あしたの人事の話をしよう

セレクションアンドバリエーション株式会社 代表取締役 兼 グロービス経営大学院HRM担当准教授の平康慶浩(ひらやすよしひろ)のブログです。これからの人事の仕組みについて提言したり、人事の仕組みを作る立場から見た、仕組みの乗りこなし方を書いています。

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【6-2】従業員の声はまず管理職から

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【6-1】風通しのよい一枚岩の組織をつくる - あしたの人事の話をしよう

 

■ 従業員の声はまず管理職から

 

 情報公開が進めば、そこから発生した従業員の声をどのように集めるのか、ということが次の課題になる。

 そのためにアンケートや匿名投稿アドレスを設定する、というのも悪くはないが、手間がかかりすぎるし、社内の組織階層を乱すことになる。

 あるべき方法は、管理職たちに部下との対話を増やすように指示をすることだ。評価制度を用いた面談を必須としている企業は多いが、その際に「聞く」ことを推奨しなくてはならない。

 そこで「聞いた」声を管理職が人事部門に報告しなくても良いのだ。

 その声は管理職の中に蓄積される。

 そうして、会議の場などで「部下たちが言っているのですが……」「こういう声もありますが……」として具体的な事例とともに発言されるようになる。

 人事部門であるあなたは管理職をただのパイプにしたくはないだろう。管理職の中に情報を蓄積しよう。あなたが持っていない情報を管理職が持っている。それは素晴らしいことだ。管理職とあなたが対話する意義が強まるのだから。

 

 上司が部下の声を聞く、ということは、部下の側からしても大きなメリットがある。

 毎日顔を合わせる上司が聞く耳を持ってくれるようになると、やる気を高めやすいからだ。人は自分の話を聞いてもらうだけでずいぶんと機嫌が良くなるものなのだ。

 

 

■ 人事部門がコーチになる

 

 その上でさらに従業員の声を集めるために何をすればよいだろう。

 それは人事部門が個々の従業員のコーチになることだ。

 管理職に対してコーチング研修を行ったり、若手従業員に対してメンター制度を導入したりする会社も多い。

 それに加えて、人事部門の役割を拡大しよう。

 人事部門がコーチになるといっても、日々のすべての業務についてではない。

 ポイントは一点だけ。個々の従業員の配置希望についてコーチになるのだ。

 例えばアセスメントアンケートのように、現在の配置についての希望をアンケート形式で定期的に確認する企業は多い。そこで希望を出している従業員や、評価に変化のない従業員をピックアップして、個別に面談を行う方法が望ましい。

 可能であれば人事部門内で担当を分けよう。人事課長が一人、係長が一人、一般社員が二人いるのであれば、それぞれ世代ごとに担当を分ける方法が一般的だ。少し年次が上の人物が、配置希望について面談をする。そこでは希望を確認しつつ、現状の不満や上司・同僚の問題点を確認することができる。

 従業員側からすれば、いざ困ったときに直接話ができる人事部員ができることになる。そのことはとても大きな安心感につながるだろう。

 結果として一人一人が自分のキャリアを自律的に考え始めることができるようになる。

 

 

■ 企業を成長させるために

 

 連載の第一回に人事部門だけが持てる経営者の視点を示した。

 それは「企業を成長させる」ことだ。

 企業の成長の結果は財務に現れる。

 そして企業の成長の予兆は必ず人事に表れている

 強い役員が増える。

 個々の部門の生産性が上がる。

 伸びている従業員がどこにいるかわかる。

 労働市場との間で人材の流動化が進み、優れた人材が集まるようになる。

 そして、働く一人一人の自立心が高まる。

 

 この連載で示した5つの人事機能をぜひ整備していただきたい。そうすればあなたの会社は必ず成長のための原動力を得ることになる。

 

 

平康慶浩(ひらやすよしひろ)

※当ブログ記事は、平康慶浩が月刊人事マネジメントで2013年9月~2014年2月にかけて連載していた「経営ブレインへの転換を図る5つの人事機能」をもとに加筆修正したものです。

 

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