あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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人事部門が儲けの仕組みに貢献する方法

前回記事【2-3】役員を育てる人事機能とは

 

  まず理屈や必要性よりも先に、人事部門が儲けの仕組みに貢献する方法を説明しよう。

それは生産性についての分析資料を作成し,提示することから始まる。

 

■ 生産性分析資料の作り方

 

 「生産性の分析」というと付加価値分析などを思い起こす人もいるだろう。

 しかしそれなら経理部門に任せたほうが早い。

 人事部門の強みを生かす生産性分析は,「切り分ける」ことから始める

 切り分ける軸は「時間」と「空間」の2 つだ。

 

 

■ 時間で切り分けてラベルを貼る

 

 時間で切り分ける場合,具体的には「時間別」「曜日別」「月別」などがある。

 もちろん,ここでは単純に時間や曜日で比較するわけではない。

 分かりやすいラベルを貼り,そのラベルのもとで比較をする。

 

 例えば時間別に切り分ける際には,「繁忙期」「閑散期」というラベルを貼る。

 「繁忙期」「閑散期」はかなり便利で,曜日別,月別でも使える。

 曜日別の場合には「平日」「週末」といった区分が一般的だが,場合によっては「連休中」というラベルが必要なこともある。

 月別で「季節」が大括りすぎる場合は,平均気温に着目して,「高気温期」「中気温期」「低気温期」というラベルを使う手もある。

 このように区切り,いつ儲かっているかを見えるようにする

 

 

■ 空間とは組織区分のこと

 

 空間で切り分けるということは,組織単位で見るということだ。

 店舗ビジネスであれば,店舗単位での分析は当然やっているだろう。

 そこからさらに一歩踏み込む。

 複数階にまたがる店舗であるのなら,階層別という切り分けが考えられる。

 飲食店ならキッチンとフロアで分けることができる。

 営業拠点別だけでなく,研究部門,製造部門,流通部門,といった組織単位での切り分けも有効だ。

 どの営業拠点が儲けているのか,という疑問に答えることはできても,どの組織が儲けに貢献しているのか,という質問に対する答えは見えづらい。

 その答えを用意するのだ。

 

 

■ 生み出したキャッシュに着目

 

 時間・空間で切り分けたあと,何を見ればよいのか。

 「率」か「額」か,様々な観点が気になる。

 分かりやすい答えは「額」での分析だ。それもキャッシュに特化するほうがいい

 

 ある建設業での例を示そう。

 この建設業では,拠点単位での売上と利益は明確にしていたが,年々低下する傾向にあらがえずにいた。

 そこでコンサルティング指導に入り,人事部門において,生産性分析を試みた。

 具体的には以下のような資料を作成し,経営層に提示した。

 

●「拠点別・部門別生産性分析」……営業拠点に存在する営業課・建設課・総務課それぞれについての生産性を分析。人員1人あたりが生み出すキャッシュについて可視化。

 

●「顧客別・拠点別月次生産性分析」……顧客タイプ(官公庁系・デベロッパー系など)毎の月次生産性を拠点別に分析。どの顧客がキャッシュを生み出してくれているかを各月に可視化。

 

 これらの分析をもとに,さらに改善提案を行った。

 

(つづく)

 

次回記事【3-2】経営企画や財務経理じゃなくて、人事部門だけが持つ強みがある

 

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役

http://www.sele-vari.co.jp/

 

※当ブログ記事は、平康慶浩が月刊人事マネジメントで2013年9月~2014年2月にかけて連載していた「経営ブレインへの転換を図る5つの人事機能」から転載しています。