あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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育て上手な会社になるための教育のコツ

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※当記事は三井住友銀行経営懇話会向けの会報誌Netpress(ネットプレス)からの依頼で平康慶浩が執筆した内容を転記したものです。

 

当記事のポイント=======

1.新入社員のハズレ社員化は、現場丸投げと、社内に多数存在するあきらめ社員が原因です。

2.優秀な社外の人たちとのつながりや気付きのために、社外の教育機関を活用すれば、人材輩出企業を目指すことができます。

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1.ハズレ社員やあきらめ社員たちが社内にいませんか?

いつの時代でも、採用した社員すべてが優秀ということはありません。

どれだけしっかりテストと面接を実施し、慎重に採用判断をしたとしても、「雇ってみたらどこか違う」ということはどうしても避けられません。

その割合はおよそ20%~30%と実感しています。

 

また、若いころはバリバリと働いていたのに、30代も半ばをすぎてくると、目に見えて働き方が衰えてくる人がいます。

その理由はさまざまですが、一番典型的なのは、自分に対する「あきらめ」が生まれてしまうこと。

社会人として10年以上働いて来れば、自分の能力も大体分かってきますし、会社でのその先のキャリアも見えてきます。

「自分はこの程度かな」と思った途端に人は努力をやめてしまいます。

 

社長がふと気付いてみれば、新しく採用した社員の中にはハズレ社員がいるし、中堅社員の中にもあきらめ社員がいます。

その割合は減ることがありません。

将来の経営幹部候補や、会社を引っ張ってくれる優秀な社員は一体どこにいるのだろう?と、嘆くのももっともな話です。

 

しかし実は、ハズレ社員やあきらめ社員を生んでしまっているのには、会社側の仕組みにも大きな問題があるのです。

 

2.ハズレ社員を生んでいるのは、ほかでもない会社の当たり前

そもそも、ハズレ社員とはどういう人たちでしょう?期待したほど働いてくれない人はもちろんですが、前向きな行動力をアピールしていたのに、雇った途端に守りに入る人もいます。

大手から転職してきてくれるというので、高めの年収を示していたのに、前職と比較してばかりという人もいます。

 

しかし、彼らの言葉をよく聞いてみれば、本当に仕事の出来ない一部の人を除けば、会社側の仕組みが十分ではないから活躍できないこともあるのです。

 

その典型が、元気な新卒たちが、無気力な指示待ち人間になってしまうことです。

入社して間もない頃は、誰もが前向きでやる気にあふれています。

しかし、1年もすれば、比較的優秀な20%、普通の60%、指示待ちの20%に分かれてしまいます。

実はこれは当たり前ではありません。会社側が、「仕事の進め方」だけでなく「仕事をもっとうまく進めるための考え方や行動」を計画的に教えられず、OJTという名前の現場丸投げをしていることが多いからです。

そして現場には、必ずと言っていいほど、あきらめ社員たちがいます。

そんな彼らの姿を見て育った新卒は、3年をまたずに、もっと良さそうに見える別の会社に転職してしまうのです。

 

3.現場のあきらめ社員に任せていては育つ人も育たない

教育は現場で行うもの。確かにそれが理想ではあるのです。しかし、現場に優秀な人があふれている会社はそれほど多くありません。

そして数少ない優秀な人は業務に忙しく、新人を教えている暇はありません。

結果として暇な時間の多い、決して優秀とはいえない、けれども仕事の進め方は分かっている中堅社員が教育を担当することになります。

その結果生まれるのが、仕事を覚えられないとか、覚えても工夫のできない指示待ちのハズレ社員たちです。

できることなら、社内の優秀な人たちに教育を担当してほしい。

しかし、そのための時間がとれない場合は、どうすればいいのでしょう?

 

答えはやはり、新人たちが自ら成長を志してくれるようになることです。

 

そして、そのためには、彼らが社内のあきらめ社員たちと一線を画して、自ら頑張る気になるような仕組みが必要です。

たとえば、売り上げを毎年20%以上の割合で伸ばし続けている成長企業では、自分から事業を提案できる制度を用意して、若手でもどんどんチャレンジできるようにしています。

また別の成長企業では、給与はそれほど増やさないものの、抜擢によってチャンスを与え、結果を出した人の年収を大きく引き上げています。

そういった会社では、仮にチャレンジに失敗したとしても、そこから学んでいれば、次にまた復活することができる仕組みも用意しています。

その中でも、特に「人材輩出企業」と呼ばれる会社では、優秀な社外の人たちと出会え、かつ古びた知識ではなく最新の成功例を具体的に教えてくれる講師に学ぶことができるため、外部教育機関をうまく活用しています。

 

4.つながりと気づきを得て持ち帰ることこそが学習

座学そのものだけで人は大きくは成長しません。しかし、間違った経験だけでもやはり人は育たないのです。

その経験が正しいのか、間違っているのかは、それに携わっている人たちだけではなかなか見えてこないものではないでしょうか。 

だからこそ、外部機関をうまく活用して、ハズレ社員やあきらめ社員を、自分で伸びていく自律社員に変えて育てていってください。 

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

教育体系・人材育成計画の作り方・活かし方・定着のさせ方についてのお問い合わせはこちらからお気軽に。

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シン・エヴァンゲリオンと人事

鬼滅の刃は観に行かず、シン・エヴァンゲリオンは観に行くあたりが昔のオタクな私ですが、本編の中で懐かしい松任谷由実さんの曲が流れていて、ふと人事とのからみなんかを考えてしまいました。

そういやその曲を聴いていた15才の頃(もう37年前です)も、なんか「あえて友を突き放すことのつらさ」とか「変わってしまうきっかけに気づかない鈍感さが救うものもあるのかも」みたいなことを考えていたな、とか。

 

最近どこでも強調するのが、マネジメントはクールヘッドが先、ウォームハートがあと。ただし、決してどちらが欠けてもいけない、ということです。

 

社内では、異なる見解を持つ複数の自分を持つように、と伝えています。

イントラパーソナルダイバーシティ、と言うのですが。

 

それらはあるべきものを守るための考え方です。

 

変わる時代に変わらないものを考え、変わらないものが変わってゆく姿に思いを馳せることが変革であるとすれば、行く末への思いこそがその軸になるのしょう。

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

 

※この記事は2021年3月16日配信のセレクションアンドバリエーションのメルマガの転載です。