あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

まじめな話と、雑感(よしなしごと)とがまじっているので、 カテゴリー別に読んでいただいた方が良いかもしれません。 検索エンジンから来られた方で、目当ての記事が見当たらない場合 左下の検索窓をご活用ください。

40歳からの稼ぎ方

若いうちに勉強とか人付き合いとかネットワークとかつくりなさい、的な自己啓発本は星の数ほどあるのですが、年齢が上がると、その類の本は激減します。

みつかったとしても、「定年に向けて準備しましょう」的なものが大半。

それってつまり、今の会社にしがみつけ、っていうことですよね。

 

でも、私が人事制度をつくる現場で見ているのは、しがみつけない現実です。

「給与の天井」、つまり、管理職にならない限り一定の額以上には給与を増やしませんよ、という仕組みをたくさんの会社に導入してきましたが、それだけでおさまらないのが現実です。

追いだし部屋とか、労働基準法違反での指名解雇とか、メディアで報道されますが、解雇におびえる予備軍はずっと多いのです。

さらに、そんな人たちは今後増えてきます。

グラフに示すとこんな感じ。

 

f:id:hirayasuy:20131219183213p:plain

 

これは年齢別の人口を示すグラフですが、2013年時点で40歳の人は、2028年で55歳。その前後にやまなりでたくさんの人々がいます。

この人たちが全員管理職になれるわけもないし、そもそも日本の労働法では管理監督者としての管理職割合はだいたい10%とか20%以下の人数じゃないとそれは「名ばかり管理職」だ!、会社は残業代を支払え!とか言ったりするので、増やすこともできません。まあ、そんなに管理職としてのポストもありませんしね。時間に縛られない働き方を認める(面もある)ホワイトカラーエグゼンプションは反対意見が強いし。

 

じゃあ40代をすぎた人たちで、ごく一部の「私は絶対大丈夫!」という自信のある人たち以外について、これからの会社の中での過ごし方について、参考となる方法を示せないものかなぁ、と考えました。

一気に全部はかけないし、思いつきもしないので、ぼちぼちと書いてみます。

あ、ちなみに私が書く方法は、原則として「会社の中の人事制度をもとにした40歳からの稼ぎ方」です。社内で解雇されないようにするとか、ちゃんと給与を増やす、とかがアウトプットになります。

だから、起業するとかワンルームマンションオーナーになるとかFXで稼ぐ、とかの方法は書きません。結構地味な方法になりますが、現実問題そっちの方が役に立つのではないでしょうか。

 

■ 40歳からの稼ぎ方①:専門性をしぼる

一応管理職になっているんだけれども、ラインマネジャーってわけじゃない人向けの方法です。課長代理とか担当課長とか次長とか部付部長さん向けです。

この方法を使うことで、短期的にはリストラ候補からは外れることができます。中長期的には難しいですが。

たとえば社内の経理畑で育ってきてひととおり会計処理はこなせる、という人なら、その中でも「税務」とかに絞り込む。あるいは人事畑なんだけれども、人事情報システムが導入されていない規模の会社なら、従業員の人事データ分析をすべて担当してしまう、とか。

専門性をしぼると、「取り換えの効かない人」になれます

そうなると、とりあえず、3年から5年は確実に社内で存在感を確立することができます。

 

でも、この方法だけだと、5年以上は難しい。

なぜなら、若手が育ってくるからです。

島耕作が課長の時代なら、中堅が若手をつぶす、なんてこともできたかもしれませんが、いまどきそんなことは無理です。逆に元気な若手につぶされないように気をつけなければいけないくらい。

 

じゃあ次にどうするか、というと。

■ 40歳からの稼ぎ方②:ちゃんと勉強する

あたりまえのことを書いているようですが、実際、やっている人はとても少ないのがこの方法です。

しぼった専門性は、新しい気づきを与えてくれます。

新しい気づきとは、たとえば「新しい方法」とか「最近の知識」とか「環境変化」とか「他社の動向」とかです。

そしたら、それらについて真面目に勉強をすることです。

自己啓発本ではない専門書を読むとか、学校にいくとか、セミナーを受講するとか

自己啓発本では若い人への立ち居振る舞いを教えてくれますが、熟練したベテランに対して肝心の知識は与えてくれません。でも、ベテランの仕事に必要なことは知識です。そして知識を実践した結果得られる経験です。

面白いことに、仕事に必要な知識は、ネットではあまり手に入りません。だいたい50%くらいまでは手に入るのですが、それ以上になると、専門家の頭の中にしかなかったりします。

ネット好きな専門家なら、ブログなどで情報発信してくれている場合もありますが、多くの高度な専門家はそんなことはしてくれません。それに、仕事に使えるレベルの知識を文章に起こすとなると、それだけで一冊の本になったりしますしね。そんな知識を無料でブログで公開するなんて人は、専門家の中では少数派です。

例えば私だって、等級制度の組み上げ方とか、給与改定マトリクスの設計方法とかはネットで公開してませんし。

 

 

これらの二つの方法は、要は、もう一度新人になったつもりで、自分が価値を発揮できる仕事を探しましょう、というものです。

社会人生活を20年もしていると、どこかでわかったような気分になってしまいます。そうして新しいインプットを怠っていると、気が付けばいらない人になってしまいます。

 

専門性をしぼること、そして、ちゃんと勉強する。そうすれば人事配置で必ず頭数に入ります。リストラ候補になることもなければ、普通に評価もされます。昇格のチャンスだって得られるし、結果を出せば賞与だって増えます。

 

専門性をしぼること、そして、ちゃんと勉強することに、遅すぎるということはありません。何歳からでもかまいません。

私自身でいえば、35歳でファイナンスとか金融工学を教えてくれる社会人大学院に行きました。それから独立して、本も出版して、いろいろな取材も受けるような立場になりました。

今45歳になりますが、またとあるところで勉強を再開する予定でもあります。

私なりにさらに専門性を絞り、そして、ちゃんと勉強するつもりです。

 

40代以上のみなさん。ぜひ一緒にがんばりましょう。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)