人事部門が儲けの仕組みに貢献する方法
まず理屈や必要性よりも先に、人事部門が儲けの仕組みに貢献する方法を説明しよう。
それは生産性についての分析資料を作成し,提示することから始まる。
■ 生産性分析資料の作り方
「生産性の分析」というと付加価値分析などを思い起こす人もいるだろう。
しかしそれなら経理部門に任せたほうが早い。
人事部門の強みを生かす生産性分析は,「切り分ける」ことから始める。
切り分ける軸は「時間」と「空間」の2 つだ。
■ 時間で切り分けてラベルを貼る
時間で切り分ける場合,具体的には「時間別」「曜日別」「月別」などがある。
もちろん,ここでは単純に時間や曜日で比較するわけではない。
分かりやすいラベルを貼り,そのラベルのもとで比較をする。
例えば時間別に切り分ける際には,「繁忙期」「閑散期」というラベルを貼る。
「繁忙期」「閑散期」はかなり便利で,曜日別,月別でも使える。
曜日別の場合には「平日」「週末」といった区分が一般的だが,場合によっては「連休中」というラベルが必要なこともある。
月別で「季節」が大括りすぎる場合は,平均気温に着目して,「高気温期」「中気温期」「低気温期」というラベルを使う手もある。
このように区切り,いつ儲かっているかを見えるようにする。
■ 空間とは組織区分のこと
空間で切り分けるということは,組織単位で見るということだ。
店舗ビジネスであれば,店舗単位での分析は当然やっているだろう。
そこからさらに一歩踏み込む。
複数階にまたがる店舗であるのなら,階層別という切り分けが考えられる。
飲食店ならキッチンとフロアで分けることができる。
営業拠点別だけでなく,研究部門,製造部門,流通部門,といった組織単位での切り分けも有効だ。
どの営業拠点が儲けているのか,という疑問に答えることはできても,どの組織が儲けに貢献しているのか,という質問に対する答えは見えづらい。
その答えを用意するのだ。
■ 生み出したキャッシュに着目
時間・空間で切り分けたあと,何を見ればよいのか。
「率」か「額」か,様々な観点が気になる。
分かりやすい答えは「額」での分析だ。それもキャッシュに特化するほうがいい。
ある建設業での例を示そう。
この建設業では,拠点単位での売上と利益は明確にしていたが,年々低下する傾向にあらがえずにいた。
そこでコンサルティング指導に入り,人事部門において,生産性分析を試みた。
具体的には以下のような資料を作成し,経営層に提示した。
●「拠点別・部門別生産性分析」……営業拠点に存在する営業課・建設課・総務課それぞれについての生産性を分析。人員1人あたりが生み出すキャッシュについて可視化。
●「顧客別・拠点別月次生産性分析」……顧客タイプ(官公庁系・デベロッパー系など)毎の月次生産性を拠点別に分析。どの顧客がキャッシュを生み出してくれているかを各月に可視化。
これらの分析をもとに,さらに改善提案を行った。
(つづく)
次回記事【3-2】経営企画や財務経理じゃなくて、人事部門だけが持つ強みがある
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役
※当ブログ記事は、平康慶浩が月刊人事マネジメントで2013年9月~2014年2月にかけて連載していた「経営ブレインへの転換を図る5つの人事機能」から転載しています。