【5-2】わが社の定年退職者を幸せにするために
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■ 退職が不幸になる理由
かつて定年退職がハッピーであったのは、潤沢な退職金や年金が保証されていたからだ。
土地神話も存続していたので、ローンで購入した自宅の価値も上昇している。
ストックとしての資産もあり、フローとしての年金もある。
そして自由な時間が手に入ったので、有閑貴族さながらに過ごせる老後を描けた人たちがいた。
しかし現在(そして今後も)、横並びでの自宅購入はリスクが高い。
場合によってはストックではなくデット(負債)だけが残ることもある。
さらにフローとしての年金も潤沢ではないので、アルバイトをしながらフローを補てんするしかない人が増えている。
なぜそうなっているかといえば、そもそもは平均寿命の伸長とか、年金財政の悪化などが理由としてはある。
(定年と寿命との関係については、以前こんな記事を書いたので参考にしてほしい。)
けれども企業の人事部として、社会環境のことを言っても始まらない。
自社を定年退職する人たちを、どうすれば幸せにできるか、と言うことを考える必要がある。
定年退職がハッピーになっていない直接的な理由は、生活に必要なお金が足りなくなるからだ。
ストックとしての貯蓄や資産を持っていればよいが、それは会社が指導することではない(401kのような持ち運びできる退職金プランで金融資産意識を高めることは可能だが)。
また、退職金制度はすぐには変えられないし、定年退職どころか65歳以降も雇用し続ける仕組みを作らなければいけない立場として、退職金や年金の上積みも難しい。
だとすれば、人事担当者はどうすれば退職をハッピーなものにできるだろう。
会社としてできることは、フローの部分を支えることだ。
つまり、定年退職後に値段をつけられる経歴を持てるようにすることだ。
値段がつけられる経歴とは、すなわち専門性に他ならない。
大企業に在籍していたとしても、ただそれだけの理由で値段をつけてくれる相手はいない。
小手先でない仕組みを考えるなら、その方法は大きく2 つある。
■ 従業員に成長の責任を与える
第1の方法は、人生を選ぶ「責任」を従業員に返すことだ。
成長の責任と言い換えてもよい。
人事制度でいえば、まず異動・配置について手を挙げられる仕組みの導入だ。
形ばかりの異動アンケートなどではなく、最低でも公募制は必須となる。
公募制を機能させるためには、職務定義がなくては話にならない。
そして職務定義を機能させるためには、職務に合わせた教育プログラムの整備が求められる。
そうして従業員に成長の責任を与えるのだ。
これらを「権利」として与えてしまうと、従業員は勘違いをしてしまう。
会社のことを、自分を守ってくれている城だと感じてしまうことになる。
でもやがていつかは、その城を出なければいけなくなる。
権利、と考えていたのでは、城を出て生きていけない。
すべての責任を、自分で負う覚悟を持ってもらわなければいけない。
そうなれるように、人事部門は従業員たちに、成長の重要性を説く必要がある。
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平康慶浩(ひらやすよしひろ)
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※当ブログ記事は、平康慶浩が月刊人事マネジメントで2013年9月~2014年2月にかけて連載していた「経営ブレインへの転換を図る5つの人事機能」をもとに加筆修正したものです。
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