人事制度の次のキーワードは「エスニシティ」だと思う
Photoby:Yasin Hassan Creative commons
これはまったく僕の予想にしかすぎないのだけれど、それでも、人事評価制度をつくっている現場の感覚で、実感し、予想することがある。
これから数年間、こっそりと、「エスニシティ」が重要視されはじめるんじゃないかということだ。
僕が知る限り、1973年のイギリス発祥の単語だ。
簡単に言えば、移民や就労ビザでやってきた外国の人たちが、元の国の文化をもちながらその国に同化した時に、彼ら/彼女らが持ち続ける文化的つながりを指す。
アメリカの、アイルランド人とかイタリア人とかを想像するとわかりやすいだろうか。
日本にもエスニシティはある。韓国・朝鮮・中国が代表的だけれど、それだけじゃない。
たとえばブラジルなどの諸外国から帰ってきた日系人のエスニシティもある。
少数派であったとしても、欧米系や東南アジア系、インド系、アフリカ系、中近東系などのエスニシティも、今の日本に確実に存在する。
なぜ人事制度でエスニシティが重要視されはじめると予想するのか。
それは、エスニシティがビジネスで有利に働くからだ。
考えてみてほしい。
もし君が外国に旅行中、たまたま入ったレストランで日本語で応対されたらどう思うだろうか?
もちろん観光スレしている対応だったら嫌な気分になるだろう。
でもそうではなく、「以前日本に留学していて、そのときにずいぶん親切にしてもらったんです。だから今日は僕がサーブしてわからないメニューとかも説明しますよ」と言われたとしたら。
君の心がスレていない限り、ありがたいと思うんじゃないだろうか。
そして、そのことを誰かに伝えたりするだろう。あの店で、日本語のわかる店員に親切にしてもらったよ、と。
やがてその店はSNSやブログで拡散するだろうし、日本人観光客向けのガイドブックに掲載されたりもするだろう。
実はこのような分析を行った論文は既に存在する。
なぜなら、アメリカをはじめとする諸外国では、店員と客とのエスニシティの関係が収益に貢献するという分析がされているからだ。
逆に店員の側でも、自分と同じエスニシティの客を選ぶ傾向もある。
そうすることで喜ばれるのなら、その方が働き甲斐があるからだ。
また、欧米ではフルコミッションのサービス業店員が多いということもある。自分を選んでくれる客が多ければ、それだけ給料が増える。
日本にはまだ、エスニシティ、というほどの違いが可視化されてはいない。
でも、人事制度が対象とする世界には、すでにエスニシティが必要とされ始めている。
日系ブラジル人がたくさん住んでいる街に出店したコンビニの店員には、一定割合で日系ブラジル人を雇った方がいい。
韓国人街に出す居酒屋では、韓国語がわかる人を雇った方がいい。
それらはあたりまえのようだけれど、仕組みとして求められるタイミングがくる。
エスニシティが目に見えてくるタイミングだ。
僕の予想ではあと5年以内に、かなり大々的に広まり始めると思うのだけれど、さてどうだろう?
平康慶浩(ひらやすよしひろ)
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