あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

売れるコンサルタントになる方法

しばらくしたら消す予定で、ちょっと書きます。

 

いろんな人に、コンサルタントとして独立してよくやってこれたね、と言われます。

2020年2月10日の今日、以前よりもかなり広いオフィスに引っ越すことができました。なかなか大変でしたが、逆に引っ越さないと仕事がまわらないので、それを当然として仕事を進めてきたというのもあります。

 

私がそれなりに成功してきた理由はいろいろありますが、その中でも大切なものの一つに、これがあると思っています。

 

「著名サイトでの連載を止めなかった」

 

それなりのポジションを得たコンサルタントは振り返ってみればわかると思うのですが「原稿をいただければアップしますよ」というWEBベースのお誘いはそれなりにあったはずです。私の知人でも結構いらっしゃいます。

 

ただ、継続している人はごく少数です。

日経に限らず、ダイヤモンドとかプレジデントとか。

それぞれの編集者さんは、多くの方々に執筆をお願いしています。

けれども、ちゃんと定期的に原稿を書いてくる人は、意外なほどに少ないのです。

 

私はそれが大きな違いになると実感しています。

 

私は日経スタイルというサイトに連載をしています。

隔週で更新しており、現時点での最新号は2020年1月28日の以下の記事です。

style.nikkei.com

 

この記事をみていただくとわかるのですが、番号として76と書いています。

じゃあ76回目なのか、というとそうではありません。

実はその前に21回の連載をしています。

そこまでの内容をまとめてこんな本も書きました。 

マンガでわかる いまどきの「出世学」

マンガでわかる いまどきの「出世学」

 

 

だから連載回数は97回。

隔週連載なので、週で計算すると」194週。

1年52週とすると、3年と38週継続していることになります。

 

 

その間、とてもいろいろなことがありました。

けれども、連載の締め切りは変わらないのです。

ただ一度だけ、1週間、締め切りをずらしてもらったことがあります。

それは様々な仕事の関係から、どうしようもないタイミングでしたが、今でも私の中では屈辱的な記憶として残っています。

 

それ以外をしっかり続けてきた結果、私に与えられた評価は高いものでしょうか。

いいえ。それはごくあたりまえのものです。

 

「毎週隔週で記事を載せている人」

 

漫画家で例えるとわかりやすいでしょうか。

有名漫画雑誌に漫画を掲載したい、と思う人がいます。

そして、新人賞を経て掲載にこぎつけます。

毎週苦労しながら連載を続けます。

人気に波はありますが、なんとかクリアしながら、自分が伝えたい思いを物語に載せ、しっかりと続けています。

けれども彼に与えられる評価は「いつも漫画を載せている人」でしかありません。

原稿を落としたりしたら、それは評価が地に落ちることでしょう。

 

ビジネス記事の世界では、多くの新人やこれからを考える人たちは「日経に『掲載』した人」であることを目指します。

それは漫画と同様のはずです。

なのに掲載を実現し、いざ「連載」の機会を与えられると、そのほとんどが数回でその権利を放棄します。

 

 

漫画は人気で判断されます。

けれどもビジネス記事はそれほど厳しくありません。

なのに、こんな理由でみんな書くことをやめてしまうのです。

 

本業が忙しくて書く時間がなかった。

まじめに仕事をしていると、それほど新しいネタが出てくるわけではない。

クライアントの話を面白おかしく書くなんてプロフェッショナルとして間違っている。

 

理由はなんでもいいのですが、とにかく書くのをやめるのです。

理由はなんでもいいので、とにかく書けばいいのに。

 

私は、なんとか書き続けることができました。

なぜ書き続けられたのか、ということはまたおいおい書きますが、大事なことは、与えられた機会を逃さないことではないでしょうか。

それはコンサルタントに求められる、最低限の資質ではないかと思うのです。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

 

 

 

 

習熟と関係性のあり方が変化しつつある

ビジネスのイラスト「万能ビジネスマン」

仕事というものは慣れることで見に着くものだ、と考えられていた時代が長かったのではないでしょうか。

どんな仕事も繰り返していけば勘所がわかってきます。失敗と成功を繰り返し、人は技術を身に着けてゆくのです。

やがて習熟の速度がどんどん早まっていく時代が訪れます。

たとえば、1900年代初頭にフォードの工場で始まった大量生産の仕組みは、科学的管理手法によるKPI管理、つまり生産性の管理によって広まりました。

それまでもあった習熟することで品質やスピードがあがる仕事に対して、習熟の物差しを提供する仕組みでした。

物差しを得て、習熟速度は飛躍的に高まります。フォードの工場でKPI管理が行われるようになったことで、車を作る生産性はおよそ13倍に高まったというデータもあります。

 

そしてそれは、習熟の方向性が変化したタイミングでもありました。

「先人の背中を見る」ことから「新しい方法を学ぶ」ことへの変化でした。

 

一方、仕事にはもう一つのタイプがあります。

 

それは関係性によって成り立つ仕事です。

 

たとえば営業職は、習熟することによって関係性を獲得します。

〇〇さんだからこの仕事をお願いする、というような状態が生じることです。

経済学的に言えば乗り換えコストの問題だとかそんな話になるのですが、仕事によって構築された関係性そのものに価値が生まれ、そこから始まる仕事のあり方です。

 

そしてこの関係性ビジネスの世界にも、やはり大きな変化が生じています。

 

たとえば転職があたりまえになったことで、せっかく築いた関係性がゼロになることが増えました。

 

以前であれば、商社の営業マンがメーカーの購買担当と関係性を持っていれば、それは10年以上、あるいは生涯にわたって続く価値を生み出しました。仮にその人が異動したとしても社内の別部署にいるわけで、引継ぎなどにより、会社対会社の関係性は維持できたのです。

けれども担当者が転職してしまう時代になると、一度築いた関係性はとぎれてしまいます。

だから常に新たな関係性を構築することが求められるようになってきました。

その際の基準は、相手にとって特別な価値を提供できるかどうか、だったりします。
だから関係性のつくり方も「特定の人と深く付き合う」ことから「新しい出会いを作り続ける」ことに変化してきています。

 

「先人の背中を見る」「特定の人と深く付き合う」という仕事の進め方から、「新しい方法を学ぶ」「新しい出会いを作り続ける」という仕事の進め方への変化は、多くの人の生き方を変えようとしています。

 

ただ、そのことが最近、コミュニティのあり方にも影響している気がしています。

一番根源的なコミュニティである家族においても、「先人の背中を見る」「特定の人と深く付き合う」という形から、「新しい方法を学ぶ」「新しい出会いを作り続ける」という形に変わるとすれば。

 

それは思っているよりも大きすぎる変化なのかもしれません。

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)