あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

イノベーションは「値上げ」と考えるとわかりやすい

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人事コンサルティングをしていると「わが社ではイノベーションを重視していきます」というようなことをよく聞きます。

だから、従業員や役員がイノベーションを起こせるような人事制度がほしい、と。

 

気持ちはよくわかるのですが、じゃあ「イノベーションってなんですか?」と尋ねると、返事があいまいになります。

で、具体的に聞くと、回答もわかりやすくできます。

 

例えばこんな感じ。

 

イノベーションとは新規事業をつくることだと思います」

⇒なら、あえてイノベーションとかいわず、新規事業をつくりやすくする人事制度にしましょう。昔ながらの有名どころでいえば、3Mとかそうですから、従業員の時間裁量度を増やすとともに、事業部長の評価基準を、直近5年以内に作った事業の売上高にしましょう。何十年もそれで飯をくってるような売り上げはぜんぶ会社のものとしてとりあげましょうね。

でなければ、まっとうな人なら、古い安定事業のほうが偉い、として新規事業なんてつくりませんので。

 

 

イノベーションとは現場からのさまざまな改善活動だと思います」

⇒では重要なことは、現場から上がってくる意見をとりいれ「10回のうち9回失敗しても許せる責任構造」をつくりあげることですね。

言い換えるなら、石橋をたたくよな稟議はやめて、現場に一定額までの決裁権を与えなければいけません。部長承認が必要なんて状態だと、現場からの意見は決してあがってきませんので。

また、失敗件数を目標に据えるのもいいですね。最高の改善提案者は、一番失敗し続けた人でもあることが一般的ですので。

 

 

イノベーションとは今ない製品を作り上げることだと思います」

⇒ではトライアンドエラーを許容する仕組みに加えて、ニーズとシーズ双方について考えが及ぶプロジェクトチームが必要ですね。そのためには組織の垣根を超えた人のとりまとめと、そのためのトップのコミットメントを進めていきましょう。

具体的には、社長直轄のプロジェクト化が必要です。

そのためには、実は人事制度改善は必要ありません。むしろ成功例をつくりあげ、メンバーを称賛するとともに、そこで得られた利益を全社に配分すれば、社風に変革につながってゆくでしょう。

 

 

だいたい上記の3つで答えになることが多いのですが、「とはいってもそれらはできません」とおっしゃる会社も多い。

 

そんなとき、私は「じゃあシンプルに『値上げ』できる方法を考えてみましょう。それがイノベーションの起点になります」と答えます。

 

たとえばすでにどこにでもあるような商品で、名も知らないような小さな零細企業でも作れてしまうような一般化された商品があるとします。

ざっと思いつく感じだと、

・ビニール袋

・封筒

・ボールペン

まあ他にもいろいろなものがあります。

 

仮にビニール袋があるとして、これを「値上げ」するためにはどうすればよいか。

その値上げのための方法を実現するためには、どんな行動をとるべきか。

 

そこまで考えると、人事制度として何を変えるべきかがわかってきます。

逆に、イノベーションを起こそうとするのに、マーケティングや戦略の理屈だけ作っても、実は人は動きません。

マーケティングや戦略に加えて、人事制度も変える。

そうすることで、本当のイノベーションが起きるようになります。

 

今、イノベーションが起きていないとすれば、人事制度の変革をぜひ考えてみてください。

それは単純な評価報酬制度の改革だけではないかもしれません。

 

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)