最近、三井住友銀行系の広報サイトで執筆していたりします
ブログをなかなか更新していないのは、いろいろなところで記事を執筆しているためですが、こちらなんかは誰でも見られるものなのでご紹介します。
infolounge.smbcc-businessclub.jp
弊社セレクションアンドバリエーションは人事制度設計と運用、教育がメインの業務なんですが、採用についても相談を受けることが増えました。
優秀な人材の採用が難しい。
採用しても活躍しない。
すぐにやめてしまう。
そんなお悩みを持つ中堅企業、中小企業の経営者に向けて書いてみた記事です。
ぜひご笑覧ください。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
令和になぜ「ゆるブラック企業」がクローズアップされるのか
- 「ゆるブラック企業」ってどんな会社
- 最初に改善されたのはブラック企業
- バランスとアズライフの二極だった平成日本
- ブラック企業とワークアズライフの違い
- 高齢化やインフレなどの将来不安が積もってゆく
- 経営者は成長の椅子を増やさなくてはならない
- 人事コンサルタントは成長の椅子を増やす仕事
「ゆるブラック企業」ってどんな会社
複数のところから「ゆるブラック企業」についてのコラム執筆依頼が来て、先ほど書き終えました。
で、執筆のためにいろいろと調べる中で、ぶっちゃけたこととかも書きたくなったんですが、依頼いただいたところがかっちりした会社さんだったのでそこに書くわけにもいかず、自分のブログに書いてみようと思いました。
なお、ゆるブラック企業という言葉の定義については「疲れないけれど成長もしない企業」としています。
ゆるブラックという言葉を最初に使い始めたのは、openwork(当時はvorkers)のようです。2019年ですね。
「残業はないが成長もない。“ゆるブラック企業”を見える化する」
https://www.vorkers.com/hatarakigai/research_4
2021年末に日経ビジネスで特集されたことで、改めてクローズアップされました。
「“いい会社”に入ったのに何か変…その会社、「ゆるブラック」です」
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00342/102900007/
不思議に思ったのは、成長しないことがブラックだとする定義です。
いや、ゆるい環境で、のんびりとずっと同じ仕事をしたい人って一定割合いるんじゃないの? そういう人たちの職場環境を「ゆるブラック」って言っていいの? と思ったのがぶっちゃけ話を書こうと思ったきっかけです。
最初に改善されたのはブラック企業
失われた30年と言われる中で社会全体が停滞する中、体育会系指導や男尊女卑、長幼の序によるハラスメントなどが度々問題視されました。
そこで理想的に語られたのは、良い人間関係の中で自分らしく働ける職場環境でした。
愛社精神に基づくメンバーシップ型企業戦士だけが良しとされた生活から、プライベートとのバランスをとった生活こそがあたりまえ、だと言われ、ワークライフバランスという言葉が頻繁に語られるようになりました。
そこでやり玉にあげられたのは、社員の人権を無視した働かせ方が横行する「ブラック企業」でした。
休めない
ハラスメントがひどい
などなど
ブラック企業大賞も発表されるなど、働き方、働かせ方への監視の目が強まっていきました。
残業代や有給休暇取得に関する各種法令も改善され、多くの企業で働き方は大きく改善したのではないでしょうか。
しかしブラックと言われる会社の中でも、その状況に満足している人たちがいる、ということも見えてきました。
バランスとアズライフの二極だった平成日本
最初にご紹介したopenworkの口コミ調査でも、ハードワークとしての修羅場経験が自分の成長につながったという意見などを紹介しています。
業界としてはコンサルティングやマスコミなど。
長時間労働で休めないしハラスメントもあるけれど、若いうちはそのような状況を我慢してでも、大きく成長したい、という人たちが一部にいました。
そのような状況を肯定する言葉として、ワークアズライフという言葉が語られるようになりました。
ある意味、メンバーシップ型の働き方の言い換えかも知れません。
違う点があるとすれば、メンバーシップ型が会社を主語とした働き方であるのに対し、ワークアズライフの主語は自分自身です。
