すべての仕組みは当初の意志を希薄化する
いろいろな会社で人事制度をつくりながら、その本質を考えたりします。
以下はその本質を考えたときの雑記です。
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人事制度とは、一般的に昇給のためのルールだと理解されることが多いようです。
昇給判断のために評価基準をつくって、評価シートをつくります。
でももう少しだけ掘り下げてみれば、組織として求める人材を育てるための道筋だ、ということがわかります。
それがキャリアパスです。
どんな仕事の経験を積んで、どんな行動ができるようになればいいか。
それがキャリアパスの中身になります。
そしてキャリアパスに沿って成長する人は、給与も増えることになります。
給与が増えづらい会社であっても、権限が増えるなどのメリットが生まれます。
そのことから派生して、教育の仕組みがつくられます。
また、できる人に簡単にやめてもらっては困るので、長く会社にいたほうが有利な仕組みを作ります。
1年単位だとそれがボーナスになります。
もう少し長い期間を見据えると、株価に連動した業績報酬だったりしますし、さらに長い期間でみれば退職金の仕組みもそうです。
これらが仕組みとして機能し始めると、効率的に、従業員の成長が実現するようになります。
また従業員一人一人の満足度も高くなります。
そして組織も成長しやすくなります。
そのかわりに薄れてゆくものがあります。
それは、人事制度が作られた時の「意志」です。
あらゆる仕組みは効率性を高めるために存在しています。
そしてその仕組みが当たり前になったとき、なぜその仕組みが作られたのかが忘れられて、組織内の常識に変わってゆきます。
それは組織風土と呼ばれたりします。
仕組みを作るときに意志があったからこそ、その仕組みは出来上がったはずです。
しかし仕組みが定着してゆく中で、当初の意志は薄れてゆきます。
そして、運用の中の効率性から、新しい意志が生まれてゆきます。
興味深いことに、仕組みを作るときの意志と、運用された結果生まれる意思は違うものになります。
運用の結果生まれた意志は、組織にいる人たちを束縛しはじめます。
この束縛が高まっていくと、大企業病といわれるような硬直した状態を生み始めます。
仕組みを維持するための仕組みがどんどん新しく生み出されるようになります。
だから、組織に所属する人は、二つのことに気を付けなければいけません。
第一に、仕組みがつくられたときの「意志」を常に思い返すこと
第二に、仕組みを定期的に変えてゆくこと
決して既存の仕組みに動かされてしまうような組織の状態をつくりあげてはいけません。
組織を動かすのは、今いる人たちの意志なのですから。
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平康慶浩(ひらやすよしひろ)