昇格:会社の中の等級をのぼること。
例)3等級から4等級に昇格した。
S3等級からM1等級に昇格した。
昇進:会社の中での役職が上昇すること。
例)課長から部長に昇進した。
任用:特別な役職につくこと。たいていは役員。
例)役員任用の基準をつくる。
昇格しても昇進しない場合があるし、昇進したけれど昇格しない場合もある。
たとえば、人がいないから「お前、来週から課長な」と言われたけれど、昇格したわけじゃないので、給与は変わらないということがある。
逆に、課長のままだけれど「ポストがないから部長にはできないけれど、昇格試験には合格したから、M1からM2に昇格させることになった」ということで、役職が変わらないけれど給与が増える、とうこともある。
これらの判断のときに、「なんとなく」とか「社長が気に入った人」とかを判断基準にしていると、10年くらいたってから後悔することになる。そういうときの後悔はたいてい役にたたないし、それまでの10年間の負の遺産がとんでもなくなったりする。
(ぜったい管理職にしちゃダメなタイプを、社長のお気に入り、ということだけで管理職にしてしまって、社内の実力派中堅やできる新人たちがことごとく離職してしまった、なんていう会社は珍しくない)
じゃあそのための基準をどうつくるのか。
細かい方法はいろいろあるし、その結果を踏まえた修正もどんどんしていくんだけれど、結局のところはたった一つの条件でしかに事に気付いた。
それは「良い業績を上げてきた実績」ではない。
また、「昇格や昇進や任用したあとに活躍できる可能性」でもない。
もちろん理屈としては、上記の二つだ。
今までに結果を出している人にチャンスを与えるのは周囲の納得性もある。
さらに、中には、たまたま結果を出した人もいるので、実際に活躍できるかどうかを第三者の視点でチェックすることが有効な場合もある。
(例えば僕はかれこれ5年ほど、大阪市からそういう仕事を任されている。区長とか、局長とか、部長とか、あとは校長とかに昇進する人がいるときには、念のため、ということでチェックをする場合がある。他にもいろいろな企業でそういう取り組みをしていることも多い)
しかし僕が気づいたのは、理屈ではない判断基準だ。
選んだ人が失敗したときに、そのことを許せるかどうか。
何回まで許せるのか。
どういう失敗なら許せるのか。
そして次にチャレンジしてもらうために、背中を押してあげられるか。
緊張感を前提としながらも、失敗を許されて、再度チャレンジできる時、人は大きく成長することができる。
成長することで、当初期待した成果を実現しやすくなる。
そしてその期待は、会社の中に社風として息づいていく。
だから選抜基準とは本質的に、失敗を許せる基準に他ならない。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)