会社に依存するのではなく、ワークとライフを融合させることで、どんな場所でも生きて行けるという自信を含んだ言葉のように思います。
そうして平成が終わるころには、ブラック企業はダメで、ワークライフバランスかワークアズライフのどちらかを選択すべきだ、という見解が増えていきました。
ブラック企業とワークアズライフの違い
ブラック企業とワークアズライフ、それらをあえて区分するなら、そこにある違いは疲れの質ではないでしょうか。
ブラック企業はつらい疲れ、ワークアズライフは楽しい疲れ、と言えそうです。
一方で、ワークアズライフを会社側が強制する例も増えてきました。
ハードワークなんだけれども、そこにやりがいがあれば大丈夫だよね、という理屈で、残業代を払わないことについての言い逃れなどがある会社です。
このような会社について、たしかに楽しい疲れなんだけれど、それはやりがいでごまかすやりがい詐欺ですよね、ということなどが言われてきました。
これらを平成日本のキャリアフレームとして図示してみましょう。
しかし令和をむかえて今、ゆるブラック企業という言葉が語られるよになってきました。
それはフレームの左下、疲れないけれど成長がない、というキャリアのクローズアップです。でも、そこのキャリアを選ぶことで、ワークライフバランスが取れるのならそれでよかったのではないでしょうか。
なぜあらためて成長しないことがブラックだと言われるようになったのでしょう。
高齢化やインフレなどの将来不安が積もってゆく
そのきっかけは、ゆっくりとした将来不安ではないか、と仮説を置いています。
以下のようなキーワードが積もり積もって、私たちは、将来の自分の生活を自分で何とかしなくてはいけない、と思い始めています。
高齢化
消費税増税
残業削減≒残業代削減
定年延長
人生100年時代
年金不安
老後の2000万円問題
希望格差
コロナショック
インフレ
広がる格差
ソロ社会
老々介護
無理ゲー人生
ジョブ型人事
日本に住む私たちは、災害などの変化に対し、台風のような一過性のものを想定しがちです。
ずっと続く恒常的な変化に対しては、どのように備えるべきか、あまりわかっていないもかもしれません。
そして今来ようとしている変化は、数年間耐えれば何とかなるようなものではなさそうだ、ということがじわじわと実感されてきたのではないでしょうか。
だとすると、少なくとも働きやすさだけでなく、将来給与が増えるとか、目の前の安定だけでなく、継続する安心を求める人が増えているのかもしれません。
その結果、令和日本のキャリアフレームはこのように変わっています。
だとすると、私たちが考えるべきは「成長」ということになりそうです。
ブラック企業とワークアズライフとの違いは、相性の問題です。
しかし成長できるかできないかは、自分自身との相性ではなく、どの業界、どの会社をで働くか、という問題となります。
これからの私たちは、成長環境を獲得するための椅子取りゲームを続けることになるのかもしれません。
経営者は成長の椅子を増やさなくてはならない
このような状況を変えてゆくためにできることはなんでしょう。
一人一人が成長できる椅子を増やすためにできることは、経営者が、企業の成長と個人の成長を実現してゆくための取り組みを続けることです。
ビジョンを持ち、戦略として示し、計画として具体化し、一人一人に役割を与えてゆく。
成長を志向する企業経営こそが、将来不安を乗り越えてゆくための処方箋だと考えます。
ただ、成長を目指そうとしても、そのために何をすべきかがわからない。試しているけれどなかなか実を結ばない、という状況があることも事実です。
人事コンサルタントは成長の椅子を増やす仕事
だからこそ、私は人事コンサルタントという仕事がより重要になってくると考えています。
成長できる業界や職場が少ないと、足りない椅子を奪い合うことになってしまいます。
しかし、椅子を増やすことができれば、奪い合いは発生しません。
また、今働いている場所を、成長できる場所に変えることができれば、何も別の場所に行かなくてもよいのです。
組織の成長と、一人一人の成長をつないでいく仕組みこそが、人事制度と運用、そして教育です。
それらを作り上げていく、人事コンサルタントという仕事によって、社会や企業、一人一人の生活をよりよくしてゆける、と感じています。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
会社のホームページをちょっとずつ改善しています。
よろしかったら見てね。