時間は小分けすると値段が下がります
■ 「すきま時間」はビジネスチャンスなのか
時間資本主義の到来: あなたの時間価値はどこまで高められるか?
という本を読み終えた。
無駄に捨てるしかなかった「すきま時間」がスマホなどで埋められることになったから、消費の傾向が激変した、という分析はとても納得できた。
で、そんなタイミングで、以下のニュースを見た。
スペア5、というアプリについてのニュースだ。
たしかに面白い。
「すきま時間」をマッチングさせることで、ムダになるはずの時間を小銭に変えられる。
でも僕は思う。
すきま時間を切り売りしてはいけない。
時間は小分けすると、価格が暴落するのだ。
消費される時間は、特にそうだ。
■ 家庭ゲーム業界は「すきま時間」で縮小した
たとえばあなたが通勤中に時間つぶしで遊ぶアプリゲーム。
あなたはそのゲームにいくら払っただろう?
こちらの調査(売れる有料アプリの傾向、ユーザー調査から明らかに)によれば、以下の傾向がある。
・約70%のユーザーはアプリにお金を払わない
・お金を払うユーザーの平均支出額は1カ月170円
すきま時間のために、人はお金を使わない。
テレビに接続して遊ぶタイプのゲームをしていたころ、僕たちはゲームをするためにまとまった時間を確保していた。そして、3000円~8000円くらいのお金を支払っていた。また、そのためのハードウェアに数万円支払うこともあった。
今、そんなにまとまった金額をゲームに支払う人は、ごく少数だ。
それは、「すきま時間」が増えた代わりに「まとまった時間」が減っているからかもしれない。
そして、「まとまった時間」を10に小分けした時、ひとつひとつの「すきま時間」は1/10の価値すら持たなくなる。
■ すきまをなくすほうが価値がある
仮にスペア5が浸透したとしよう。
すると企業側は活用方法をいろいろに考え付くだろう。
期日のゆるい業務を小分けして、すきま時間で対応できるようにする。上記の記事でもあるが、メタデータ作成と言う膨大かつ単純作業をどんどん割り振ることがいい例だ。
それについやした時間の価格(時給)は、200円にもならない。
たしかにすきまの時間は、もともと「お金」を生み出すものではない。だからお金になるのなら、やらないよりやるほうがいい、のだろうか。
ビジネスチャンスはそこにある。たしかに。
でも、小分けした時間を買いたたかれるのは、時間を提供する僕たちだ。
賢く生きるのなら、時間を小分けしなくて済むような生き方を考えた方がいい。
「時間資本主義の到来」にも書かれていたが、すきま時間を生む典型的な行動は「通勤」だ。ならば職住接近により通勤時間を減らしていくような生き方を選べないだろうか。
仕事のための時間、家族との団らんの時間、自分がくつろぐための時間。それらの価値を高めるには、「すきま時間」では不十分だ。まとまった時間がとれてこそ、仕事は付加価値を生むし、団らんはやさしさと愛情をはぐくむし、くつろぎが明日への活力となるだろう。
「すきま時間」がお金になることは、喜ぶべきことではない。
僕たちは「すきま時間」を減らす生き方を選んでいこう。
平康慶浩(ひらやすよしひろ)